角川書店「増補 現代俳句系」第15巻(1981年・刊)より、16番めの句集、森澄雄「鯉素」を詠み了える。
 先行する阿部みどり女・句集「月下美人」は、今月3日の記事にアップした。



 原著は、1976年、永田書房・刊。381句、著者・あとがきを収める。
 森澄雄(もり・すみお、1919年~2010年)は、1940年の加藤楸邨「寒雷」創刊に参加、1970年に「杉」を創刊。飯田龍太と共に、伝統俳句の代表作家と呼ばれた。
 その後も句集を刊行し、1997年に恩賜賞・日本芸術院賞を受け、芸術院会員となる。

 「鯉素」は、漢詩に依り、「手紙」の意である。4年間の句は、旅に得た作品が多い。旦那俳人が、地方の旦那衆俳人を巡って指導するようで、嫌味である。地元で吟じられた句は、嬉しいようにも思うけれども。社会性俳句、前衛俳句に、背を向けた果てだろう。


 以下に5句を引く。
をさなくてめをとはよけれ二つ雛
青涼の葦と暮らして葦長者
甘橿の国見に雲雀羽ふるふ
吾亦紅すこしいこへば空の冷
青紫蘇を嗅いで力に峠越

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。