二三川練 惑星ジンタ
 先の7月23日の記事、歌集2冊をダウンロードで報せた内、二三川練「惑星ジンタ」を読み了える。
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ(Kindle Unlimited版)として、7月25日の記事、惟任將彦・歌集「灰色の図書館」に次ぐ。
概要
 ダウンロードのリンクに、諸版の発行年次、価格を示したので、ご参照ください。
 294首、東直子・解説「日常と幻のゆらぎ」、著者・あとがきを収める。
 二三川練(ふみがわ・れん)は、当時、日本大学大学院博士後期課程・在籍。寺山修司の短歌と俳句を、研究対象とする。
感想

 歌人の性別が、最後までわからなかった。「あとがき」の中でも「僕」と自称するので、男性である。作品中で「僕」を自称する女性はいるだろう。
 初めは具体的で、読みやすいかな、と思った。
 しかし同棲の事情など、公にできない事柄が増えたのか、抽象的な、あるいはシュールな詠みぶりとなる。
 惑星の7つを詠んだ連作は、題詠が苦手なのか、無理をして俗である。
 批判を書いているようだが、現代の心理の捉え方など、美点は多いので、それはご了解願う。
引用
 以下に7首を引く。
めがさめてあなたがいない浴室にあなたが洗う音がしている
傘いらないくらいの雨で傘をさす怒りたいけど怒られたくない
積み上げた日々より薄い枚数の夏のレポートつき返される
細胞の生きたがること厭わしく隣家はすでに蔦となりたり
知っていた未来ばかりが訪れてたとえば黄身が二つの卵
いつまでも引きずりそうなミスをして真夏の屋外プール 冷たい
加工する前の写真を消してゆく指は銀河のようになめらか