風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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敗戦

 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第3句集「夜の桃」を読み了える。
 第2句集「空港」は、今月13日の記事にアップした。



 なお句集「夜の桃」について、前のブログ「サスケの本棚」の2013年8月16日の記事で、「増補 現代俳句大系」第7巻より取り上げている。


 「夜の桃」は、1950年、七洋社・刊。「空港」との間には、1945年の敗戦があり、1947年の現代俳句協会・創設、1948年の俳誌「天狼」(山口誓子・主宰)創刊などに、大きく寄与した。

 「夜の桃」は、戦前の50句、戦後の250句より成る。両者は、はっきり分けられている。
 戦後の句には、焦土と共に、再生への意気が読めるようだ。浮浪児も、貧しい享楽も、吟じられている。荒地の希望さえ、あるようだ。

 以下に5句を引く。
寒燈の一つ一つよ国敗れ
中年や独語おどろく冬の坂
おそるべき君等の乳房夏来
(きた)
甘藷
(いも)蒸して大いに啖ふクリスマス
断層の夜明けを蝶が這ひのぼる
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 先の8月17日の記事、川野里子「葛原妙子」を読む、の末尾に書いた通り、砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)に読み入る。
 写真は、全歌集の箱の表である。多機能プリンタでスキャンできないので、久しぶりにデジカメの台形補正機能を使った。2つあるスタンド灯の内、1つが故障してしてしまったので、片側より照明の、拙い写真である。

 第1歌集「橙黄(とうおう)」は、1950年、長谷川書房・刊。495首、著者あとがき「終りに」を収める。
 約1年の疎開生活、戦後5年の東京生活(医師の妻として。家は焼失を免れた)より詠まれる。
 葛原妙子(くずはら・たえこ、1907年~1985年)は、戦前から太田水穂「潮音」に拠りながら、43歳での第1歌集だった。
 まだ難解な詠みぶりではなく、疎開の窮迫生活、敗戦後の急変ぶりを描いている。
 1949年の「女人短歌会」創立に参加するなど、新しい女歌を目指したようだ。


 以下に7首を引く。正字は、新字に直した。
八貫の炭負ひて立つわが足踏(あぶ)みたしかなるとき涙流れたり
わがまぶたうるみてあらめこの男の子十二の食のすでにたくまし
竹煮ぐさしらしら白き日を翻(かへ)す異変といふはかくしづけきか(そのあした)
しばしばも心をよぎる暗愚あり追ひつめゆかむことのおそろし
寡婦たちを支ふるさびしき歌のありつよく脆くきりきりとすさぶときよし
盛夏十五度けざむき朝を飲食(おんじき)のすすむと云はばはばかりあらめ
わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる



 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、8回目の紹介をする。
 
同・(7)は、今年5月23日の記事にアップした。
 今回に僕が読んだのは、「猫男」、「傾斜」、「一時期」の、3短篇小説である。
 いずれも1948年(昭和23年、敗戦後3年目)の初出である。戦後だが、僕の誕生の前だと思うと、不思議な気がする。
 「猫男」は、口からは出まかせの嘘も言い、偽りの行ないもして、社会の底辺を渡る中年男を描く。どの社会にも、一人はいるタイプの人物で、その卑怯さを作者は注視している。
 「傾斜」は、クリスチャンで闇屋の鬼頭鳥子、娘の花子、太郎の家に間借りする事になった「彼」が、気づくと部屋は馬小屋と隣り合っていた、という話だ。鳥子の矛盾(?)、花子の顔の火傷、子供ながら博打をする太郎、「彼」の戦時体験など、混乱の残る世界を描いている。
 「一時期」は、戦中の役所で、若手ばかりの仲間が、日中から隠れて博打をしたり、飲み屋に行列したりする話である。設定は梅崎春生と合うので、幾らかは事実だったかも知れない。彼らには徴兵、更には敗戦まで、予感されていたのかも知れない。
 第2巻で残るのは、あと4短編小説である。読み了えたなら、ここで紹介したい。
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写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。


 沖積舎「梅崎春生全集」(全8巻)の第2巻(1984年・刊)より、6回目の紹介をする。
 
同・(5)は、昨年10月23日の記事にアップした。
 なぜそんなに間が空いたかといえば、この本が応接間にあるからだ。応接間には、ステレオセットで音楽を聴きに行くのが主で、本を読む気で行くことはあまり無い。それに空調が利かないので、冬の間は寒く、なおさら行かない。おもな読書サイクルの小説には、既に他の本が入っている。
 今回に僕が詠んだのは、「飢えの季節」、「握飯」、「仮面」の3短篇である。
 「飢えの季節」「握飯の話」は、食事にも困る会社員を、裕福な社長、農家等と対比して描く。僕個人は、農家の次男坊であり、食には困らなかった。しかし分家した後しばらくは、お米を貰っていたが、困窮した時には、食にも困った。食事にも困る苦しさは、少しはわかるつもりだ。
 「仮面」は1転して、客もウェイトレスも仮面をかぶる規則の、秘密のバーの話である。闇で仕入れた、高級な酒を飲ませるので、客も多い。マスター(ただ一人、顔を見せている)と客のトラブルがあり、客が敗れ去って終わる。
 3編とも、1945年の敗戦後すぐの、暗い世相を描いている。
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Pixabayより、クロッカスの1枚。



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