風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

文春文庫

 文庫本棚より抜き出して、色川武大の連作小説集「怪しい来客簿」を読み了える。
 彼の小説として、2019年9月3日の記事、「あちゃらかぱいッ」以来である。



 色川武大(いろかわ・たけひろ、1929年~1989年)は、プロ賭博師、雑誌編集者を経て、作家となり、阿佐田哲也・名で麻雀小説なども書いた。
 コアなファンがあり、没後、福武書店より、全16巻の全集が刊行された。

怪しい来客簿
  「怪しい来客簿」は、文春文庫、1989年・刊。17編を収める。長く蔵していたので、一茶「七番日記」(上)と同じく、本文ヤケしている。
 戦中から活躍し戦後に没落した知人、芸人、スポーツ選手などを描いている。
 相撲力士の出羽ヶ嶽文治郎、プロ野球の木暮外野手など、幸せと言える晩年を送った人物に救われる。
 多く没落して亡くなり、知人など、亡霊として現れたりする。
 仕舞いの「たすけておくれ」では、自身の胆石手術(こじれて危篤に陥った)をも、戯画化してユーモラスに描く。まるで亡くなった人たちの、仲間のように。


 三浦哲郎の短編小説集「冬の雁(がん)」を読み了える。
 三浦哲郎の作品では、昨年12月8日の記事にアップした、エッセイ集「おふくろの夜回り」以来である。



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 居間の文庫本棚より、読む本を探しているといると、三浦哲郎の「百日紅の咲かない夏」も目に留まったが、テーマが重く長編小説なので、後の機会に譲った。
 「冬の雁」を見てみると、短編小説集なので読むことにした。全17編。
 文春文庫、1989年1刷。古ぼけて、150円のブックオフの値札が貼ってある。本文までヤケていて、僕が喫煙時代(58歳まで)に買った本だろうか。

 初めの「花いちもんめ」は、養女と父親の、相愛的感情が描かれる。
 出身の青森県の方言が行き交う、逞しく生きる人々の物語がある。
 そして現在の、作家と家族の幸せな家庭も描かれる。
 故郷で、脳血栓で倒れ、病院に寝たきりの母親を、何度も見舞うストーリーもある。母親の死の物語は、どこかで読んだ記憶があるが、長い療養中の話は、この本が初めてではないだろうか。
 1族の暗い宿命のストーリーの1つとして「紺の角帯」は、40余年前、兄が失踪する前、恋人に残した一本の角帯を、その女性から贈られるストーリーである。

 エロス、ユーモア、シリアスと、読者をほろりと楽しませてくれる、名短編ばかりである。





 森絵都のYA(ヤング アダルト)小説「カラフル」を読み了える。昨年暮れに、メルカリより350ポイントで買っている。
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 文春文庫、2015年37刷。単行本:1998年、理論社・刊。産経児童出版文化賞・受賞。

 死んだ筈の魂が、ボス(万物の父)の抽選で、プラプラという天使の案内と助言で、服毒死した小林真の体に、試験的に舞い戻る。神を想定する所から、現代ファンタジー風になっている。
 父は利己的、母は不倫経験あり、片思いをよせるひろこは愛人に貢がせている。兄も意地悪そうである。しかし小林真は、それぞれの人物の真実を知ってゆき、世界に馴染んでゆく。
 そして魂の僕が、小林真自身であった事を思い出し、ジ・エンドとなる。大団円は月並みだけれども、ハッピーエンドである。
 1度でも死にたいとか、自分は居ない方が良い、とか思った事のある人にはお勧めである。YA小説の隆盛によって、読書離れと言われる若者が、本に戻って来れば幸いである。




 まだ購入を報せていなかったけれども、文春文庫「羽生善治 闘う頭脳」(2017年・6刷)を読み了える。
 8月27日に、メルカリの380ポイントで注文した。

闘う頭脳
 今月2日の記事、羽生善治「決断力」を読む、で僕は疑問を感じるようになったと書いた。
 それなのになぜ読んだかといえば、この本は音楽のリスペクト盤CDみたいなもので、ゴーストライターの入る余地は少なく、インタビュー、他棋士の寄稿、対談、エッセイなどを集めた本だからである。
 谷川浩司を目指し、森内俊之、佐藤康光、藤井猛、郷田真隆、深浦康市ら、ライバルと共に、盤上で闘い続け、様々な要点を掴む様が描かれる。
 対局は、勝負というより、棋力の向上、棋理の究明につながる事として指される。
 対談で、引退要因などを訊かれるが、どのような時と明言していない。同世代が盛りを過ぎるなか、彼の孤独な闘いは続くだろう。


あちゃらかぱいッ
 文庫本棚より取り出して、色川武大(いろかわ・たけひろ、1929年~1989年)がおもに敗戦前の浅草芸人たちを、伝記的に描いた小説「あちゃらかぱいッ」を読み了える。
 文春文庫、1990年・刊。
 前のブログ「サスケの本棚」を管理画面から検索すると、彼の小説は、2009年9月16日に「引越貧乏」を、2015年3月4日に「百」を、記事アップしている。

 「あちゃらかぱいッ」は、戦前の浅草で「成功したとはいいがたい」芸人たちを、「彼らの一生を深く愛するもの」の立場から描いた。
 自身も小学生高学年時代から、授業をサボッて界隈に出入りし、見聞きした事、芸人たちから聞いた話を基にした。
 川端康成が「浅草紅団」を新聞に連載した事などから、人気が出たという。
 男女入り乱れての、芸、人気、痴情の世界である。末尾では、土屋伍一、シミキンなどの末路を描いた。

 羽生善治の自己啓発の本も良いけれども、こういう落ちぶれた世界も、僕に親しい。


 山田詠美の短編小説集「風味絶佳」を読み了える。
 今月12日の記事、届いた3冊(5)で到着を報せた。

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概要
 単行本:2005年5月、文芸春秋社・刊。
 文春文庫:2008年5月・初刷。
 6編の短編小説を収める。「4U」の9編に比べて、1編が長めである。
感想
 「4U」などと共に、名短編集とWikipediaにあったから、取り寄せて読んだ。
 「4U」に比べて、暗いアンハッピーエンドな小説が多いようだ。
 「アトリエ」では、ゆんちゃん(裕二)あーちゃん(麻子)と睦み合う夫婦が、妊娠と共に妻の神経症に夫も巻き込まれてゆく。
 「風味絶佳」では、アメリカかぶれの祖母に見守られながら、青年が見事に恋人に振られる。
 「間食」では、年上の加代に世話される雄太が、恋人の花の妊娠を知った途端、花との連絡を切る、後味の悪さが残る。
 「春眠」では、想いを寄せた女性を実父に奪われる。
 男性主人公は、肉体労働者からみばかりだ。現場出身の僕として、本質を衝いていると言えない。
 作家は2006年に離婚していて、家庭の危機の反映と読むのは、あまりに俗だろうか。



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 川上未映子のエッセイ本「きみは赤ちゃん」を読み了える。
 メルカリからの購入は、先の4月28日の記事、歌誌と歌集とエッセイ本にアップした。リンクより、川上未映子の関連の記事を遡れる。
概要
 初出は、「出産編」が「本の話Web」2013年7月~11月・連載、「産後編」が書き下ろし。
 単行本は、2014年7月、文藝春秋・刊。
 文春文庫は、2017年5月10日・第1刷。
感想

 35歳になった女性作家が、妊活をして妊娠し、出産を経て、息子が1歳になるまでの育児も語られる。基本、望み通りで、ハッピィな語り口である。
 世の中には結婚しない人、結婚しても子供が出来ない夫婦、別れてしまう夫婦もいる。川上未映子は、再婚であるが故にか、乗り切って育児に至っている。
 妊娠を産婦人科で夫(作家、あべちゃんと書かれている)と確認した時の喜び、つわりの苦しみ、突然のつわりの解消、マタニティブルーの苛立ちも、率直にユーモアのある口語調で書かれている。
 そして無痛分娩の筈が、難産で帝王切開となるいきさつが描かれる。子が生まれての、号泣など、ここでも率直である。
 産後は母乳授乳を選んだので、2時間ごとの授乳等でほとんど眠れない日が続く。夫が睡眠、執筆を続けるので、産後クライシスにもなるが、2人は徹底的に話し合って、危機を回避する。
 自然に卒乳し、お気に入りのベビーカーで(それにも救われ)散歩し、息子の1歳の誕生日祝いの場面でおわる。初めての経験尽くしの妊娠、出産、育児を、ごくたいへんな事も、関西弁交じりの明るい文体で述べられて、幸せ感が伝わって来る。


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