風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

新鋭短歌シリーズ

つむじ風
 木下龍也・歌集「つむじ風、ここにあります」kindle unlimited版を読み了える。
 昨年12月9日の記事、
入手した4冊(3)の内の1冊である。
 その4冊の内、3冊を読み了え、三浦哲郎「愛しい女」は長編小説なのでいったんお蔵入りし、この4冊の話題は仕舞いとしたい。
概要
 各版の発行日、価格などはリンクに書いたので、ご参照ください。
 木下龍也(きのした・たつや)は、1988年、山口県生まれ、山口県在住。
 結社に属していない。
 この歌集では、短歌のあと、東直子・跋「辺境からの変化球」、詩に似た「あとがき」を収める。
感想
 静謐な文体である。草食系青年が、心で静かに耐えているようだ。
 ナンセンスな歌が混じるが、痛くてユーモアにならない。
 家族には素直である。
 女性にはウブで、純粋である。あるいは恋人を病気で失った風の、歌がある。
引用

 以下に7首を引用する。
じっとしているのではない全方位から押されてて動けないのだ
触れなくていいものに触れ火傷する癖があります遺伝でしょうね
そういえばいろいろ捨ててあきらめて私を生んでくれてありがとう
疑問符のような形をした祖母がバックミラーで手を振っている
コンビニのバックヤードでミサイルを補充しているような感覚
アイロンの形に焦げたシャツを見て笑ってくれるあなたがいない
からっぽの病室 君はここにいた まぶしいくらいここにいたのだ








岡野大嗣 サイレンと犀
 先の11月7日の記事「入手した4冊(2)」で紹介した内、岡野大嗣・歌集「サイレンと犀」kindle unlimited版を、ようやく読み了える。
 なお同記事の4番目、幸田玲「再会」は既に短編小説集「月曜日の夜に」にてか、読んだ事があったので評しない。
概要
 歌集「サイレンと犀」は、書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ16。
 紙本版:2014年12月15日・初版。価格:1,836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊。価格:800円。kindle unlimited版は追加金:無料。
 巻末に東直子・解説「命を見据えて現代を探る」、著者・あとがきを収める。
 岡野大嗣(おかの・だいじ)は、1980年・生。
感想
 上品な町、上品な家庭に、上品に育って、1昔前の言葉だが、草食系男子に入るだろう。恋人ができても、難関を越える前に、美しい過去が汚れる事を嫌って、別れてしまう。美しい棋譜を残しての、投了に喩えられる。優しい母親への愛憎が感じられる。
 仕事の管理の厳しさに因るのだろうか、やや歪んだ歌も散見される。
 僕が心配するまでもなく、彼は元気に生き抜いているだろう。
引用

 以下に7首を引く。
きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った
地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで
僕ひとり乗せた車で僕はいま僕の命を預かっている
社是唱和 白いセミナー室にいてわたしは生まれなおされている
ダウニーの匂いを嗅ぎすぎたときの頭痛に備えバファリンも買う
僕だけが楽しんでたらどうしよう渡したガムをすぐに嚙むきみ
運転に支障はなくて何年も放置している心の異音



國森春野 いちまいの羊歯

 國森晴野・歌集「いちまいの羊歯」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 ダウンロードは、今月7日の記事
「入手した4冊(2)」の、2番目に報せた。
概要
 國森晴野(くにもり・はれの)(以下、敬称・略)は、東北大学大学院を修了し、ある科学研究部門に勤めている。
 歌集は、書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」の1冊である。
 単行本:2017年3月12日・刊。価格:1,700円+税。144ページ。
 kindle版:2017年4月27日・刊。価格:800円。
 kindle unlimited版は追加金・無料。
感想
 歌集のしまいに、東直子・解説「新しい扉とあたたかな諦念」、著者・あとがきを置く。
 2007年に短歌と出会い、2010年に短歌を始める、とある。
 水質検査等の仕事を、あるいは幻想的に詠んでいる。
 恋も詠まれるが、男性に反発する風でなく穏やかで、レトリックを効かせている。
 仕事や恋のストレスを昇華して、レトリックある短歌に詠み、心の安定を得ているようだ。
 彼女が、家庭を持つかどうかは判らないけれども、こうして心の安定した人生を送る人が、人生の成功者となるのだろう。
 第2歌集の待たれる歌人である。
引用

 以下に7首を引く。
向日葵の海を泳いで辿りつくあなたの背という陸の確かさ
無いものは無いと世界に言うために指はしずかに培地を注ぐ
浮かぶのはぜんぶにせものへばりつく欠片を無菌チューブに移す
さよならのようにつぶやくおはようを溶かして渡す朝の珈琲
ナトリウムイオンの量でかなしみを測るあなたは定時で帰る
からっぽの手を繋ぎますそれぞれに失くした傘の話をする日
ゆうやけを縫いつけてゆくいもうとの足踏みミシンはちいさく鳴いて


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 最近に入手した4冊を報せる。
 
同(1)は、今年8月10日の記事にアップした。
 まず服部真里子の第2歌集「遠くの敵や硝子を」。2018年10月19日、書肆侃侃房・刊。
 価格:2,268円。Amazonで予約募集中からほしかった本を、11月4日に注文し、5日に届いた。
 第1歌集「行け広野へと」に好感を持ち、前・ブログ「サスケの本棚」の2015年4月6日の記事(購入は3月31日)にアップしたが、名前を間違えるなど、ここにリンクしたくない。
國森春野 いちまいの羊歯

 國森晴野・歌集「いちまいの羊歯」。書肆侃侃房より。
 kindle版:2017年4月27日・刊、800円。

岡野大嗣 サイレンと犀
 岡野大嗣・歌集「サイレンと犀」。
 単行本:2014年12月15日・刊、1、836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊、800円。
 上記2冊の歌集は、書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」の内で、kindle unlimited版を、11月4日にタブレットへダウンロードした。

幸田玲 再会
 大山賢太郎氏が配信の「本の棚」に、幸田玲の小説「再会」のkindle本が0円で出ていたので、11月5日にダウンロードした。35ページ。
 幸田玲のkinndle本
「月曜日の夜に」の感想を、先の9月4日の記事にアップした。
 彼女はインディーズ作家として活躍していて、僕も応援したい。




ユキノ進 冒険社たち
 ユキノ進・歌集「冒険者たち」kindle unlimited版を読み了える。
 今月10日の記事、
「入手した4冊」で報せた4冊の内、上から読み継いで3冊目である。
概要
 出版社、各版の発行年次・価格は上のリンクに書いたので、ご覧ください。337首、東直子・解説「命を俯瞰する」 、著者あとがきを収める。
 ユキノ進は1967年・生。広告会社に勤めるようだ。
感想
 事実としては厳しい職場が、透明繭越しにリアルに描かれる。
 ゴルフ、宴会、カラオケで上司にヨイショする自分を自虐的に描く。また派遣切りも詠まれる。
 新潟県への単身赴任となる。帰宅より出掛ける時、3人が見送る歌がある。姉弟は、娘・息子の事だった。女性の歌もあるが、曖昧な詠み方だったので、恋人の事かと思っていた。
 5年の単身赴任が過ぎ、本社に戻り、やがて課長になる。人事評価の疚しさに悩みもする。
 あとがきで彼は、「僕の第一歌集で、もしかしたら最後の歌集かもしれない。」と書く。サラリーマンの出世コースに乗るベクトルと、歌人として続けるベクトルとは、異なるのかも知れない。医師と教師を例外として。
 彼は今も短歌で活躍しているだろうか。
引用

 この歌集より多くをメモしたが、例に倣って7首を引く。
往来で携帯越しに詫びているおれを誰かがビルから見ている
男より働きます、と新人の池田が髪をうしろに結ぶ
贄として子羊の位置に座らされ送別会で酒を注がれる
次はいつ帰ってくるのと聞く姉と黙って袖を握るおとうと
早回しのフィルムのように乾杯を繰り返しながら近づく別れ
三度目に呼ばれ自分の名と気づく心療内科のロビーで人は
船乗りになりたかったな。コピー機が灯台のようにひかりを送る




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 最近に入手した本、4冊を紹介する。
 今月8日に、集英社オレンジ文庫の青木祐子「これは経費で落ちません!」第4巻が届いた。
 先の7月30日の記事で報せた、
同・第2巻・第3巻と同じく、メルカリを通して購入した。
 価格は420円とやや高いが、3方を削ったらしくはあるものの、帯付きで本文も良く、送料込みなので納得である。

千原こはぎ ちるとしふと
 これより3冊は、書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」のkindle unlimited版である。8月8日に、Amazonよりタブレットにダウンロードした。
 まず、千原こはぎ・歌集「ちるとしふと」。
 紙本版:2018年4月16日・刊。1,836円。
 kindle版:2018年5月31日・刊。800円。

ユキノ進 冒険社たち
 ユキノ進・歌集「冒険者たち」。
 紙本版:2018年4月16日・刊。1,836円。
 kindle版:2018年5月31日・刊。800円。

大西久美子 イーハトーブの数式
 大西久美子・歌集「イーハトーブの数式」。
 紙本版:2015年3月13日・刊。1,836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊。800円。

 上記3冊とも、kindle unlimited会員は会費(月額:980円)の他は、追加金・無料である。

 報告していないと思うけれども、高浜虚子の「六百句」をタブレットにダウンロードして読んでいて、内容にではなく難儀している。また「吉本隆明全詩集」「ドストエーフスキイ全集」という、中途の全集もあって、読書に難儀している。どうなる事か。
 とりあえず読んだ本から(長い本は分割してでも)、ここの記事に挙げたい。





佐藤涼子 Midnight Sun
 今月25日の記事「2冊を入手」で報せた内、佐藤涼子・歌集「Midnight Sun」のkindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
概要
 単行本:2016年12月9日・刊、1,836円。
 kindle版:2017年1月30日・刊、800円。
 佐藤涼子(さとう・りょうこ)は、宮城県・在住。2012年「塔短歌会」入会。
 2012年12月~2016年9月までの304首、江戸雪「解説 「弱さ」を恥じている、そして守っている。」、著者の短い「あとがき」を収める。

感想
 第1章第1節の「グレープフルーツムーン」では生活詠や青春詠だったのが、第2節「記録」では震災詠、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の被害とその5年後までの後遺を描く。震災当時のことは回想詠らしいが、被災者らしい切迫感があって、心に迫る。
 その後の歌は、被災以後を生き延びる歌と、新しくはない恋の歌が並ぶ。「かぼちゃ煮てセーター編んだと詠むような人生だってあったはずだが」と詠んで、安楽な生のない覚悟をしている。
引用

 歌集の初めの方から7首を引く。
震度7母が我が子を抱くように職場の床でパソコンを抱く
眩暈か余震かもはや誰にも区別はつかない ただ揺れている
「母さんは流されたぞ」と告げられた者でも勤務させるしかない
手鍋から湯を注がれて髪洗い「もう疲れた」と泣いたその夜
もう駄目と悲鳴を上げる決心がようやくついた三年たって
一年で地平の高さが変わったか 更地の町の違いを探す
愛されていた人が死んだ 生かされて何かがずれた朝がまた来る




佐藤涼子さんから、ツイートを頂きました。

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