角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、18番目の句集、細見綾子「技藝天」を読み了える。
 今月8日の記事、小池文子・句集「巴里蕭条」に次ぐ。
 実は2冊の句集の間に、17番目の句集、高柳重信「青彌撒」があるが、読まなかった。数行の分かち書きがきであり、定型も守られていない。俳句が外国で盛んになり、翻訳、また外国語の俳句など、逆輸入された影響かも知れない。
概要
 細見綾子(ほそみ・あやこ、1907年~1997年)は、結婚後2年で夫を亡くす(結核で病没)など、22歳までに両親、夫を失い、病臥した。戦前の1942年、句集「桃は八重」がある。
 1947年、社会性俳句の旗手、沢木欣一(1960年以降、志向を変える)と結婚、俳誌「風」を助け、1子を得る。ただし社会性俳句へは傾かなかった。
 原著は、1974年、角川書店・刊。519句、著者・あとがきを収める。第5句集。
感想

 生活実感の籠った句風である。社会性俳句、前衛俳句に傾かなかった。
 旧師・青々には、「つらい冬の時代である現在を気長に耐えていればいつか春がやってくる」という教えがあり、彼女もそれを守り、後に旺盛に句集を刊行した。
 定型、季語、旧仮名、古典文法を守っての、達成である。
引用
 以下に5句を引く。
一人旅すすきの許(もと)の休み石
故郷の粟餅を焼き老いんとす
春雪のはげしさをもて死を惜しむ(深田久弥さん急逝)

雪嶺へわさび根分けの目を上ぐる
青梅に紅さすはつか東慶寺
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。