風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケは、2017年10月17日付けでのAmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)の発行に続き、第5詩集「改訂版 ソネット詩集 光る波」(縦書き)を、2018年5月31日、Kindleストアにて発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 2011年10月1日・刊の紙本「ソネット詩集 光る波」に、数十ヶ所の加筆をし、編集しました。
 販売ページは、Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 ソネット 光る波」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。右サイドバーのバナーよりも着けます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。
 次回の無料キャンペーンを、9月初め頃に予定しています。

書肆侃侃房

佐藤涼子 Midnight Sun
 今月25日の記事「2冊を入手」で報せた内、佐藤涼子・歌集「Midnight Sun」のkindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
概要
 単行本:2016年12月9日・刊、1,836円。
 kindle版:2017年1月30日・刊、800円。
 佐藤涼子(さとう・りょうこ)は、宮城県・在住。2012年「塔短歌会」入会。
 2012年12月~2016年9月までの304首、江戸雪「解説 「弱さ」を恥じている、そして守っている。」、著者の短い「あとがき」を収める。

感想
 第1章第1節の「グレープフルーツムーン」では生活詠や青春詠だったのが、第2節「記録」では震災詠、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の被害とその5年後までの後遺を描く。震災当時のことは回想詠らしいが、被災者らしい切迫感があって、心に迫る。
 その後の歌は、被災以後を生き延びる歌と、新しくはない恋の歌が並ぶ。「かぼちゃ煮てセーター編んだと詠むような人生だってあったはずだが」と詠んで、安楽な生のない覚悟をしている。
引用

 歌集の初めの方から7首を引く。
震度7母が我が子を抱くように職場の床でパソコンを抱く
眩暈か余震かもはや誰にも区別はつかない ただ揺れている
「母さんは流されたぞ」と告げられた者でも勤務させるしかない
手鍋から湯を注がれて髪洗い「もう疲れた」と泣いたその夜
もう駄目と悲鳴を上げる決心がようやくついた三年たって
一年で地平の高さが変わったか 更地の町の違いを探す
愛されていた人が死んだ 生かされて何かがずれた朝がまた来る




佐藤涼子さんから、ツイートを頂きました。

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 5月23日に、三月書房より沖積舎「西東三鬼全句集」再販本(4,000円、税・送料・別)を買う積もりだったが、参考にAmazonを観ると、角川ソフィア文庫で1,339円で出ている。
 廉価で、俳句なら1句1行で読みやすいかと、注文した。
 翌日、5月24日の午後に届いた。内容を見ると、1ページ10句で、混み合って少し読みにくい。
 ちくま文庫「尾崎放哉全句集」(未読)の本編のように、1ページ5句くらいかと思ったのだ。字の大きさは同じくらいだが、俳歌の本は余白の美を尊ぶもので、ネット購入でよくある「残念」に近い。貧しい者の責任として、いつか読もう。
佐藤涼子 Midnight Sun
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズから、佐藤涼子「Midnight Sun」kindle unlimited版を、Amazonよりタブレットにダウンロードした。
 このシリーズは、僕の知るところ、田中ましろ「かたすみさがし」を例外として、字が小さい。タブレットの下部のナビゲーションバーで「拡大」を使うと、1首がタブレット画面をはみ出す。ピンチアウトで拡大できるが、次ページでは戻るようで、ページごとの操作は面倒だ。
 栞機能はあるが、ハイライト、メモが利かない。それでも、そういう本だと思って読んで来たので、とくに不満はない。コストパフォーマンスにも由るのだ。




林和清 去年マリエンバートで
 今月4日の記事、「歌集5冊をダウンロード」で報せた内、5冊目の林和清「去年マリエンバートで」kindle unlimited版を読み了える。
 今月20日の記事、
原田彩加・歌集「黄色いボート」同・版に次ぐ。
 Amazonでの諸版の発行年次、価格は、1番目のリンクの記事に挙げたので、ご参照ください。
概要
 林和清(はやし・かずきよ)は、1962年、京都市・生まれ・在住。「玲瓏」所属。
 「去年マリエンバートで」は、12年ぶりの第4歌集。タイトルは、アラン・レネ監督のフランス映画から。
 彼は去年の「ふくい詩祭」(福井県詩人懇話会・主催)で、師の塚本邦雄の話を交えて、講演をしてくださったので、親しみがある。その時にこの歌集の紙本版を20冊ほど、販売していたが僕は買えなくて、待つと今回のようなチャンスもある。
感想
 第1~第3歌集を読んでいないので、はっきりした事は書けない。
 生活の不安定(1ヶ月50を越える講座と、執筆で、生活しているようだ)の不安があるのか。3・11地震災害、いじめなどへも関心を持つ。
 「24時間」と題する、1日を時刻(分刻み)入りで詠んだ、100首連作があり、生活を明かすようだ。
 「人体のなかの砂漠の部分指せ三分たてば目隠しを取れ」等の、僕にはわからない歌も混じる。
引用

 以下に7首を引く。
ふりむけば落武者ばかり群れてゐた芙蓉の寺のぬかる庭土
再来年くらゐに会はう(または後世)恵比寿の破れたビルの前にて
なぜ自分は無傷なのかとおもふとき三月の空また雪が降る
西空の背骨を見たり父の身を火に葬りたるのちの日暮に
また雨が来るもみがらを焼いた田のふすぶる煙にまた雨が来る
殺人のニュースがひととき絶えてゐたそのことも記憶の瓦礫のひとつ(注:3・11詠)
家の中でどこをさすらつてゐたのだらう東山から月がのぼる(注:奥さんを詠む)


原田彩加 黄色いボート
 今月4日の記事「歌集5冊をダウンロード」で報せた内、4冊目の原田彩加「黄色いボート」kindle unlimited版を読み了える。
 今月14日の記事、堀合昇平・歌集「提案前夜」に次ぐ。
 あと1冊だが、その後にダウンロードした田中ましろ「かたすみさがし」、その前の堀米好美「いのち」、宇野なずき「最初からやり直してください」の歌集が、タブッレットで待っている。
概要
 Amazonでの諸版の発行年次、価格は上のリンク記事に載せたので、それをご覧ください。
 原田彩加(はらだ・さいか)は、1980年・生、どの短歌グループにも属さない。NHK文化センターの講座で東直子と出会う。幾つかの短歌賞を受賞した。
 歌集の末尾に、東直子・跋「こんなところにも咲くはな」、著者・あとがきを収める。
感想
 仕事は厳しく、転職してもストレスが多そうだ。
 踏ん切りのつかない青年(「あなた」と呼ばれる)との、実らない恋もストレスのようだ。
 少女時代の回想が1章、田舎へ帰郷して祖母と触れ合った1章、共に癒しとしてある。
 仕事も恋も男性原理の社会に、強い不満があるようだ。飛び出すのでなければ、女性原理は育児にしかないようだが、それも危険である。
 この新鋭短歌シリーズを読んで来ると、短歌を詠みながらも、不幸な娘さんが多いようだ。仕事を含めて、時代の故もあるようだ。若者に、歌を詠みながら、生活に耐えてもらいたい。
引用

 以下に7首を引く。
瞬きもせずに見ていたペンの先 シンメトリーなあなたの名前
辞めるって決めたら楽になったよと踊り場へ来て同僚はいう
壇上に追いたてられてスピーチをさせられている手負いの獣
パンジーの花殻を摘むけんかして仲直りすることに疲れて
嫌わずにいてくれたことありがとう首都高速のきれいなループ
庭中の花の名前を知っている祖母のつまさきから花が咲く
黒板を消しても残る落書きのようにあなたがまだそこにいる





堀合昇平 提案前夜
 堀合昇平・歌集「提案前夜」kindle unlimited版を読み了える。
 今月4日の記事
「歌集5冊をダウンロード」で報せた内、3冊目の読了である。
概要
 紙本版、kindle版の、発行年次と価格は、リンク先で紹介したので、ご覧ください。
 堀合昇平(ほりあい・しょうへい)は、1975年・生。2008年、「未来」入会、加藤治郎に師事。
 コンピューターメーカーの営業職に従事。
感想
 営業職として、提案(プレゼンテーションだろう)の前夜の作成の苦労、高揚、更には採用されなかった時の落胆を含めて、華々しくはない営業の歌が多い。
 作者の奮闘ぶりを知る、妻、一人娘を含めた家族の、社会に耐えて慎ましい生活を送る様が浮かぶ歌がある。
 作者43歳、現在も短歌に仕事に、活躍している事を願う。角川「短歌年鑑」を買わないので、その辺り僕にはわからない所がある。
引用

 多くノートにメモしたけれども、以下に7首を引く。なお()内は、詞書である。
壁に貼るガントチャートに進捗の遅れを刻む稲妻線は(一面に。くっきりと。)
断られたときほど笑え もういっぽん茜に染まるビルに飛び込む
ありきたりの言葉を幾つ並べても真実だろう売上げだけが
梅雨明けをニュースは告げる 墜ちぬため働くのだと何故言い切れぬ
聞き分けの良いことのなお悲しくてリュックを背負う小さな背中
結び目を解くそばから倒れたもん勝ちだよなんてつぶやいている
無人駅に飲むカフェ・ラテの冷えてゆくまで重すぎるTO DOばかり


 この記事の、ブクログへの転載の紹介がツイートされ、堀合様ご本人より返信が届きました。
 なお読んだのは100首選でなくて、完本版です。

トントングラム
 先の4月20日の記事、「歌集2冊をダウンロード(5)」で報せた内、尼崎武「新しい猫背の星」に続いて、伊舎堂仁「トントングラム」をタブレットで読み了える。
 Amazonの諸版の発行年次、価格は先の記事にアップしたので、ご参照ください。
概要
 伊舎堂仁(いしゃどう・ひとし)は、1988年沖縄県石垣島・生まれ。都内の兄の所に居候したりしたが、2014年・当時には石垣市・在住となっている。凱旋帰国したのだろうか。
 「トントングラム」は、娘が生まれたなら付けたい名前だという。重さの単位の「トン」と「グラム」からと、戸を叩く「とんとん」の連想と、僕は平凡に考えてしまう。
 歌集の末に、加藤治郎・解説「過剰なイメージと繊細な自意識」、著者・あとがきを付す。
感想
 読み始めた時、読み通せるか不安になった。ストライクゾーンの広い僕とはいえ、ボールになって読み尽くせない本はある。
 ただし引用のためにメモを取りながら読むと、読めてくる。
 彼は「おもしろい人」と思われたいらしい。たしかに異想があって、面白い。このままでは単発だが、彼の発展や、後続者があれば、「面白い」は続くだろう。
 この異想は、生活の違和感から、時にへたれ的に来るのだろう。多くの人が感じている事から来て、多くの人の関心を引いている。
引用

 以下に7首を引く。
花束へOLさんのする会釈 瞬間的で、でも確実な
「どう元気?こっちは凹を見間違い♡と思うほどに順調」
その単二電池で動くご立派なポエムはどうかしまってください
小4でティッシュに書いたゆいごんにねむいとだけありうんかわらない
くさいねとOKの指でつまむから鼻声になるあなたと暮らす
田と海にひとりもいない、いないからこんなにクラクションがならせる
新品の電池が弱り切れるまでつかっていたのですか 歯ブラシ



新しい猫背の星
 4月20日の記事「歌集2冊をダウンロード(5)」で報せた内、尼崎武・歌集「新しい猫背の星」kindle unlimited版を読み了える。
 Amazonでの諸版の発行年次、価格については先の記事で述べたので、ご参照ください。
概要
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズの1冊である。
 尼崎武(あまがさき・たけし)は、1979年・生まれ。枡野浩一によって短歌を知り、師事。
 第1歌集「新しい猫背の星」は、323首、光森裕樹・跋「「正直なたましい」ひとつで」、著者・あとがきを収める。
感想
 彼は、幸せを強く求めた。優れた妻を得て、子供も生まれるが、何が理由か、別れてしまう。
 正直で優しい人が幸せになるべきなのに、この世がはじき出してしまう。
 ここで社会論をぶつ積もりはないが、不条理な、歪つな世の中である。それでも生き抜かなければならない。
 いわゆるニューウェーヴの歌人が、不幸そうで、短歌の力が及ばない場合があるようで心配だ。若者に負荷を掛け過ぎる時代のせいもあるようだ。
 短歌の姿は、句跨りなどが多いが、ほぼ定型に収まっている。
引用
 以下に7首を引く。

白桃の産毛をむしる 生きてんのにさよならなんてなくないですか
一番の幸せがいい? 二番から十番ぜんぶ叶うのがいい?
かわいくてがんばり屋さんで運がいい そんな女を嫁にもらった
もう俺は今日から生まれ変わるのに昨日のことで怒られている
トイレから戻ってきたら産まれてた お父様に似てせっかちな子ですよ
笑顔でのさよならをもう恐れない 春の光に溺れていても
さよならが聞けてよかった ふらふらの足に真新しい靴を履く





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