岩波文庫の一茶「七番日記」(下)より、5回めの紹介をする。
 同(4)は、今月7日の記事にアップした。
 

 今回は文化12年正月~同6月の半年間、197ページ~242ページの46ページを読んだ。
 3春262句、3夏303句とあり、計565句である。

 この期の一茶の大事として、妻との間に長男・千太郎が生まれたが、1月足らずで夭死した。解説では、「この子に愛情を感じる暇もなかったらしく、」と書かれるが、男の子を吟じた句が多くあり、追悼句とされる「はつ袷(
あはせ)にくまれ盛(ざかり)にはやくなれ」は哀切である。

 田を吟じたり、蛙を吟じたり(「痩蛙(
やせがへる)負けるな一茶是(これ)に有(あり)」の有名な句)など、帰住した安心と、旺盛な創作意欲を見せる。
 有り得ない句として、「梅の木にぢだんだを踏(
ふむ)烏哉」を挙げて置く。

 以下に5句を引く。
陽炎(
かげらふ)やわらで足拭く這入(はひり)口
むらのない苗代とてもなかりけり
老(
おい)の身は日の永いにも泪(なみだ)かな
妹(
いも)が子は穂麦の風にふとりけり
老(
おい)けりな扇づかひの小ぜはしき
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写真ACより、「ウィンターアイコン」の1枚。