風の庫

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根源俳句

 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、2番目の句集、原裕「葦牙」を読み了える。
 先の8月30日の記事、
岡本眸・句集「朝」に次ぐ。
概要
 原著「葦牙(あしかび)」は、1971年、春日書房・刊。321句、著者後記、原コウ子「解説にかへて」を収める。
 原裕(はら・ゆたか、1930年~1999年)は、俳誌「鹿火屋(かびや)」の主宰・原石鼎の没後、夫人の原コウ子の要請により養子縁組。1974年、原コウ子より主宰を継承した。
感想
 原裕は、社会性俳句以後の<第4世代>として現われ、「なつかしい句」を主唱したとされる。社会性俳句、根源俳句を避けたのであろうか、「後記」でも「自念自然流である」と言いきっている。
 作意のある俳句より、時に驚くような鮮やかな句が生まれるようだ。
 後期にも、俳句の完成度を高めたようだ。
引用
 以下に5句を引く。
猫寒く雨の浦安波こまか
児が泣けば冬浜に集(よ)る日の翼
忘却の彼方に大樹蟬しぐれ
指吸ひつつ仮眠男児や夏一途
秋風にひらきて十指とぎすます
0-01
写真ACより、「折り紙」のイラスト1枚。





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 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第12巻(1982年・刊)より、7番めの句集、西東三鬼「変身」を読み了える。
 先行する
阿波野青畝・句集「紅葉の賀」は、先の8月25日の記事にアップした。
概要
 西東三鬼(さいとう・さんき、1900年~1962年)は、1940年の治安維持法に拠る「京大俳句事件」で検挙された。
 戦後の1948年、山口誓子・代表の俳誌「天狼」の発刊に尽力する。
 原著は、1962年、角川書店・刊。1951年より10年間の、1,073句を収める。山口誓子・序、あとがきを付す。
感想
 創刊の「天狼」で、山口誓子の述べた「酷烈なる俳句精神」、「根源」(のちに根源俳句と呼ばれた)に拠る、烈しい句が並ぶ。時に酷薄となるようだ。字余りの破調、内容の盛り過ぎによる難解さ(例えば「遁走の蟬の行手に落ちゆく日」など)がある。

 当時の状況、文学運動の流れ、などもあったのだろうが、今となっては高く評価し得ない。
 1,073句を吟じ選句する身もたいへんだが、落語ではないが、読む者の身もたいへんである。
引用
 以下に5句を引く。
薄氷の裏を舐めては金魚沈む
秋風の屋根に生き身の猫一匹
眼そらさず枯かまきりと猫と人
膝にあてへし折る枯枝女学生
木の実添え犬の埋葬木に化(な)れと
0-20
写真ACの「童話キャラクター」より、「シンデレラ姫」の1枚。



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、5番目の句集、津田清子「礼拝」を読み了える。
 今月9日の記事、右城暮石「声と声」に継ぐ。
概要
 津田清子(つだ・きよこ、1920年~2015年)は、橋本多佳子に師事・「七曜」同人、多佳子の師・山口誓子の「天狼」に投句、のち同人。
 1971年、「沙羅」創刊・主宰、のち「圭」と改称。
 第1句集「礼拝」は、1959年、近藤書店・刊。山口誓子・序、450句、橋本多佳子・跋、後記を収める。
感想
 津田清子は、戦後に俳句を始めており、ここでは1948年~1958年の句を、年ごとに分けて順に収めている。戦前の句界から切り離された、清新な世界がある。
 しかし句集名からもわかるように、彼女はクリスチャンであり、僕は信仰に熱心な人をあまり信用しない。経験上、無信仰で苦しんでいる人に善い人が多い。僕は短歌を読み・詠む事で救われている。
 また山口誓子の「酷烈なる精神」、根源俳句の厳しさから来るのだろうが、破調(字余り、等)が多い。
 僕は俳句の素人だから、定型の、生活の中の調和・美を吟じた句が好ましい。大衆俳句は、その方向に向かっているようだ。最近の時事状況では、わからないけれども。
引用
 以下に5句を引用する。
うろこ雲うろこ粗しや眠り足る
曼珠沙華目的地まで暮るるなかれ
聖玻璃の五彩西日に強めらる
船出待つ他郷の雲の峯に向き
独奏や雷雨を厚き壁に絶ち
0-44
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。





 
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