風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

歌集

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 最近に入手した4冊を報せる。
 
同(1)は、今年8月10日の記事にアップした。
 まず服部真里子の第2歌集「遠くの敵や硝子を」。2018年10月19日、書肆侃侃房・刊。
 価格:2,268円。Amazonで予約募集中からほしかった本を、11月4日に注文し、5日に届いた。
 第1歌集「行け広野へと」に好感を持ち、前・ブログ「サスケの本棚」の2015年4月6日の記事(購入は3月31日)にアップしたが、名前を間違えるなど、ここにリンクしたくない。
國森春野 いちまいの羊歯

 國森晴野・歌集「いちまいの羊歯」。書肆侃侃房より。
 kindle版:2017年4月27日・刊、800円。

岡野大嗣 サイレンと犀
 岡野大嗣・歌集「サイレンと犀」。
 単行本:2014年12月15日・刊、1、836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊、800円。
 上記2冊の歌集は、書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」の内で、kindle unlimited版を、11月4日にタブレットへダウンロードした。

幸田玲 再会
 大山賢太郎氏が配信の「本の棚」に、幸田玲の小説「再会」のkindle本が0円で出ていたので、11月5日にダウンロードした。35ページ。
 幸田玲のkinndle本
「月曜日の夜に」の感想を、先の9月4日の記事にアップした。
 彼女はインディーズ作家として活躍していて、僕も応援したい。




いつも空をみて
 浅羽佐和子・歌集「いつも空をみて」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 ダウンロードは今月16日の記事、
「入手した3冊(3)」にアップした。
概要
 シリーズ名、各版の出版時期、価格は、上記のリンクに書いたので、ご参照ください。
 浅羽佐和子(あさば・さわこ)は、1972年・生。2001年・未来短歌会入会。2009年・未来年間賞受賞。
 「いつも空をみて」には歌集編に、加藤治郎・解説「空を見上げる」、後記「短歌とわたし」を収める。
感想
 Ⅲ章に別れ、第Ⅰ章ではありがちな、危うげな恋が描かれる。若い女性の短歌は、悲恋ものが多い、と思ってしまう。
 第Ⅱ章では、いきなり長女出産後の子育てが描かれる。優しい母親だけでは、いられないようだ。
 仕事はSEのそれもマネジメント役として、キャリアを積んでいる。
 生活の違和感を、字余りの多い歌で訴えている。
 「男は気づかない振りをしている」か「ほんとうに気づかない」と断罪される。気づいて子育てに参加しても、男は仕事が100%うまく行かなかったり、昇進に響いては、1家で困ると思うのだろうか。
 第Ⅲ章では、次女誕生の出産場面から、2人の子育てとなる。女性に不利な社会の仕組みだと思うけれども、僕には提言の言葉がない。
 彼女が短歌を続けて、良い家族関係となり、仕事で奮励する、日が来る事を願うのみである。
引用

 以下に7首を引く。
返事せぬままのメールがそれぞれの表情をして私を見てる
恋人が雨の匂いを消してゆく 花の図鑑はもう開かない
眠いのに眠れない子にいなりずしみたいな足でほっぺを蹴られ
暗闇の全件削除した指に煙のようなにおいが残る
予定日がこわい、私の愛情がなにものかにまた試されるようで
真夜中に何度も私の手をさがす見つけてなでてそしてまた寝る
この鍵をグルッとまわして母親に戻らなきゃいけないんだ、さあ



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 先の9月9日の記事
「届いた2冊」で、到着を報せた砂子屋書房・現代短歌文庫「藤原龍一郎歌集」(正)(続)より、(続)に入る。
 内容的には(正)編の
「エッセイ・解説」に次ぐ。
  「続 藤原龍一郎歌集」には、3冊の歌集(各・完本)と、1冊の未刊歌集「ノイズ」を収める。
 まず初めの「嘆きの花園」を読み了える。
概要
 原著は、1997年、ジャテック出版・刊。
 首数不明、「あとがき」を収める。
感想
 たいていの語彙はわかるけれども、中に「セバスチャン・ジャプリゾ」「紅夜叉」などの僕には不明な語が混じる。(後に2つ(2名)共、Wikipediaで概要が判明した)。
 AMラジオ・ディレクターとして、ヒット番組を育てたとされる。
 バブル景気の波も被り、生活に、短歌に、相対的安定は至ったようだ。その中で、作歌への情念を昂ぶらせようと、当時先端だったらしい「コンビニ」に「文学の素」を求めようとしたりする。
 都市詠の歌集としては、僕がほとんど田舎住まいなので、あまり反応しなかった。
引用

 以下に7首を引用する。
アナログの思考回路がデジタルに蝕まれつつ軋む月夜だ
夜を灯すコンビニエンス・ストアーに文学の素あらば買わんよ
マンションに帰り着きたる肉体はさぶしえ『大辞林』に躓く
散文のまさに散文的あわれイベント実施マニュアル読めば
もてあそぶ言葉、肉体異ならず何を断念せし来し方か
ジュリアナ東京今宵テクノに綺羅めきて「諧調は偽り」なればこそ
二十世紀後半を生きわれにさえ白熱と呼ぶ日月はあり



タルト・タタンと炭酸水
 竹内亮・歌集「タルト・タタンと炭酸水」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 入手は、10月16日の記事、
入手した3冊(3)の初めにアップした。
概要
 各版の発刊日と価格は、上のリンクに記載したので、ご覧ください。
 竹内亮(たけうち・りょう)は1973年・生。東大法科大学院・修了。弁護士。
 223首、東直子・解説「命の色彩」、著者「あとがき」を収める。
感想
 静謐で透明な歌境は、今に珍しく、優れた特色である。
 明らかにフィクションとわかる歌がある。嘘を書くなら、嘘を現実っぽく思わせるか、現実を嘘っぽく思わせるかだが、この歌集では中途半端である。
 特色は翻って、生活と創作への反発・嫌悪が足りない感じがする。どのグループ(結社、同人誌)にも属さないからだろうか。
 今も健全に生活し、健詠している事を願う。
引用

 以下に7首を引く。
カーディガンの少女の横で少年は片足立ちで靴はき直す
雲が白い夏の初めの風の朝きみ柔かな瞼を開く
キッチンで知らない歌を口ずさみ君は螺旋のパスタを茹でる
長考の将棋のような間があって「それ、私も聞いたことある」
ひまわりの種を千粒買いました近所の道にそっとまきます
玄関のインターホンを押した後はにかみながら視線を下げる
絵の裏の最初のページ箴言は雲の小さい空に溶けゆく




タルト・タタンと炭酸水
 最近に僕が入手した3冊の本を報せる。
 昨年2017年3月27日の記事、
「入手した3冊(2)」に次ぐ。

 まずAmazonのkindle unlimitedから、10月10日に、歌集2冊をタブレットにダウンロードした。
 1冊は新鋭短歌シリーズ、竹内亮「タルト・タタンと炭酸水」。
 紙本:2015年3月13日・刊。1,836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊。800円。

いつも空をみて
 同じく新鋭短歌シリーズより、浅羽佐和子「いつも空をみて」。
 紙本:2014年12月15日・刊。1,836円。
 kindle版:2016年6月4日・刊。800円。
 上記2冊とも、kindle unlimited版は、追加金・無料。

「歌壇」11月号
 Amazonに予約注文してあった、綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2018年11月号が、10月13日に届いた。
 169ページ、800円(税・込み、送料・込み)。

 僕の好みの本として、長く電子書籍に傾いていたが、最近、揺り戻しがあって、紙の本に親しんでいる。電子書籍はまだ、種類が少ない。今後は、どうなるかわからない。


 短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、歌集「氷見(ひみ)」を読み了える。
 
同・「雪天」を読む(後)は、先の8月26日の記事にアップした。
概要
 上のリンクの中で、初期未刊歌集として、紹介した歌集である。
 岡部文夫(1908年~1990年)が、1947年~1954年の約8年間、富山県氷見市に在任した頃、周囲より「氷見観光の作品をまとめてみないか」と奨められて、1954年、歌集「氷見」の稿がまとめられた。
 著者の「巻末小記」まで付されながら、刊行される事はなく、没後の1992年に、主宰した「海潮」会員らによって、短歌新聞社より刊行された。412首。
感想
 作品は、氷見市を歩き回って手帳に書きつけた短歌だが、決して観光案内的なものではない。
 字余りの歌もあるが、時期の傾向で、推敲が足りない訳ではないだろう。
 この歌集の生前に未刊だった事が、続々と歌集を刊行した歌人が23年間潜んでいた、その理由の1つであったなら痛ましい。
 このあと全歌集の歌集編として、6冊の合同歌集よりの、抄出を残すのみである。

引用
 以下に7首を引く。
こほろぎのこゑこそひびけ昼ながらこの山中のひとつ石のした
石に割りしたたる雲丹(うに)を分ち食ふ蔭ひろき亜熱帯植物の中
山茶花のしたを来(き)しかば落ち布(し)けるその花びらに風は明るし
芽ぶかむとする銀杏の樹のしたに或いは田螺の煮ゆる火を瞻(も)
能登ちかきこの峡に住む九十八戸なべて竹を編む昼を灯して
砂の上(へ)を吾がゆきしかば培(やしな)ひて冬美しき葉牡丹の列
樺いろのおのれさびしき蛾がひとつ羽を開きて扁(ひら)たくをりぬ

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写真ACより、「アールデコ・パターン」の1枚。



大西久美子 イーハトーブの数式
 大西久美子・歌集「イーハトーブの数式」kindle unlimited版を読み了える。
 先の8月10日の記事、
「入手した4冊」で報せた内、4冊目の本である。
概要
 ダウンロード時期、出版社、各版の出版時期・価格については、上のリンクに述べたので、ご参照ください。
 295首、加藤治郎・解説「北からの風と言葉」、著者・あとがきを収める。
 著者は、岩手県・生、2014年「未来短歌会」入会、加藤治郎に師事。
感想
 3月11日の東北大震災の時、彼女は鎌倉市にいて、郷里で入院中の父と連絡が取れなかった。その父が亡くなり、すでに母は亡く、兄弟姉妹もいないようだ。
 数学科の理系女子(リケジョ)として、淡い恋もありながら大学を卒業し、就職した。
 新しい歌人として、旧かな遣い、古典文法が珍しい。掉尾の歌(引用のしまい)のように、歌による救いを信じて(やや強引か)、生きてほしい。
引用

 以下に7首を引く。
0番線プラットホームに雪を踏む「しばれるなはん」のこゑを聞きつつ
海沿ひの瓦礫の上を飛ぶかもめ さくら色した足を揃へて
夕闇の深まりてくる病室で時々午後のかなしみを言ふ
透明なケースに残る新品の父の名のなきタオルやパジャマ
午前二時しまふくろふの鳴き声を呼び出してゐる電子辞書から
卓上に資料五枚が置かるるにまづ釈明を聞かされてゐる
ねむたくてねむれぬ指で打つキーの音の先には詩が待つてゐる



大西久美子さんが、ツイートをくださいました。

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