江國香織の小説「冷静と情熱のあいだ」を読み了える。
 彼女の小説の紹介は、今年7月27日の記事、「なつのひかり」以来である。

 なお今年9月12日に、エッセイ集「泣かない子供」の感想をアップした。

冷静と情熱のあいだ
 「冷静と情熱のあいだ」は、角川文庫、2001年・9版、275ページ。
 イタリアのミラノでマーヴというアメリカ人と同棲する日本人アオイが主人公である。穏やかなマーヴ、優しい周囲の人に囲まれながら、アオイにはフラッシュバックする記憶がある。日本の帰国子女大学で出会った阿形順正であり、「私のすべて」と信じたが、人工妊娠中絶を許されず、別れた。
 その10年後、阿形順正から1通の手紙が届き、アオイとマーヴは別れる。2人の10年前の約束通り、フィレンツェのドゥオモ(イタリアで街を代表する教会堂)で、アオイと順正は再会する。「嵐のような三日間だった。嵐のような、そして、光の洪水のような。」を送ったあと、アオイはマーヴと別れた事を言い出せず、2人は別れる。
 若い時代の一途な恋と挫折が、穏やかな生活に沈み込ませず、幸せになれない。僕は少し泣いた。
 引用の1文でもわかるように、文体は叙述の歩行をやめ、時に舞踏する。彼女には、出版された詩集がある。