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 3月27日の記事「入手した3冊(2)」で紹介した3冊の内、荒川洋治・詩集「北山十八間戸」を読み了える。
 気争社、2016年10月・2刷。今年の鮎川信夫賞を受賞。
 読み了えたと言っても、手応え的に僕にはよくわからない。
 巻頭の「赤砂」は、深沢七郎の「東北の神武たち」のような、農家の兄弟の話と読める。「山なみが/智謀と同じ高さであらわれ」とあり、彼は智謀の人だった。
 「北山十八間戸」では、かつて「水駅」で世界地図より詩を紡んだ詩人が、日本の古い歴史に、「赤江川原」と共に、深い関心を示す。
 「友垣」は、「日のあたる人よりも/日のあたらぬ人の(謄写版の残業は何時まで)/ほうが冷たい」と始まる。高校文芸部の1年先輩の荒川さんがリードして、僕のガリ版詩集「炎の車輪」が出た時、彼は芥川賞作家・多田裕計氏の序文を貰って、自らガリ版刷りをしてくれた。無料の筈はないが、何も知らない僕は支払わず、彼が出してくれたのだろう。暖かい人だ。
 「鉱石の袋」では、「これらの風景を守るために/人は はたらいた 一滴の血も流さずに」と描くけれども、仕事の怪我で僕の両手の人さし指の爪は歪んでおり、また縫合手術を受けた人も周囲にいた。落命した人も含まれるだろう。
 荒川さんは令名高い現代詩作家・評論家であり、僕は無名だけれども、今も詩と短歌の創作を続けられる源の1つは、高校生時代の厳しくも暖かいご薫陶である。