服部真里子・第2歌集「遠くの敵や硝子を」を読み了える。
なお表紙写真は、トリミングの都合で、上下端が少し切れている。
今月7日の記事「入手した4冊(2)」の初めで、入手を報せた。
(なお同・記事の幸田玲「再会」は、既に読んだ小説だった)。
概要
上のリンク記事で、前ブログ「サスケの本棚」に載せた、第1歌集「行け広野へと」の感想のリンクを挙げないと書いたけれども、名前を訂正の上、ここに引いて置く。購入記事へのリンクもある。2015年4月6日の記事、服部真里子「行け広野へと」である。
4年ぶりの第2歌集は、2018年10月17日、書肆侃侃房・刊。
普通より縦長の本で、171ページ、291首を収める(1ページ2首)。
感想
論争の発端となったという、「水仙と盗聴」の歌など、よくわかると思う。「歌壇」2017年5月号の感想の冒頭部で、僕の理解を述べた。むしろ男性に少し媚びていると思う。
若者にとって厳しい社会で、歌壇のヒロインとして、彼女は生き抜く決意をしたようだ。
芸術を取るか生活を取るかの岐路で、彼女は若くして芸術を取ったようだ。
彼女が将来、不幸に成らない事と、新しい歌を生み続ける事を、今の僕は願うばかりだ。
なお彼女は、今年10月10日のツイートで、治療に入る旨を告げている。
お知らせです。1年くらい前から、痩せた痩せたと言われていたのですが、ちょっと大きめの病気にかかっていることがわかりました。しばらく、短歌の仕事はお休みして、治療に専念します。すでにお仕事をお断りしてご迷惑をかけてしまった皆さま、申し訳ございません。
— 服部真里子 (@hanzodayo) 2018年10月10日
引用
以下に7首を引く。
夕顔が輪唱のようにひらいても声を合わせるのはいやだった
見る者をみな剝製にするような真冬の星を君と見ていつ
水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水
父を殺し声を殺してわたくしは一生(ひとよ)言葉の穂として戦ぐ
言葉は数かぎりない旗だからあなたの内にはためかせておいて
地下鉄のホームに風を浴びながら遠くの敵や硝子を愛す
もう行くよ 弔旗とキリン愛しあう昼の光に君を残して