砂子屋書房・現代短歌文庫91「米川千嘉子歌集」(2011年・刊)より、第2歌集「一夏」を読み了える。
 今月18日の記事、同「夏空の櫂」を読む、に次ぐ。
概要
 原著は、1993年、河出書房新社・刊。
 第4回・河野愛子賞・受賞。
 短歌編に、エッセイ風のあとがき「郭公」を付す。
 「一夏」は、「ひとなつ」ではなく、IMEにはないけれど、「いちげ」と読む(三省堂「現代短歌大事典」2004年・刊に拠る)。
感想
 何といっても、妊娠、出産、子育ての歌が主である。
 「わが子可愛い」だけの歌ではないけれど、やはり喜びの歌に目が行く。
 父よりの血脈、青年期を脱する夫、夫のボストン留学への同伴、掉尾には転んでも立ち上がる子への励ましが、詠まれる。
 この文庫には、歌集はこれまでの2冊を収め、あと歌論・エッセイと解説を付す。
 彼女はこのあとも、創作旺盛で、続々と歌集を刊行している。
引用

 貼った付箋は18枚、内より7首に絞るに苦労した。
迷ひをるわれをしづかに消すやうに身籠りしものを誰も祝福す
愛ふかく負けてゆく生万葉集に萩のくれなゐのごと零れをり
魂のふかくともればみどり子は胸さすこゑをたてて笑ひぬ
わがいのちただに見つめて生くべしと母を覚えて日々濃き微笑
母と呼びしはじめてのこゑ胸抜けて夏の燕の消えたる彼方
こゑに競ひて子らは遊べりかうかうと母の匂ひを放ち遊べり
母の手をふとほどきたる幼子に入道雲はしづかなる餐
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。