風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

淡々と

IMG_20190126_0002
 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」より、冒頭の表題作「愁月記」を読み了える。
 新潮文庫、1993年・刊。7編の短編小説を収める。帯が破れかけているが、残している。
 故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
 目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
 作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主としてあれこれ手配し、斎場から骨壺を抱いて車で戻る所で終わる。
 好い日和に亡くなり、数日間好天だった事も、故人の徳として語られる。
 現代風のチャキチャキした文体でなく、渋い文体で淡々と語られ、優れた母への挽歌である。


IMG_20180727_0001
 所属する結社の歌誌、「覇王樹」2018年8月号を、ほぼ読み了える。
 同誌の
到着は、先の7月28日の記事にアップした。
概要
 2018年8月1日付け・刊。46ページ。
 通常の短歌は、巻頭「八首抄」、「10首詠」、「力詠15首」が1段組み、他は2段組みである。
感想
 今号は、通常詠の他に、「覇王樹賞」の発表がある。結社内の20首詠の競詠である。
 受賞したのは、古城いつもさん(このブログへのコメントで、フルネームで挙げて良い事になっている)の「3分セクレタリー」である。「セクレタリー」とは秘書・書記の意だけれども、今回は原義の「秘密を取り扱う人」の意だろう。「郵便局職員3分セクレタリー我の封書を通し微笑む」。」
 次席から以降の作品にも、学ぶ所が大きかった。
 第7回「花薔薇賞」1首の発表があるが、所属歴が短い僕には、趣旨がよく判らない。
 「他誌拝見」「受贈歌集歌書紹介」が丁寧である。
引用
 「東聲集」のN・和子さん「今ゆえ想う」6首より。
今風の着ぐるみ達は芸達者ヒップホップのダンスもこなす
 新しい内容(「ヒップホップ」が僕によく判らないので、電子辞書で引いた)を、なめらかに詠んでいる。
 「覇王樹集」のO・雅子さん「叔母の心」6首より。
淡々とホームに入る準備する叔母の心は測りようなし
 叔母の心を推し測り寄り添おうとしながら、結局測り得ない無念さにいる。


↑このページのトップヘ