新潮社の「川端康成文学賞 全作品 Ⅰ」より、2回め、1975年に受賞の永井龍男「秋」を読み了える。
 1回めの上林曉「ブロンズの首」の感想は、今月9日の記事にアップした。


 「秋」はこの本で14ページである。娘の婚家の花火の宴に、誰も知らない客が2、3組あった事。執していた狂言「月見座頭」を堪能した事。瑞泉寺で一人、十三夜の月見をする話。
 ほぼ脈絡もなく語られるが、賞の審査委員からは、まとまり過ぎず、秋の感覚を表わしていると評価された。
 永井龍男(ながい・たつお、1904年~1990年)は、俳号・東門居として俳句にも活躍したから、季語の季節や、初句・中句・結句のような繋がりに、執したのかも知れない。
 戦前からの作家の、清潔な文体である。
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写真ACより、「ウィンターアイコン」の1枚。