鈴を産むひばり
 光森裕樹・歌集「鈴を産むひばり」kindle unlimited版を読み了える。
 今月4日の記事、
「歌集5冊をダウンロード」で報せた内の、1冊である。
概要
 光森裕樹(みつもり・ゆうき)は、1979年・生。
 京都大学・卒業後は特定の組織に属さず歌作を続ける。
 歌集は、2010年、港の人・刊。2013年、電子書籍化。314首を収める。
 本・歌集にて「現代歌人協会賞」受賞。
引用と感想
 ハイライト、メモの利く本だったので、それに従って6首と感想を述べる。
鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふそれでもいいよねと云ふ
 「鈴を産む」が、雲雀の鳴き声の比喩だったとしても、それが逃げる、それでもいいよね、とは何の暗喩だろうか。

母と呼ぶひとふたりゐてそれぞれが説くやさしさの違ひくるしき
 事実だろうか。バックボーンたる母が、二人、異なる事を説くのは、苦しいだろう。
手を添へてくれるあなたの目の前で世界をぼくは数へまちがふ
 協力者がいながら成し遂げられない、社会不適応、世界への異和感を表わすか。
だとしてもきみが五月と呼ぶものが果たしてぼくにあつたかどうか
 レトリックだけの歌だと思った。しかし言い負かされた時の、負け惜しみかも知れない。
人を待つ吾はめぐりの街灯に暗き展開図を描かれて
 自分の幾つも映る影を、暗喩と句跨りで描く。
陽の色の抜けゆく草はら踏みわけて検索結果になき湖へ
 真実という湖は、検索結果で辿りつけない、の意だろうか。
 総じて、重い内容を、華やかなレトリックで、旧かな遣いの異化を以って、描いている。