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 先の8月17日の記事、川野里子「葛原妙子」を読む、の末尾に書いた通り、砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)に読み入る。
 写真は、全歌集の箱の表である。多機能プリンタでスキャンできないので、久しぶりにデジカメの台形補正機能を使った。2つあるスタンド灯の内、1つが故障してしてしまったので、片側より照明の、拙い写真である。

 第1歌集「橙黄(とうおう)」は、1950年、長谷川書房・刊。495首、著者あとがき「終りに」を収める。
 約1年の疎開生活、戦後5年の東京生活(医師の妻として。家は焼失を免れた)より詠まれる。
 葛原妙子(くずはら・たえこ、1907年~1985年)は、戦前から太田水穂「潮音」に拠りながら、43歳での第1歌集だった。
 まだ難解な詠みぶりではなく、疎開の窮迫生活、敗戦後の急変ぶりを描いている。
 1949年の「女人短歌会」創立に参加するなど、新しい女歌を目指したようだ。


 以下に7首を引く。正字は、新字に直した。
八貫の炭負ひて立つわが足踏(あぶ)みたしかなるとき涙流れたり
わがまぶたうるみてあらめこの男の子十二の食のすでにたくまし
竹煮ぐさしらしら白き日を翻(かへ)す異変といふはかくしづけきか(そのあした)
しばしばも心をよぎる暗愚あり追ひつめゆかむことのおそろし
寡婦たちを支ふるさびしき歌のありつよく脆くきりきりとすさぶときよし
盛夏十五度けざむき朝を飲食(おんじき)のすすむと云はばはばかりあらめ
わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる