谷崎精二・個人全訳「ポオ全集 1」(春秋社・版)より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、今月22日の記事にアップした。



 今回は、「早過ぎた埋葬」「告げ口心臓」「アモンティラアドの樽」、3編を読んだ。
 「早過ぎた埋葬」は、葬られたあとも、、生きていた証拠や、生き返った例まで、延々と述べる。「私」はカタレプシイという病気で、昏睡状態に陥る事があり、生きたまま埋葬される事を恐れていた。1度目覚めに埋葬されたかと苦しむが、帆前船の寝棚で目覚めただけだった。

 「告げ口心臓」は、ある老人の片方の目を恐れる「私」が、老人を殺し、床下に隠す。派遣された警官の前で、「私」は躁状態になり、犯罪を告白してしまう。「黒猫」の成功で、似たパターンの短編を書いたのかも知れない。

 「アモンティラアドの樽」は、酒好きのフォルチュナトに苛められ続けた「私」が、酒を鑑定してほしいと相手を穴倉の奥深くに誘い込み、縛り付けて、壁の漆喰を塗ってしまう。この編では、罪の露見はない。それが「黒猫」や「告げ口心臓」より、進んだ点だろう。
十字架の墓
写真ACより、「十字架の墓」の写真1枚。