風の庫

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現代俳句

 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、11番目の句集、香西照雄「対話」を読み了える。
 今月15日の記事、
稲垣きくの「榧の実」に次ぐ。
概要
 原著は、1964年、星書房・刊。中村草田男の長文の序、646句(1282句より、本書のため自選)、年譜、あとがきを収める。
 1938年~1963年の句を、第1部(1938年~1945年)、第2部(1946年~1955年)、第3部(1956年~1963年)の3部に分ける。
 香西照雄(こうざい・てるお、1917年~1987年)は、東大「成層圏」時代より中村草田男に師事し、1946年の「万緑」創刊に参加。
 中村草田男を補佐し、(没後の選者として)後継した。また「竹下しづの女句文集」の編集・発行等も業績とされる。

感想
 中村草田男の「人間探求派」であり、桑原武夫「第二芸術論」の時代を経て、現代俳句の道を行った。
 ただ二物衝突どころか三物衝突(例えば「祭り笛獅子頭めきバスが来る」)と思われる句がある。1句に多くを詰めこみ過ぎて、難解、字余りの句もある。
 現代の総合的な句風に至る過程だったのか。
引用
 以下に5句を引用する。
あせるまじ冬木を切れば芯の紅
母の咳妻の歯ぎしり寒夜の底
鬼百合や妻が少女となりし家
紫雲英道幾筋断ちて基地始まる(伊丹基地にて)
遠のけば白鳥まぶし稼ぐ妻よ
0-41
写真ACの「童話キャラクター」より、「桃太郎」のイラスト1枚。





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 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、9番目の句集、村越化石「独眼」を読み了える。
 先の9月24日の記事、
小杉余子「余子句抄」に次ぐ。
概要
 原著は、1962年、琅玕洞・刊。大野林火・序、499句、山本よ志郎・跋、著者あとがき、を収める。
 村越化石(むらこし・かせき、1922年~2014年)は、1941年に栗生楽泉園に入園し、癩病の治療を受けた。
 大野林火に師事し、「浜」に参加。1950年より年1度、林火の来園指導を受ける。1958年、角川俳句賞・受賞。
 癩病は、戦後の日本に入った特効薬プロミンによって治る病となり、社会復帰する者があった。村越化石のように、後遺症、事情によって園に残る者もあった。
感想
 癩病者の文学として、戦前の北条民雄「命の初夜」の凄惨さはなく、それは新薬プロミンによって命をまっとうできる時代だからだろう。村越化石は、91歳、老衰により園で亡くなった。
 外の社会の俳人の句と比べると、物足りない句もある。
 彼は長生きして、このあと8句集を刊行し、角川俳句賞・以後も多くの賞を得ている。Amazonで調べると、全句集はなく、各句集も品切れか超プレミアムが付いた句集が多く、まとめて読み得ない。彼の発展を想って、残念である。

引用
 以下に5句を引用する。
顔にまざと柿食ふ癩児負けるなよ
降る雪に白湯すする父の忌も過ぎつ
湯豆腐に命儲けの涙かも(新薬プロミンの恩恵に浴し数年を経たれば)
腰に熱き湯婆あてて無財なり
雉子提げて雨に黒ずみ猟夫来る
0-91
写真ACの「童話キャラクター」より、「浦島太郎」のイラスト1枚。



 
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 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第11巻(1982年・刊)より、11番目の句集、岸田稚魚「負け犬」を読み了える。
 先行する、
富安風生「古稀春風」は、先の3月15日の記事にアップした。
 原著は、1957年、近藤書店・刊。石田波郷・序、568句、著者・後記を収める。
 岸田稚魚(きしだ・ちぎょ、1918年~1988年)は、石田波郷の「鶴」に投句、1968年「塔の会」結成、1977年・俳誌「琅玕」創刊・主宰。
 若くして結核に苦しみ、結婚、子を成した。旅行吟が賞賛されたけれども、僕は賛同しない。
 句境は句集のたびに深化したが、一貫して感覚的な「細み」の作風とされる。
 以下に5句を引く。
かげろふは焦土ばかりや西行忌
雨風や瓦礫に生(あ)るる蝸牛
隙間風驚き合ひて棲みつかな(娶り滝野川に移る)
春愁や身籠りの腹美しき
入学の日の雀らよ妻と謝す
チューリップ4
Pixabayより、チューリップの1枚。



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