風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

現代歌人シリーズ

耳ふたひら 松村由利子
 今月6日の記事でダウンロードを報せた、kindle unlimited本3冊の内、松村由利子・歌集「耳ふたひら」をタブレットで読み了える。
 今月17日の記事で紹介した、
千葉聡「海、悲歌、夏の雫など」に次ぐ。
概要
 松村由利子(まつむら・ゆりこ、1960年・生)の第4歌集。「薄荷色の朝に」(1998年)、「鳥女」(2005年)、「大女伝説」(2011年、葛原妙子賞・受賞)に次ぐ。
 「耳ふたひら」は、書肆侃侃房・刊、現代歌人シリーズ2.
 紙本版:2015年4月14日・刊、2,160円(Amazonのマーケットプレイスの古本で、現在、506円+送料350円より)。kindle版:2016年1月27日・刊、1,000円。kindle unlimited版:追加金無料。
感想
 2010年に沖縄県石垣島に移住。その地になじむまでの過程、女性としての思いを描く。
 社会批判が外れていたようだが、後半で地に足が着くようだ。
 しかし「女 その位置取りの妙愚かでも利口でもなきこと大事なり」と詠み、内心は「沼だ私は密林の奥どこまでも泥を蓄え淀みつづける」と鬱屈している。
 今月21日の記事で紹介した、「第29回歌壇賞」を受賞した、若い川野芽生(かわの・めぐみ)の「Lilith」の戦闘的ジェンダー性に、あるいは今の若い女性の率直さに、勝てないのではないか。

 自然豊かな風土で、性差が消えてゆく心境を詠めるだろうか。
引用
 以下に7首を引く。
島時間甘やかに過ぎマンゴーの熟す速度にわれもたゆたう
南島の陽射し鋭く刺すようにヤマトと呼ばれ頬が強張る
住まうとはその地を汚すことなればわれ慎みて花植えるべし
片付けは葬りに似て若き日の手紙と写真少しずつ減る
言えぬこと呑み込む夜に育ちゆくわが洞窟の石筍いくつ
年々歳々世界は縮みゆくばかり私の足を踏む足がある
知らぬ間に桜は咲いて武器輸出三原則もあっさり消える




 
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海、悲歌、夏の雫など 千葉聡
 今月6日の記事「3冊をダウンロード」で報せた内、千葉聡・歌集「海、悲歌、夏の雫など」を、タブレットで読み了える。
概要
 紙本版は、2015年4月14日、書肆侃侃房・刊(現代歌人シリーズ1)。Kindle版は、2016年1月27日・刊。
 価格は、紙本版が2,052円(Amazonのマーケットプレイスの中古本で、10円+送料350円より)、Kindle版が1,000円、Kindle Unlimited版が追加金無料。
 千葉聡の第5歌集である。208首、「桜丘高校の小さな黒板―あとがきにかえて」を収める。
感想
 ネット上に「千葉の短歌は未熟だが熱い」と書かれ、たしかに現代の大人(たいじん)の成熟には遠い。
 しかし彼は、成熟を目指していないと僕は思える。成熟が後退成長か、世間との馴れ合いを意味する時節、彼は成熟を拒否し、いつまでも若くあろうとする。1歩ずつの前進、成長は必要だけれども、と僕も思う。
引用

 以下に7首を引く。
「千葉Qへ」手紙の最後に書いてある T田が俺につけたあだ名が
悩みごと二つかかえてナイトラン大桟橋に着き伸びをする
Tの字は震えに震え「真剣に歌を詠めよ」と説教ばかり
母さんがくれた茶色い文庫カバー 太宰(だざい)専用カバーと決める
君に会って別にどうすることもない ただ会うということ 会うことだ
「始めまーす」マイに続いて全員が「はい」と叫んでアップ始まる
県大会出場を決めたわがチーム 明日も練習 その次の日も



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光のひび2
 Amazonのkindle本より、駒田晶子・歌集「光のひび」を読み了える。
 ダウンロード購入については、今月21日の記事、
同・歌集ダウンロードに書いた。
概要
 購入は、メモに拠ると、10月15日。
 その他の概要は、上記記事の「概要」に述べたので、そちらを参照してください。
感想
 宮城県仙台市に在住の彼女は、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)の時、産科病室で臥せていたという。
 その時の歌が、数は少ないが、声高でなく詠われている。先行する歌集「銀河の水」は2008年・刊なので、それには載っていない。
 「あとがき」で、「<ひび>は、<日々>でも<罅>でも。」と述べているが、僕は<罅>と取りたい。
 3人の子の母として、たゆみなく歩みながら、日々の心の違和感、短歌への小さな違和感が、題材や句割れ・句跨りの多用に、表れているようだ。

 短歌を支えに、寛やかに歩んでもらいたい。
引用
 以下に7首を引用する。
画面には聞きなれぬ声のわれがいる小さな子どもと歌など歌い
六歳はテレビ寄席が好き一歳にちょいとおまいさんなどと呼びかけ
病院のベッドの寒さ 院内の医師召集のアナウンスつづく
雪の舞うほの暗き朝ふりかえり手を振る人にわれの手を振る
薬缶みがきみがき上げたる曲線に夜の疲れた君は浮かびぬ
廊下暗し結局だれが悪かった?呟く声ばかり立っている
子は三人います留守番していますコンソメスープの熱々を飲む






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光のひび2
 Amazonのkindle本より、駒田晶子・歌集「光のひび」をダンロード購入し、タブレットに収めた。
 同じ「現代歌人シリーズ」の、
佐藤弓生「モーヴ色のあめふる」の読後感は、今月17日の記事にアップした。
 価格は1,000円。kindle unlimitedより、追加金無料で買える。
概要
 駒田晶子(こまだ・あきこ、1974年~)は、結社「心の花」所属。
 第49回・角川短歌賞・受賞。先行する歌集「銀河の水」により、現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞、宮城県芸術選奨新人賞、各受賞。
 歌集「光のひび」紙本版は、2015年11月、書肆侃侃房・刊。kindle版は、2016年1月・刊。
感想
 子育ての歌があるので、家庭を持って、時には違和感を滲ませて詠っているようだ。
 なお紙本版の古本が廉価で出ているので、紙本の古本で良い人は、それを購入するのも1手だろう。


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モーヴ色のあめふる
 Amazonよりのダウンロード購入を、今月13日の記事で報せた、佐藤弓生・歌集「モーヴ色のあめふる」kindle版を、タブレットで読み了える。
概要
 佐藤弓生(さとう・ゆみお、女性、1964年~)は、同人歌誌「かばん」会員。2001年・角川短歌賞・受賞。
 この歌集の他に、「世界が海でおおわれるまで」、「眼鏡屋は夕ぐれのため」、「薄い街」がある。また詩集、掌編集も刊行している。
 kindle版「モーヴ色のあめふる」は、2016年1月・刊。
感想
 この1歌集では正確な事は書けない。「あとがき」で、「心の真実にそむかず、ある境地に至ってしまったりせず、…ただよってゆきたいと思います」と述べている。
 現実の欠落、否定的部分を、嘆き悲しんだりせず、非日常的(幻想的とも評される)な歌に昇華しているようだ。達観したような所がある。
 月に関わる歌が多く、大きな連作もある。
 短歌に昇華しきれない部分が、詩集、掌編集となるのだろう。

引用
 以下に7首を引く。
恨みたい人などなくて雲の縁ほつるるままにわが淡き生
新聞受けに新聞なくて惑星の昼ひそやかに藍色のドア
ふるさとの蠅の多さを語りつつ青年が割る<かもめの玉子>
あなたの耳は入り江のかたちあかつきの星を波打ちぎわにとどめて
蛾となりて帰りくるひとあるような 月のつむじをみつめていたら
詩を思うときのなずきはいいにおい くちなしいろの月が上がった
月は死の栓だったのか抜かれたらもういくらでも歌がうまれる




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モーヴ色のあめふる
 Amazonのkindle本より、佐藤弓生・歌集「モーヴ色のあめふる」を購入し、タブレットへダウンロードした。メモに拠ると、今月7日。
 価格は1,000円。kindle unlimitedで追加金無料で買える。
概要
 紙本版は、2015年11月、書肆侃侃房・刊。kindle版は、2016年1月・販売。(Amazonサイトより)。
 佐藤弓生(さとう・ゆみお、女性、1964年~)は、「かばん」所属。
 2001年、「眼鏡屋は夕ぐれのため」50首で、第47回・角川短歌賞・受賞。(Wikipedeiaより)。
動機等
 同じ書肆侃侃房からの「新鋭短歌シリーズ」に、少し物足りなくなっていた。同シリーズには、優れた歌集があるのだろうけれど、サンプル・ダウンロードを繰り返してもいられない。
 それで、その少し年上の「現代歌人シリーズ」より、読んでみようと思った。
 ハイライト機能(蛍光ペンで線を引くようなもの)が無いらしいので、気に入りの歌をノートに書き出しながら読んでいる。
 モーヴ(モーブ)とは、最初の合成染料で、薄紫色(電子辞書版・広辞苑・第6版より)。


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