風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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痛ましい

 筑摩書房の「増補決定版 現代日本文学全集 補巻8 上林曉集」(1975年2刷)より、2作品めの「きやうだい夫婦」を読み了える。
 1作品めの「風致区」は、先の2月24日の記事にアップした。


 「きやうだい夫婦」(きょうだい夫婦、この本で6ページの短編小説。時制が行き来しているので、この感想を書きながら、ページを捲り返さなければならない)は、「私」の妻が数年来、サナトリウムに入ったきりなので、「私」と娘・和子の世話を、妹の仙子に任せきりの様を描く。
 しかし1944年の暮れ、空襲が激化した頃、仙子が怯えて疎開したがるのを、「私」は東京で文筆生活を続けると言い張る。娘の和子も残ると言うので、仙子は苦しんだあげく残る事にする。1945年3月下旬、とうとう仙子は和子を連れて疎開する。
 戦後の1945年末近く、「私」は危急状態で、仙子だけを(娘は郷里に置いて)呼び寄せる。手紙を何度も書いたが、仙子がしばらく上京できなかったのは、汽車の切符を入手できないからと、手紙が来る。
 仙子は20歳から26歳まで、婚期をよそに兄とその子3人に犠牲的献身を続けた。小説に取り上げても、代償にならない苦難だろう。作家のエゴ(わがままなエゴ)の凄まじさに心震える思いをする。上林曉(かんばやし・あかつき、1902年~1980年)は、作家を続けられ、没後の2000年~2001年に、筑摩書房より増補版の19巻全集が出版されたから良いけれども、然程でもなく終わる生涯の作家だったら、献身も痛ましい事だったろう。
クリスマスローズ
写真ACより、「クリスマスローズ」のイラスト1枚。クリスマスに遅れて咲くグループもある。



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 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2020年12月号を、ほぼ読み了える。
 到着は、先の11月20日の記事、届いた2冊を紹介する(18)にアップした。



 同・11月号の感想は、10月21日の記事にアップした。


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 12月号は、2020年12月1日・刊、169ページ。 特集の二〇二〇年のベスト百首―十人十首選は、10人が10首ずつ挙げている。初めての歌人のたった1首では、歌の良さがわからない。短歌は歌人の歩みを読むものだから、せめて一人数首を読まなければ。投稿歌以外では、1首のみを読んだ事はない。岡井隆の歌は、思潮社の全歌集4巻を読んだせいか、良さがわかる気がする。

 特別企画の、短歌のなかの一字の重み、効果は、そうでもあろうけれど、歌壇の地方ボスが振りかざして、威張り返っていた害を思うと、おのずから習得する事だろう。あるいは仲間内で、そっと示し合う事だろう。

 追悼・石川不二子では、彼女が農学生から開拓村を興そうとして苦労した事を痛ましく思っていたが、晩年に余裕があったのなら喜ばしい。








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