風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

短編小説集

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 今村夏子の短編小説集「あひる」を読み了える。
 6月10日の記事、同「こちらあみ子」に次ぐ。

 角川文庫、2019年1月25日・刊。
 短編小説「あひる」、「おばあちゃんの家」、「森の兄妹」、3編を収める。
 「こちらあみ子」(旧題「あたらしい娘」)に次いで、「あひる」は芥川賞候補となり、河合隼雄物語賞を受賞した。

「あひる」

 両親と住む「わたし」の家の鶏小屋で、あひるを飼う事になる。「わたし」は医療系資格の勉強中で、まだ仕事をした事がない。あひるに惹かれて、子供たちが集まるようになり、両親も歓迎する。あひるが1ヶ月程で病気になり、病院に父が連れて行き、帰って来るが、わずかに違うように「わたし」には思われる。3回めが死に、庭に墓を立て、3羽が違う鳥であったと両親の偽計がバレる。
 10年前に家を出た弟が、結婚8年めで子を儲けて帰宅する事になり、家の増築工事の場でおわる。
「おばあちゃんの家」
 主人公「みのり」の家族とは血のつながらない、おばあちゃんが敷地内の建物・インキョに住んでいる。親切なおばあちゃんだが、痴呆(?)が始まり、逆に知的・体力的に元気になる様を描く。
「森の兄妹」
 母子家庭の兄妹、モリオとモリコが、小屋に住むおばあさんから、窓を通して飴を貰ったり、実る枇杷の実を全部持って行って良いと言われる。おばあさんの家で、その家族より誕生日祝いされるのをモリオが目撃して、兄妹は小屋に行かなくなる。

 子供たち、非就業者、おばあさん(高齢者)、それぞれ1人前に見做されない者たちと、その周囲を描いて、現代の1面を切り取っている。





 最近に入手した、同人詩誌と短編小説集を紹介する。
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 まず僕が属する同人誌誌、「青魚」No.90である。
 同・No.89の感想は、昨年11月21日の記事にアップした。リンクより、過去号へ遡れる。

 同・No.90は、6月8日の文学講座のおり、千葉(兄)さんより、僕が発送の分を含めて、10冊を受け取った。
 B5判、1ページ2段組み、42ページ。
 2019年6月5日、鯖江詩の会・刊。
 僕は6編のソネットを寄せた。内容は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の6月11日の記事、変換(2)より、毎日1編ずつ順次アップしてゆくので、横書きながら是非ご覧ください。

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 次に川上未映子の短編小説集「愛の夢とか」を、メルカリで買った。
 エッセイ本「きみは赤ちゃん」を除いて、彼女の小説は、昨年10月31日の記事、すべて真夜中の恋人たち以来である。リンクより、彼女の過去記事へ遡れる。
 彼女の小説にあまり期待していないのだが、メルカリで見つけると引きずられるように買ってしまう。進展があるかと、期待を持っているのだろうか。


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 加藤元の短編小説集「四百三十円の神様」を読み了える。
 到着は4月17日の記事、届いた2冊(6)で報せた。
 集英社文庫、2019年2月25日・刊。定価:640円+税。
 僕はメルカリの400ポイントで購入した。
概要
 加藤元(かとう・げん)は、1973年生まれの女性作家。
 「四百三十円の神様」には、「四百三十円の神様」、「あの川のほとりで」、「いれずみお断り」、「ヒロイン」、「九月一日」、「鍵は開いた」の、6編を収める。
感想

 「四百三十円の神様」。元・プロ野球の名ショートだったが落ちぶれた男。同棲する女の財布を攫った男。働かずにいて離婚した父親。故障があり見込みがあまりないが学生野球に戻ろうとする話者・岩田。
 「いれずみお断り」。元・テキヤだが、妻子には逃げられていて、侘しい老人の死。
 「ヒロイン」。映画のスターだった女優の裏表。憧れる女性の、同棲相手は、2年前から働いていない。母親はだらしない。
 「鍵は開いた」。掌編連作。妻子ある男との不倫を解消する娘。合鍵を妻に捨てさせられる男。母は怒り父親から「失敗作だ」と言われる少年。泥棒の前科3犯だったが更生した中年女性。

 ダメな男女を描いてばかりだ。読んでいると、読者のダメぶりを炙り出すようで、自分も忸怩たる思いをする。
 しかし人のダメぶりは、人に誰にでも、部分的に、時期的にあるもので、特殊な場合ではないように思える。羽目を外さないよう、時に良い事もして、生活して行こうと思う。



 最近に手許に届いた2冊を紹介する。
 届いた本では、今月12日の記事、児童文学誌「ぱらぽっぽ」38号(受贈本)に次ぐ。

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 まず加藤元(かとう・げん、女性作家)の短編小説集「四百三十円の神様」である。
 集英社文庫、2019年2月25日・刊。価格:640円+税。未知の作家さん。
 メルカリで、400ポイントで購入した。あるブログで、この作家だったか、この本だったか、とても褒めていたからである。

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 本阿弥書店より、綜合歌誌「歌壇」2019年5月号が届いた。
 短歌作品の他、特集、特別企画、作品競詠、集中連載、往復書簡、連載評論等、4月号に予告の通りである。
 同・4月号の感想は、先の3月26日の記事にアップした。
 僕は綜合歌誌で、この1種のみを取っている。
 本阿弥書店への6ヶ月分の予約が切れたので、また6ヶ月分の送金をしなければならない。


 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」(7編)より、5番目の「居酒屋にて」を読み了える。
 今月8日の記事、同「夜話」に次ぐ。
概要
 この短編に至って、僕はこの本を以前に読んだ事があると気づいた。前ブログ「サスケの本棚」にも記録がないから、2007年4月以前に読んだのだろう。
 この作品は、ショッキングだったようだ。また再読を、後悔しない。短編集ながら、構成は複雑で、込められた思いを充分には感じ取れていなかったのだろうから。
感想
 若い看護婦(現在は看護士)が夜更けの居酒屋で深酔いしている。おかみとの遣り取りを、作家が耳に入れる設定である。死に際の老男性が乳房に触れようとする事について、「…たったいちどだけって、涙を浮かべて拝んでは手を伸ばしてくるんだから。やりきれないわ」。「拝むと間もなく亡くなるから」。「どうしても厭だとはいえないの、あたし」。
 「わかった。今夜もまた、拝まれてきたんだ」(おかみ)。「そうなの。だんだん手垢にまみれてくるわ」。
 躰が汚れた、結婚を諦めたと、豊満な娘さんがストイックに嘆く。
 老男性の死に際の無念を救ってくれるなら、神仏よりも尊いと、感銘を受ける。
 「夜話」でも挙げた、「神なき信仰」に関わるだろうか。僕は信仰を持たない。信仰なき祈り、はある。
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写真ACより、「キッチングッズ」のイラスト1枚。



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 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」より、冒頭の表題作「愁月記」を読み了える。
 新潮文庫、1993年・刊。7編の短編小説を収める。帯が破れかけているが、残している。
 故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
 目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
 作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主としてあれこれ手配し、斎場から骨壺を抱いて車で戻る所で終わる。
 好い日和に亡くなり、数日間好天だった事も、故人の徳として語られる。
 現代風のチャキチャキした文体でなく、渋い文体で淡々と語られ、優れた母への挽歌である。


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 江國香織の短編小説集、「号泣する準備はできていた」を読み了える。
 長く文庫本棚にあったのだが、題名に少し引いていた。
 彼女の小説は、先の9月8日の記事、
同「きらきらひかる」を読む、に次ぐ。
概要
 新潮文庫。2007年、10刷。233ページ。12編の短編小説を収める。
 この短編集に由り、2004年、直木賞を受賞した。
感想
 初めの2編、「前進、もしくは前進のように思われるもの」、「じゃこじゃこのビスケット」は、男女の心の擦れ違いから生まれる、カップルの違和感を描く。
 この短編集に登場する男女は、どうしてこう不倫をするのだろう。夫が、妻が、あるいは双方が不倫をしている。標題作「号泣する準備はできていた」では、別れて出て行った男が、「ときどきやってきて、またでていく」という状態だ。
 だから最後の「そこなう」で、不倫相手の男が離婚して、「これからはずっと一緒だから」と言っても、満足感を持てない。
 一夫一婦制に無理があるとか、性の解放だとか言っても、今の社会では無理だろう。登場人物は、フリーランスか中産階級で、そのような放恣があり得るのだろう。
 「きらきらひかる」でも、ホモの夫の睦月は医師、妻の笑子は翻訳家、の設定だった。




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