風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。Kindle版の無料キャンペーンも随時行ないます。多くの方のご購読を願っております。

素直

 東京外国語大学短歌会の歌誌「外大短歌」10号を読み了える。
 到着は、今月19日の記事、入手した3冊を紹介する(6)にアップした。リンクより、過去記事へ遡り得る。



外大短歌10号
 第10号は、2019年11月24日・刊。B6判、66ページ。同・9号のA5判より小さい。短歌の形式には合うが、散文にはきついようで、K・いづみさん、I・美南さんへのインタビュー2つは、別刷りA4判両面4枚となっている。

 現代風な歌も古風な歌もこなす会員、文学好きの独特な感慨、自己愛が素直に出た歌、忙しい女性としてのOGの連作、変革を待つOBの歌、など興味深い。
 OB・OGへのインタビューも、社会人歌人への関心を読める。
 OB、OGへの招待、ゲストへの招待が多いことは、歌誌発行を文学運動の1つと読むとき、納得できる。
 大学短歌会は最近盛んであり、ツイッターで発信している会もある。また角川文化振興財団が毎年、大学短歌会バトルを開き、競わせていることも、原動力の1つだろう。内容は角川「短歌」に載る。


 以下に7首を引く。
コンソメスープに胡椒かけるの忘れたけれど君もきにしていないしいいや(K・やかん「器も白」)
終電に乗って帰ってお吸い物三つ葉の色が変わらぬ内に(同・上)
啄木を蟹・砂・死ねしか分からない程度のやつらで海に行くのだ(S・龍「連中と我々」)
赦されることなきものを罪と呼ぶあなたは好きなだけ悔いなさい(Y・周「犬を落とす」)
アーモンドオイルを脚に塗りたくる大事なものには油を塗るの(N・かれん「海は苦手だけどやって来た」)
髪型といふべき型の既になく牛蒡の束のやうなるを曳く(I・美南「深夜に怒る」)
腕捲りをして待っているこの秋がやがて真秋に倒るるその日
(K・隆希「真秋」)





小野田光 蝶は地下鉄を抜けて
 小野田光・歌集「蝶は地下鉄をぬけて」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ(kindle unlimited版)の読書として、先の4月15日の記事にアップした、九螺ささら「ゆめのほとり鳥」以来である。
 この歌集を含む、4冊のダウンロードは、先の3月15日の記事で報せた。
概要
 紙本版:2018年12月10日・刊。1,836円。
 kindle版:2018年12月27日・刊。800円。
 小野田光(おのだ・ひかる)は、1974年・生まれ、「かばん」会員。
 この歌集には、325首、東直子・解説「誰のものでもない、わくわく感」、著者・あとがきを収める。
感想

 若い人の短歌に慣れているつもりだが、前衛的過ぎる作品はわかりにくい。例えば「繁栄の淵の旋律くずれてもオーケストラをひやす月光」など。
 恋の歌に素直で優れた作品がある。
 野球好き、アイス・ホッケー好きで、選手に成り代わって詠んだ歌がある。
 激務の果て、精神科に通い、休職してしまう。素直な短歌を詠んでいたなら、そこまで進まずに救われていただろうか。
引用
 以下に7首を引く。
あけがたの君のかすかな寝息うけ虹の萌芽に疼くてのひら
ひき際が綺麗でしたね花束はどこかで燃えて香りを放つ
彼は背が高くて眼鏡をかけていてイルカの置き物ばかり集めた
なかなかにたのしい記憶でしたのでふともも裏に貼っておきます
感情の作り置きってできないと言いあいながら持つレジ袋
将来を話しあわずに配球を読みあいながら野球観戦
喉奥は生ぬるい沼 この夏の解をもたない人と歩めば




つむじ風
 木下龍也・歌集「つむじ風、ここにあります」kindle unlimited版を読み了える。
 昨年12月9日の記事、
入手した4冊(3)の内の1冊である。
 その4冊の内、3冊を読み了え、三浦哲郎「愛しい女」は長編小説なのでいったんお蔵入りし、この4冊の話題は仕舞いとしたい。
概要
 各版の発行日、価格などはリンクに書いたので、ご参照ください。
 木下龍也(きのした・たつや)は、1988年、山口県生まれ、山口県在住。
 結社に属していない。
 この歌集では、短歌のあと、東直子・跋「辺境からの変化球」、詩に似た「あとがき」を収める。
感想
 静謐な文体である。草食系青年が、心で静かに耐えているようだ。
 ナンセンスな歌が混じるが、痛くてユーモアにならない。
 家族には素直である。
 女性にはウブで、純粋である。あるいは恋人を病気で失った風の、歌がある。
引用

 以下に7首を引用する。
じっとしているのではない全方位から押されてて動けないのだ
触れなくていいものに触れ火傷する癖があります遺伝でしょうね
そういえばいろいろ捨ててあきらめて私を生んでくれてありがとう
疑問符のような形をした祖母がバックミラーで手を振っている
コンビニのバックヤードでミサイルを補充しているような感覚
アイロンの形に焦げたシャツを見て笑ってくれるあなたがいない
からっぽの病室 君はここにいた まぶしいくらいここにいたのだ








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