風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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自信

 萩原慎一郎・歌集「滑走路」を読み了える。
 購入は、今月2日の記事、dポイントで2冊を買う、にアップした。



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 角川文化振興財団・刊、2017年・初版、2019年・8版。
 歌集は、歌人が非正規労働者の苦しみを詠む若者だったこと、歌集の発行直前に自死したこと等に因り、評判を集めた。
 りとむ短歌会所属。三枝昻之・解説、著者・あとがき、両親挨拶・きっとどこかで、を付す。
 幼い部分もあるが、短歌による救済を信じ、つらい労働に耐え、淡い恋もして、生き抜いたが、成功を目前にして亡くなった。
 僕は彼が、幸せな心で亡くなったと信じたい。幸せな時には、「このまま逝けたなら」と思うこともある。また神経症では恢復期が最も危ういとも聞く。
 正規職員に成れたようで、歌集の評価にも自信があっただろう。
 僕は職を転々としたあと、正規職員に成れたが、中途採用の現場作業員で、規定により幾ら頑張っても課長にはなれない立場で、定年までヒラ労働者だった。彼の仕事の歌など、共感を持つ所以である。


 以下に7首を引く。
抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ
更新を続けろ、更新を ぼくはまだあきらめきれぬ夢があるのだ
街風に吹かれて「僕の居場所などあるのかい?」って疑いたくなる
きみからのメールを待っているあいだ送信メール読み返したり
非正規という受け入れがたき現状を受け入れながら生きているのだ
箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる
電車にて傷心旅行 こんなはずではなかったと呟きながら


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 今月6日の記事、入手した5冊(2)で紹介した内、4冊めの記事アップである。
 季刊誌「考える人」(新潮社)2010年夏号より、「特集 村上春樹 ロング インタビュー」のみを読み了える。
 「考える人」は、2002年7月・創刊、2017年春号(第60号)で休刊した、ハイセンスな雑誌である。雑誌として大判で、ほぼB5判である。この号には、養老孟司の対談、内田樹の対談、花森安治伝なども載っていて、関心を寄せる人もいたが、僕はCPを考えると読めない。

 インタビューは、聞き手・松家仁克で、2夜を挟んで3日間に亘っておこなわれた。インタビュー集「夢を見るため毎朝僕は目覚めるのです」に収められていない。時期的に遅れたか、内容の重複に由るのだろう。
 あいかわらずの村上春樹・節である。社長の成功談にも聞こえる。当時は(今は知らない)絶大な読者数、特に海外ファンを誇っていたから、自信も肯える。
 これまでと繰り返しの話も多いのだが、アメリカの翻訳者や編集者と親しくなった件りに、心惹かれた。
 長編小説の最新作、「騎士団長殺し」には感心しなかった僕だが、次の小説の刊行を待っている。



 
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 昨日の記事で到着を報せた2冊の内、村上春樹のエッセイ集「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」を読み了える。
 2011年7月7日、マガジンハウス・刊。
 女性週刊誌「あんあん」に連載されたエッセイとイラスト(大橋歩・筆)、「村上ラヂオ 2」に加筆修正した本である。
 村上春樹の本の記事は、昨年4月15日の
「パン屋襲撃」以来である(その記事から、長編小説「騎士団長殺し」の感想へ移れる)。
 連載誌のせいか、読者に話しかける文体で書かれている。「あざらしのくちづけ」の末尾、「でも臭いですよ、ほんとに、冗談抜きで。」のように。
 1つには自信があるのだろう。自分の書く文章は、多くの読者に歓迎されるという。それは彼の本の発行部数で知れる。
 彼にはユニークな所がある。生活でも、結婚→開業→大学卒業という、普通の逆のコースを進んだ。演劇科・卒である事が、文章を劇化しているのだろう。
 彼が何度も書いているエピソードだが、野球場スタンドで「僕にも小説が書けるだろう」という、インスピレーションが降って来なかったらば、世界は「クレオパトラの鼻」ではないが、かなり違っていただろう。


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