風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

苦労

 山田詠美の小編小説集「タイニー ストーリーズ」より、3回めの紹介をする。
 同・(2)は、先の1月27日の記事にアップした。


 文春文庫、2013年・刊。21編のタイニー ストーリー(小編小説)を収める。

 今回に僕が読んだのは、「LOVE 4 SALE」、「紙魚的一生」、「GIと遊んだ話(三)」、「ブーランジェリー」、「にゃんにゃじじい」の、5編である。
 苦労して貯めたお金を、自殺未遂詐欺の常習者に貢いでしまう話「LOVE 4 SALE」、知性に憧れて一緒になった男性に、読書ばかりで構われない話「紙魚的一生」、友人と一緒にGIと遊ぶ、僕には趣のよくわからない話「GIと遊んだ話(三)」、パン屋兄弟の兄と交際して「体の相性が良い」けれども、弟に譲られてしまう女性「ブーランジェリー」(フランス語でパン屋の意味)、いわくありげなお爺さんが、「猫みたいな女はいない、そう振舞おうとする女は多々いたけれども」と親しくなった少女に教える「にゃんにゃじじい」、の5編である。
 いずれも、山田詠美の経歴を含めて、ハッピーエンドではない事が気になる。ハッピーな作家という人物も、相応しくない気がするけれども。作家は精神労働者なので、苦労する者だろう。
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。



 県内にお住いの詩人、こじま ひろさんが贈って下さった詩集、「逝き咲き」を読み了える。
 受贈は、今月7日の記事、「届いた4冊(3)」にアップした。

 

詩集 1 
 上の写真は、表紙と帯(県ふるさと詩人クラブ・代表、川上明日夫さんの帯文)である。同じく川上明日夫さんの4ページに渉る栞を付す。
 2019年9月、山吹文庫・刊。3章22編の詩、あとがき、略歴を収める。84ページ。


 彼は1936年・生まれの一人子だったが、1944年に父が戦死した。中学校卒業後、農業で生計を立てたようだが、後に建築大工ともなった。
 還暦を過ぎた1998年に句会に参加、2001年に歌会に参加、2003年に詩の会に参加、と多彩で旺盛な活動を始め、今も活躍している。

 「行き咲き」では、「爺の体の古釘は/バールではぬけない」と、身に沁み込んだ苦労を窺わせる。文学に出会って、「一編の詩とのせめぎあい」が「渇いた心をいやすよう」と述べる。
 お孫さんにも恵まれるが、「節分」の豆撒きの終連は「老いは外と聞こえてくる/何処へもいけない」と、家庭で孤独であろうか。
 終章の「戦争があった風景」は圧巻である。掉尾の「無花果」では、父が戦死後の母子の苦しい生活を述べ、終連では「爺は/そっとよく熟れた無花果の/ひとつを かみしめた」と老後の楽しみを味わう。

 レトリックとは情意をよく伝える方便だが、「そそっかしい春が引っ越して来た」、「宵がこぼれないように」などの上滑りな比喩がある。
 リアリズムで表すには、深刻な人生だったのかもしれない。


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