風の庫

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荒廃

 結社歌誌「百日紅」2020年9月号を、作品中心に読み了える。
 入手は、今月2日の記事にアップした。



 また2年前の同誌・10月号を、2018年11月27日の記事にアップした。



「百日紅」9月号
 2020年9月1日、百日紅社・刊、26ページ。

 福井県中心の地方誌で、全員5首掲載。特選はない。1首の長さ(行末)を揃えていて、俳句では多いが、短歌では初めて気づいた。
 やや類型句が多いようである。例えば「去年逝きし人の面影顕たしめてもらひし紫陽花裏庭に咲く」など。

 以下に3首を引き、寸感を付す。
 H・フミエさんの「越前海岸」5首より。
納屋内をぐるぐる廻り助走せしつばめの親子ついに飛び立つ
 優しくしっかりと見つめ、新しい表現である。
 O・征雄さんの「オンライン帰省」5首より。
蛙らは何処に居たのか水張田になるその夜から合唱始まる
 新かな、口語体にて、同誌では新しい。気づきの歌である。
 T・宏美さんの「特別定額給付金」5首より。
スキー場があった筈と川渡る建物は廃墟ゲレンデは森
 字足らず、字余り、助詞の省略と、やや苦しいが、現代の山の荒廃を描き出した。


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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第4句集「今日」を読み了える。
 第3句集「夜の桃」は、今月20日の記事にアップした。



 「今日」は、1952年、天狼俳句会・刊。平畑静塔・序(文庫には不掲載)、著者・後記と共に収める。
 当時、関西に居を転々とした。「天狼」同人の平畑静塔、秋元不死男、橋本多佳子、高屋窓秋、他に沢木欣一、角川源義ら、俳人との交流は広く深かったようである。
 1948年以降、戦後の荒廃を残しつつ、1951年まで復興に向かう日本の景と情が吟じられる。家庭では、妻と別居、後の妻、愛人と、家庭的ではなかったようである(小林恭二・解説より)。芸術的前衛かつ政治的前衛たらんとすると、家庭が壊れるというのは、歌人の岡井隆と同じであると思う。

 以下に5句を引く。
春山を削りトロッコもて搬ぶ
麦熟れてあたたかき闇充満す
孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種
冬雲と電柱の他なきも罰
歩く蟻飛ぶ蟻われは食事待つ
0-19
写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


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 かつて「吉本隆明全詩集」(思潮社)を読み通そうとしたが、今年6月13日の記事以来、読んでいない。
 それで本棚より、「関根弘詩集」(思潮社、1968年・刊)を取り出して来た。後期の作品をちら読みすると、読み通す自信はない。
 なお表紙写真は、トリミングの合うサイズがなかったので(有料ソフトを使っていない)、トリミングしていない。
概要
 詩集「絵の宿題」は1953年、建民社・刊。
 関根弘(せきね・ひろし、1920年~1994年)は、戦後、詩誌「列島」の中心となり、リアリズムとアヴァンギャルドの統一を目指した、とされる。13歳より働き続け、左傾(1時、日本共産党に入党)した。
感想
 詩集「絵の宿題」は大部に見えるので、4章より初めの「沙漠の木」14編のみを読み了える。
 「沙漠の木」では、「製鉄所のそこには/いつも僕を抜けでた僕がいる」と、本当の自分を偽って働く苦しみをうたう。
 「樹」では空襲を受ける樹や人や自分を印象的に描き、今でも「突然樹が叫びだすように思えてならない」と記憶の傷を定着する。
 戦後の荒野的風景を多く描いて、戦後を書き留めると共に、人心の荒廃をも書き留めている。



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