風の庫

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落魄

 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社・版)第1巻より、5回め、了いの紹介をする。
 同(4)は、今月7日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡れる。



 今回は、「純正科学の一として考察したる詐欺」、「実業家」、2編を読んだ。
 「純正科学の~」は、「詐欺することが人の運命なのだ。」としている。詐欺を綿密、工夫、忍耐、独創など9つの要素で考察した後、9つの詐欺話を挙げている。しまいの話は、保証金を集めてトンズラするストーリーで、現在の日本でも行われている。

 「実業家」は、「私は実業家である。」と称する「私」が、仕立て屋の客引きから始まって、目障りな小屋を建てて、近くの立派な建物の主から立ち退き料をせしめる「目障り業」、当たり屋、偽郵便料をせしめる詐欺、猫取り締まり法令を発布した国に猫の尻尾(再生する事になっている)を売る業まで落ちぶれる。

 訳者のあとがきによると、第1巻は推理小説編であるが、枚数の都合でその他も収めた。末尾の付加された作品は、ポオ自身の落魄を映すかのようである。
社長
写真ACより、「社長」のイラスト1枚。



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、8番めの句集、石川桂郎「四温」を読み了える。
 先の10月17日の記事、永井龍男「永井龍男句集」を読む、に次ぐ。


 
 また2017年2月11日の記事に、同・大系第11巻より、石川桂郎「含羞」がある。


 石川桂郎(いしかわ・けいろう、1909年~1975年)は、家業の理髪店を1941年・廃業、総合俳誌の編集長を経て、食道癌で亡くなった。

 原著は、1976年、角川書店・刊。遺句集。515句(年代順)と長男の「あとがきにかえて」を収める。
 僕は1970年代が、よくわからない。初めは囲碁に没頭し、帰郷して職を転々、1977年についの就職、1978年に結婚、1979年に一人子・誕生と、文学に目を向ける余裕がなかった。

 「含羞」では、貧しい家庭の温かみがある、と書いたけれども、終生を家族に貧しい思いをさせてはいけない。また自分一人は美食家であったという。
 僕は結婚後、現場職で落魄感に耐えながら勤め続け、再任用3年めで退職した。彼は甘かったと、後世の名誉はどうあれ、僕には言える。


 以下に5句を引く。
声寒く無心す家賃四年溜め
植木屋の無口めでたし松落葉
にんにくを薬の食や冬ぬくし
意地汚しと言はるるも鯰煮て
粕汁にあたたまりゆく命あり
0-87
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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