先日、Kindleストアの無料詩歌欄を見ていると、蔵原伸二郎「岩魚」があったので、タブレットにダウンロードした。きれいな表紙はない。
 タブレットで開いてみると、「岩魚」、「鮭」、「すずめ」、「落日」、「西瓜畑」、「遠い友よ」、「石の思想」、7編の詩を収めるのみである。蔵原伸二郎に「岩魚」という詩集があるが、7編で全部ではないだろう。
 奥付けに拠ると、新学社「近代浪漫派文庫 29」(2005年・刊)を底本とした、青空文庫より作成されている。青空文庫で蔵原伸二郎を調べてみると、7つの章があり、複数の詩編を収める章がある。詩集「岩魚」との関連付けは判らない。
 その中の「岩魚」の章を、そのまま1冊として、Kindleストアで無料販売していた訳である。無料だから、不満を言う筋合いはない。
 蔵原伸二郎(くらはら・しんじろう、1899年~1965年)は、戦時中に国粋的な戦争詩を書き、戦後に指弾されたとされる。1964年、詩集「岩魚」を刊行し、読売文学賞を受賞した。
 メジャーでない詩人の詩集を読むのは、僕が見つけて好むからではない。今から半世紀前、高校文芸部で1年先輩だった荒川洋治さん(今は現代詩作家として令名高い)が、蔵原伸二郎の詩を好み、「蔵原伸二郎研究」という研究誌を出すから、批評を書くように僕が言われた、思い出があるからである。研究誌は結局、資料としての詩抄集(当時だから、彼が原紙を切った、わら半紙へのガリ版刷り)が出たのみだったように記憶する。
 その作品集で、当時の僕は「足跡」という短詩(題名を忘れていたが、詩人名と覚えていた単語でネット検索し、見付けられた)が好きだった。青空文庫の蔵原伸二郎の「足跡」の章(この詩1編のみを収める)で、読み得る。
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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。