今月12日の記事の通り、思潮社「関根弘詩集」(1968年・刊)より詩集「絵の宿題」を読み了えたので、次の詩集「死んだ鼠」に読み入り、全5章の内、第3章までを読み了えた。

概要
 詩集「死んだ鼠」の原著は、1957年、飯塚書店・刊。
 全5章に分かれ、第1章「死んだネズミ」4編、第2章「娘の手紙」8編、第3章「城」5編まで読み進む。
 関根弘(せきね・ひろし、1920年~1994年)は、詩だけでなく、小説、ルポルタージュ、評論などで活躍した。
感想
 第1章「死んだネズミ」より。
 詩集表題作「死んだネズミ」では「死んだネズミは/目をさまさない/それでも/ネズミはネズミ」と書く。この本の「あとがき」で、、わたしの詩は死の感情ばかりをとりあげてきた、と書くから、ネズミは彼自身の比喩か、「一つの社会の死」を指すか。
 第2章「娘の手紙」より。
 「星のテープ」では、「フミコはひとに憎まれず/一人の亭主を憎んでいる。/俺はいろいろな奴を憎み/いろいろな奴から憎まれている。」と、庶民夫婦の愛憎を描く。
 「娘の手紙」では、「恋人は娘に詩を捧げた/しかしそれがなんになろう」と、詩人の無力と、詩人の恋人の不幸を描くようだ。
 「カラスは白い」では、「政府はカラスを黒にもどしたが/いったん白くなったカラスはもとにもどらぬ/白いカラスがとんでいるのを僕は見た」と、戦時中の洗脳の怖さだろうか。
 第3章「城」より。

 5節から成る「城」は、廃墟の鉄屑→屑鉄拾い→製鉄会社、と関心が移ったか、製鉄会社の事務、溶鉱炉の現場などを描く。見物の社長や銀行頭取を取り上げる所が、社会派の彼らしい。
0-26
写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。