風の庫

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西東三鬼

 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、「『変身』以後」を読み了える。
 先行する「変身」(2)は、今月3日の記事にアップした。



 1961年秋より、1962年4月に没するまでの、句である。わずか54句に過ぎない。
 自身が1952年に創刊・主宰した俳誌「断崖」のように、癌による死を見つめる、断崖に至った。
 しかし句境は澄んで、清明である。突っ張って来た、詰屈が失せている。

 今回で、角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」の紹介の、仕舞いとしたい。
 まだ拾遺句集があるが、自身が採らなかった句である。
 また自句自解も2集を収め、興味深いが、屋上屋の感じがするので、紹介しない。

 以下に5句を引く。
父と兄癌もて呼ぶか彼岸花
這い出でて夜露舐めたや魔の病
ばら植えて手の泥まみれ病み上り
ついばむや胃なし男と寒雀
木瓜の朱へ這いつつ寄れば家人泣く
0-24
写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第4句集「今日」を読み了える。
 第3句集「夜の桃」は、今月20日の記事にアップした。



 「今日」は、1952年、天狼俳句会・刊。平畑静塔・序(文庫には不掲載)、著者・後記と共に収める。
 当時、関西に居を転々とした。「天狼」同人の平畑静塔、秋元不死男、橋本多佳子、高屋窓秋、他に沢木欣一、角川源義ら、俳人との交流は広く深かったようである。
 1948年以降、戦後の荒廃を残しつつ、1951年まで復興に向かう日本の景と情が吟じられる。家庭では、妻と別居、後の妻、愛人と、家庭的ではなかったようである(小林恭二・解説より)。芸術的前衛かつ政治的前衛たらんとすると、家庭が壊れるというのは、歌人の岡井隆と同じであると思う。

 以下に5句を引く。
春山を削りトロッコもて搬ぶ
麦熟れてあたたかき闇充満す
孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種
冬雲と電柱の他なきも罰
歩く蟻飛ぶ蟻われは食事待つ
0-19
写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第2句集「空港」を読み了える。
 第1句集「旗」は、今月10日の記事にアップした。



 句集「空港」は、1940年6月、河出書房「現代俳句」第3巻に所収。句集「旗」より抜いた句に、新作を加えてある。なお同年8月、京大俳句弾圧事件で検挙された。

 なお「空港」の内、どの句が「旗」の抜粋であり、新作であるか、腑分けする労を取っていられない。
 「旗」の自序に、「或る人達は「新興俳句」の存在を悦ばないのだが…。私の俳句を憎んだ人々に、愛した人々にこの句集を捧げる。」と、新興俳句の旗手として揚言した。
 「空港」では、内を「空港」と「戦争」の2章に分けた。生活吟では負のイメージの句が多い。
 戦争吟では、かなをカタカナとし緊迫感を出すとともに、新感覚派的スタイリッシュ性がある。

 以下に5句を引く。
海鳴りの晦きにおびえ氷下魚釣る

 (筆者注・氷下魚は、コマイと訓み、タラ目の魚)
主よ人等ゆふべ互みにのゝしれり
緑蔭に三人の老婆わらへりき
湖を去る家鴨の卵手に嘆き
戦友ヲ葬リピストルヲ天に撃ツ
0-16
写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第1句集「旗」を読み了える。
西東三鬼全句集 (2)
 全句集は、2018年・3刷。入手のいきさつは、2018年5月25日の記事、2冊を入手、で述べたのでご覧ください。


 原著は、1940年、三省堂・刊。自序、209句を収める。
 西東三鬼(さいとう・さんき、1900年~1962年)は、33歳で晩く俳句を始め、「京大俳句」に加入。「天香」創刊。
 1940年、京大俳句弾圧事件で検挙され、執筆停止となる。戦後は俳句を復活させる。

 「旗」では、キリスト教への関心、戦火想望俳句→厭戦的俳句、が混じる。既に口語調なのも新しい。
 芸術的前衛が、政治的前衛に向かう、時代的切迫があったのだろう。

 以下に5句を引く。
不眠症魚は遠い海にゐる
僧を乗せしづかに黒い艦が出る
空港に憲兵あゆむ寒き別離
機関銃熱キ蛇腹ヲ震ハスル
青き湖畔捕虜凸凹と地に眠る



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、18番め、最後の句集、斎藤玄「雁道」を読み了える。
 先行する北野民雄・句集「私歴」は、今月16日の記事にアップした。




 原著「雁道(かりみち)」は、1979年、永田書房・刊。1975年~1978年の4年の382句を、年毎に4章にまとめて収め、著者・後書を付す。
 1980年4月8日、蛇笏賞に決まり、1か月後の5月8日に癌で逝いた。

 斎藤玄(さいとう・げん、1918年~1980年)は、戦前に西東三鬼に師事、「京大俳句」に拠った。戦後、俳誌、個人誌を創刊しながら、石田波郷「鶴」に1時参加した。
 「雁道」は第5句集であり、1983年「無畔」、1986年「斎藤玄全句集」(永田書房・刊)がある。
 句割れ、句跨りなどありながら、定型を守っている。4度の開腹手術を受け、死を覚悟したようだが、悟ったような澄んだ句より、死の怖れを表したような句に好感を持つ。


 以下に5句を引く。
なにげなき餅草摘の身拵
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ
花山椒みな吹かれみなかたちあり
心痩せては花桐の吹溜
山をもて目を遮りぬ秋の暮
0-09
写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、5番目の句集、鈴木六林男「桜島」を読み了える。
 先の8月23日の記事、松村蒼石・句集「雁」を読む、に次ぐ。

 原著は、1975年、アド・ライフ社:刊。13年間の602句、長文の著者・後記を収める。
 鈴木六林男(すずき・むりお、1919年~2004年)は、戦前の新興俳句運動に関わった。戦場より負傷帰還、戦後の前衛俳句運動に関わったようだ。

 「桜島」の初めでは、字余りの句が多いが、師・西東三鬼の没後は少なくなる。社会的に実践する中で、吟じて来たようで、難解な句がある。例えば「父を逃れ母を逃れて墓標と撮られ」。
 あとがきに「ノートにある作品はすべて収録した」とある。それにしては句数が少なく、寡作と言える。


 以下に5句を引く。
病めば自愛の冬日さえぎり機関車過ぐ
戦争が戻つてきたのか夜の雪
なが雨の車窓から振り消えない手
三鬼なし夜寒の山が汽笛出す
稲輓く馬何の化身として憩う
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




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 5月23日に、三月書房より沖積舎「西東三鬼全句集」再販本(4,000円、税・送料・別)を買う積もりだったが、参考にAmazonを観ると、角川ソフィア文庫で1,339円で出ている。
 廉価で、俳句なら1句1行で読みやすいかと、注文した。
 翌日、5月24日の午後に届いた。内容を見ると、1ページ10句で、混み合って少し読みにくい。
 ちくま文庫「尾崎放哉全句集」(未読)の本編のように、1ページ5句くらいかと思ったのだ。字の大きさは同じくらいだが、俳歌の本は余白の美を尊ぶもので、ネット購入でよくある「残念」に近い。貧しい者の責任として、いつか読もう。
佐藤涼子 Midnight Sun
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズから、佐藤涼子「Midnight Sun」kindle unlimited版を、Amazonよりタブレットにダウンロードした。
 このシリーズは、僕の知るところ、田中ましろ「かたすみさがし」を例外として、字が小さい。タブレットの下部のナビゲーションバーで「拡大」を使うと、1首がタブレット画面をはみ出す。ピンチアウトで拡大できるが、次ページでは戻るようで、ページごとの操作は面倒だ。
 栞機能はあるが、ハイライト、メモが利かない。それでも、そういう本だと思って読んで来たので、とくに不満はない。コストパフォーマンスにも由るのだ。




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