思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、「第Ⅳ部 初期詩編」の「Ⅹ 詩稿Ⅹ(1948)」の(2)残り63編の詩編より紹介する。6回目の紹介である。
 
5回目の紹介は、今月4日の記事にアップした。
概要
 前回は、104編ある「詩稿Ⅹ」のうち、初めの「挽歌」より41編目の「打鐘の時」までを読んだ。今回は42編目の「芥河」からしまいの「(とほい昔のひとが住んでゐる)」に至る63編を読み了える。
 1948年の詩作の、現在発見されている詩稿のすべてと思われる。「詩稿Ⅴ」~「詩稿Ⅸ」は発見されていない。
感想
 変わらず旧仮名遣い(1部誤まっている)であり、定型調の短詩が散見される。
 ハイトーンに「訣別」のテーマが詠われる。「回帰の幻想」の「立ち訣れた心理のイメージの中に/…」、「青桐」の「時がふたりを訣れさせる/…」、「荒天」の「訣れ路をひとがとほる/…」、「告訣」、と止めどがない。
 「雪崩」の末連「すなはち女性からは絶望を宣告され/高邁なヒユマニズムの医師からは/ありつたけの力で逃げてきた/ひん死の病者こそわたしだから」と自分を見詰め、掉尾の「(とほい昔のひとが住んでゐた)」の終行で「おゝこれからはどうしよう!」と嘆いている。
 しかし「少年期」の末2行「もうすべてが視えなくなつたかはりに/すべてがみえるようになったから」と不可視の関係が視えるようになった彼は、「祈り」の第2連「おお/貧しいものたち/おまへの願ひは決してきかれない/鋭敏な革命家によつても/神によつても」と、庶民からの思想に出立するようである。
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。