風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
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課題図書

 和田たんぽぽ読書会の11月例会の課題図書、ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読み了える。
ぼくはイエローで…
 新潮社、2019年11月25日・13刷。253ページ。
 読み了えて、ジャンルは何だろうと考える。ジャンル分けより、中身が大切なことは分かっているが。
 小説でなく、エッセイでなく、いわゆるノンフィクションでもない。ノンフィクションの1分野、ルポルタージュだろうか。開高健のルポルタージュ「ベトナム戦記」にも、似た切迫感があった。
 アイルランド人と結婚した日本人女性の、一人息子がエリート系のカソリック系中学校ではなく、白人労働者の子供たちが通う、元底辺校に自ら通うようになった生活を描いている。
 人種差別、LGBT、貧富の差、など(家庭内を含め)、トラブルの渦中の中学生たちである。
 上記の事柄に関心のある方は、読むと良いだろう。
 著者がブレないのは、夫と共に、カソリック信徒であるせいもあるだろう。



 9月8日午前10時より和田公民館にて、和田たんぽぽ読書会9月例会が持たれた。
 8月はお休みなので、7月15日の同(7)以来だった。




 今回の課題図書は、三浦しをん「愛なき世界」だった。僕は既に、7月24日の記事に、感想をアップした。


愛なき世界
 まずA・Tさんより連絡があり、県合同読書会の中止等の報告があった。またT・Rさんはやむなく欠席、O・Tさんは1時間遅れるという事で、5名での開始となった。司会は初めての僕だった。

 A・Kさんの感想。良い人ばかりで、食堂の藤丸君がわかりやすい。「動物も植物も人間も光を食べて生きている」のフレーズが印象的だった。
 A・Tさんの感想。藤丸君が献身的である。題名に引っ掛かる。
 I・Yさん。知らない世界を垣間見る。小保方さんの事件を思い出した。
 M・Mさん。作者はまだ若く、人生の見方が深い。感情移入できる。筆力が凄い。
 僕の感想は、先のブログ記事の通りである。皆が松田教授の態度を評価するけれども、僕は人情噺に落ちていると思う。
 0・Tさん登場。忙しすぎて、3分の1くらいしか読んでいない。読みやすいけれども、という感想だった。T・Rさんの文章を僕が預かった。

 秋の文学散歩の件を話し合った。次回の課題本、中脇初枝「神に守られた島」を分け合って、11時半過ぎに散会した。



 三浦しをんの小説「愛なき世界」を読み了える。和田たんぽぽ読書会の9月例会(8月はお休み)の課題図書である。
 三浦しをんの小説は、同じくたんぽぽ読書会の課題図書「ののはな通信」を読み、先の4月11日の記事にアップした。



愛なき世界
 「愛なき世界」は、2018年初版、中央公論新社・刊。447ページ。
 大学院生で植物学の基礎を研究する本村(女性)に、洋食屋の店員・藤丸が好意を寄せる話を主ストーリーとする。
 本村と周囲の研究ぶりも、藤丸の職人根性も面白い。しかし藤丸の2回の告白を、本村は「植物の愛のない世界」が最優先と、断ってしまう。
 愛がgive&give&takeの事なら、自然には愛がある。しかし本村は、1部の現代女性と同じく、セックスレスの生活を送りたいのだろう。そこにも人間性はある。
 松田教授の若い頃の同輩・奥野の死への自責感を述べるくだりは、やや人情噺に傾く。
 三浦しをんが、科学研究に切り込んだ小説として、高く評価したい。


 三浦しをんの小説「ののはな通信」を読み了える。
 先の3月26日の記事、和田たんぽぽ読書会(5)で、4月例会の課題図書として手渡された本である。4月14日に予定されていた例会は、コロナ禍により中止となり、読書会の再開の目途も立たない。

 

 三浦しをんの小説は今年1月20日の記事に、新潮文庫「風が強く吹いている」を、批判的に取り上げた。またKindle本・短編「天上の飲み物」を読んだ。
 


「ののはな通信」 (2)
 「ののはな通信」は、2018年5月、新潮社・刊、448ページ。
 「のの」こと野々原茜と、「はな」こと牧田はなが、女子高校の生徒だった時に出会って、S関係に入り沢山の手紙を交すが別れて、お互い大学に入り文通、訪問の再開、大人になってメールを重ねる、書簡体小説である。
 「のの」は東大文学部を卒業するけれども(年上の「悦子さん」と同棲し、見送って)、学究を諦め、フリーライターとなる。「はな」は外交官夫人となり、国々を回る。「はな」はゾンダ(架空の国)の大使夫人の時、ゾンダに内戦が再発し、隣国の難民キャンプで活動する、と言い残して行方不明になる。
 高校生時代のS関係が、次第に美化され、唯一の純粋な愛として残る様を描いている。読者の評価は、異なってくるだろう。


 

 和田たんぽぽ読書会3月例会の課題図書、藤田宜永「愛の領分」を読み了える。
愛の領分
 藤田宜永(ふじた・よしなが)は1950年、福井県生まれ。先の1月30日に亡くなった。
 この「愛の領分」で、第125回直木賞・受賞。
 主人公の淳藏(50歳代、妻を亡くしている)と恋人の佳世(39歳、独身)、ほか様々な男女の情の絡み合いが描かれる。
 淳藏の昔の恋人・美保子が不治の病となって、また淳藏を恋うのも哀れである。
 ハッピイエンドの結末は流し読みした。幸せな恋人たちは放っておいて好い。
 作者は「愛の領分」としているが、欲情絡みの男の見方に思えてならない。



 12月10日(第2火曜日)午前10時より、和田公民館での和田たんぽぽ読書会の12月の会に参加した。2回めの参加である。
 1回めの参加は、先の11月13日の記事にアップした。



 僕は手土産に「決定版Ⅷ 方言集 ―福井市とその近辺ー」プリント綴じを6部持ってゆき、会員に配った。また家うちにあった、永田和宏・河野裕子の「たとへば君」「家族の歌」「歌に私は泣くだらう」を持ってゆき、前回の課題図書に絡めて示した所、前2冊は読んで下さる方が見つかった。

 今回の課題図書は、森絵都の短編小説集「風に舞いあがるビニールシート」である。
 内容については、Wikipedeiaの記事をご覧ください。


風に舞いあがるビニールシート
 さりげない話から、読書会に入り、ATさんより順に話すことになる。ATさんは、アフガニスタンでの中村医師・死亡の事件があり、表題作「風に舞いあがるビニールシート」を再読したと語った。「鐘の音」では、かつての芸術家肌の仏像修復師が職を変え、後に普通の結婚生活を送るオチが気に入ったようだ。
 IYさんは、作家が多くの文献を読んで、奥深い世界を現したと述べた。「鐘の音」は、映画化したら素晴らしい。「風に舞いあがるビニールシート」は、緒方貞子さんに関わって読んだ。「ジェネレーションX」は、O・ヘンリの小説を思い出したと述べた。

 MMさんは、10余年前の刊行当時に読みたかった。今の中村医師や緒方貞子さんの死の前で、その感慨はないけれども。中村医師の奥様は立派である、恵まれた出会いだったとも述べた。
 僕は、今月5日の記事と自分の経験を絡めて述べた。


 初にお会いしたTRさん(別の読書会の文集「えがりて」第33号、2019年9月1日刊、を下さった)は、朝鮮より幼児のまま引き揚げた(30人の幼児の内、日本に着けたのは自分1人だった)経験から、戦争でまず犠牲になるのは、子ども、女性、老人であると述べた。また「犬の散歩」について、自分も保健センターより犬を引き取って育てており、癒されると述べた。
 AKさんは、弱者、下積みの者への視点が暖かい。その道で亡くなる男性は幸せである、とも述べた。
 OTさんは、古文書を読む作業に忙しく、この本は未読。
 あとは作品に絡めて、思い思いに語った。12月11日の、中村医師の葬儀に、日本の閣僚がどれくらい参列するか、注視したいとも。
 しまいに、TRさんの選んだ1月読書会の課題図書、青山真治「ユリイカ」を受け取り、掃除を1部の方にお願いして、12時に散会した。


 

 先の11月13日の記事、和田たんぽぽ読書会(1)のしまいに、12月読書会の課題図書、森絵都「風に舞いあがるビニールシート」を渡された。県立図書館には、読書会用などに、同じ本を10冊くらい貸し出すシステムがあるようだ。
 

風に舞いあがるビニールシート
 「風に舞いあがるビニールシート」は、森絵都(もり・えと、1968年・生)の短編小説集である。6編を収める。
 313ページの大冊なので、表題作のみを読めば良いのかと、世話してくださったMMさんに問い合わせた程である。全編を読んで、読書会をするとの返事だった。


 「風に舞いあがるビニールシート」は、2006年、第135回直木賞を受賞した。
 「器を探して」では、ケーキ作りに才能を発揮し脚光を浴びるヒロミに、クリスマス・イヴの日まで出張を命じられて逆らえず、恋人の求婚の機会までなくしそうな、弥生を描く。カリスマ的人物と、惚れ込んだ部下の、心理の綾が面白い。「無論、気がするだけの話で、現実はそれほど悠長なものでもないだろうけれど。」と、お喋りの文体が入る。
 「鐘の音」は、仏像修復師から挫折した本島潔が、25年ぶりに元の作業場に元・弟弟子を訪ねるまでを描く。芸術に関わりがあると誰でも、芸術か生活かの岐路があるものだが、本島は生活を選んで幸福を得たのである。
 「ジェネレーションX」では、世代の違う2人の男性が、偶然の幸運に遇うまでの物語である。このような幸運があってもいいと思わせる。
 表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は、国連難民高等弁務官事務所に勤め、現地で活動する事の多いエドと、結婚し離婚した里佳が、エドの没後、エドの最期の様を知り、アフガンへの派遣を受諾する場面で終わる。ハードなテーマだが、作家は生活を描くだけでは耐えられなかったのだろう。


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