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 今月12日の記事、「0円で紙本を2冊入手」で報せた内、先の川上未映子の小説「乳と卵(ちちとらん)」を読み了える。
 メルカリで320ポイント(送料込み)で買ったが、帯、カバー、本文ともきれいで、当時のチラシ、栞が残っていた。
概要
 文春文庫、2010年1刷。芥川賞・受賞作「乳と卵」と、短編「あなたたちの恋愛は瀕死」を収める。
 初出は順に、「文学界」2007年12月号、「同」2008年3月号。
 川上未映子(かわかみ・みえこ、1976年~)は、CDアルバム、詩集(受賞歴あり)、小説と多才な人である。
 「乳と卵」は、大阪の母娘連れが、東京の妹を頼って、3日間滞在する話である。
感想
 言葉を発せずノートに書く娘、豊胸手術に執りつかれたホステスの母が、互いに生卵を自分に打ちつけながら本音を言い合い、和解する場面がクライマックスである。
 これだけだと悲喜劇だが、文体が変わっている。「です・ます」調があり、「~した」と叙述体があり、大阪弁があり、娘の書くノートの文面が挟まれる。このような文体は、アマチュアからプロへ脱皮する過程だったのだろう。
「あなたたちの恋愛は瀕死」は、善意と悪意と切羽詰まったストレスの、交錯するストーリーである。
 彼女はこのあと小説のみでも、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部賞、谷崎潤一郎賞、渡辺淳一文学賞、と受賞を重ねている。