風の庫

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谷崎精二

 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第3巻(1978年・5刷)より、長編小説「ゴオドン・ピムの物語」の1回めの紹介をする。
 先行する短編小説「軽気球虚報」の感想は、10月24日の記事にアップした。



 「ゴオドン・ピムの物語」は、この全集で133ページ~332ページ、200ページの長編小説である。今回は173ページまで、第3章までを読んだ。
 学校で親しくなったオウガスタス(彼は船長の父と、捕鯨航海をしたことがある)と、持ち船の帆船アリエル号で、大酒のあとピムは船出し、嵐に遭って捕鯨船にようやく助けられる。
 オウガスタスの父バアナアドが、捕鯨航海に帆船グラムパス号で出港する時、ピムはオウガスタスと相談して、内緒で乗り込む。船倉に一人で潜むが、オウガスタスとの連絡が取れなくなり、灯りも点せず苦しむ。数日のち、オウガスタスはやって来て、水と食料を呉れる。オウガスタスがなぜ長く訪問できなかったかを話し出す所で、第3章の仕舞いとなる。
 ポオは想像力の限りを尽くして描いている。僕はこの冒険小説に付いて行けるだろう。

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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第3巻(1978年・5刷)より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、今月20日の記事にアップした。



 今回は、短編小説「軽気球虚報」1編のみを読んだ。このあと第3巻には、長編小説「ゴオドン・ピムの物語」しか収まっていないからである。

 「軽気球虚報」は、飛行船(軽気球とはなっているが、楕円形でプロペラ(翻訳ではスクリューとなっている)、舵を備える)で、大西洋横断に成功するフィクションである。イギリスからフランスへ、英仏海峡を越える予定の所が、気流の関係で大西洋横断に方針を替え、75時間で成功する。
 ライト兄弟の初飛行が1903年、リンドバーグの飛行機による大西洋横断は1927年である。1809年・生~1849年・没のポオは飛行機を知らず、飛行船の冒険に想像を馳せるしかなかったのだろう。

飛行船
写真ACより、「飛行船」のイラスト1枚。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第3巻より、2回めの紹介をする。
 先行する同(1)は、先の9月18日の記事にアップした。




 今回は、「壜の中の記録」、「メロンタ・タウタ」、2短編小説を読んだ。
 「壜の中の記録」は、いわゆるボトルメール(ガラス瓶に手紙を入れて漂流させ、偶然の読者を当てにするもの)の形式を採る。バタヴィア(インドネシアのジャカルタ)からマレー諸島へ400トンの船で出港したが、嵐に遭って2人だけが生き残る。さらに大きい軍艦と衝突し、沈む反動で軍艦に乗り上げる。軍艦は南氷洋に向かうらしく、氷山が次々と現れる。軍艦が沈む所で手紙はしまいだが、死者からのボトルメールとする所に、迫真性がある。
 「メロンタ・タウタ」は、「気球「雲雀号」にて 2848年4月1日」の副題がある。気球とあるけれども、飛行船の物語らしい。しまいに壊滅して、海中へ落ち込む。この短編小説も、ボトルメールの形を採るが、漫筆の議論が多く、迫真性が足りない。
 2848年の出来事としているが、ジェット機やロケットが飛ぶ時代が近かったとは、ポオも予見できなかったようだ。

ボトルメール
写真ACより、「ボトルメール」のイラスト1枚。



 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第3巻より、1回めの紹介をする。
 先行する「同 2」を読む(7)は、今月7日の記事にアップした。




ポオ全集第3巻
 「ポオ全集」第3巻の函の表である。1969年第1刷、1978年第5刷。

 第1編は、「ハンス・プファアルの無比の冒険」である。オランダで困窮したハンス・プファアルが気球を造り、工夫を凝らして月世界に至るという話である。長文の手紙が月の住人によって届けられ、真相がわかる。
 気球程のもので、月に至れない事は、現代の科学で明らかである。月到着の願いは古くからあり、色々な物語を生んだとしても、これは上手な部類ではないだろう。

 第2編は、「メエルストルムの渦」である。「大渦に呑まれて」「大渦の底へ」の訳題でも有名な短編である。大渦に巻き込まれた小漁船で、主人公が、大きいものや丸い物が早く沈む事を発見し、樽に身を縛って飛び込む事で、死を免れる。しかし樽に身を縛っては、海水も飲むだろうし、現実的なストーリーに思えない。前作と共に、当時の科学の知識が先行し、今の読者の感興が大きくない。



 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻より、7回め、仕舞いの紹介をする。
 同(6)は、先の8月17日の記事にアップした。



ポオ全集 2
 「ポオ全集」第2巻の函の表を再掲する。

 第2巻の仕舞いは中編小説「ジュリアス・ロドマンの日記」で、244ページ~323ページ、80ページに渉る。
 副題にもあるように、「ロッキィ山脈最初の踏破記」である。第1章の長い序説のあと、第2章~第6章へと、日記形式で語られる。
 毛皮を求めて川を遡上し、草原の美しい景色、インディアンとの闘いを描き、赭熊の襲撃から逃れる所で、日記は了えられている。ロドマンが生活し、日記の残っている所から、この冒険は成功したのだろう。

 谷崎精二は解説で、「珍しい平明で清暢な物語である」と述べる。しかし少ない資料から、ポオが想像力を奮って描写して行く、苦悩が伝わって来る。

 これで第2巻を仕舞い、全6巻の第3巻に入る。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻より、6回めの紹介をする。
 同(5)は、今月11日の記事にアップした。



 今回は、199ページ~243ページの、45ページ分である。
 「四匹で一匹の獣」は、3830年の2人連れが、古代シリアの都市アンティオクに身を置いた物語である。王がキリンの皮をまとっていたり、結末では王が2人連れの「君」になっていたり、場景と共に筋立ても混乱していると思われる。
 「シェヘラザアデの千二夜目の物語」は、千一夜物語に続きがあったという設定で、千二夜目の物語に王が怒って、王妃は殺される。しかしその話は、ポオの時代を超えて、コンピューターやネットの世界を予見したようだ。「使いきった男」のiPs細胞を予測するかのアイデアと共に、ポオは未来予見の能力があったようだ。
 「花形」は、立派な鼻を備えた男が、それを最上とする社会で花形となる。しかし侯爵と決闘で、相手の鼻を射ち落とすと、花形を追われる。鼻を持たない男が、更に1番の社会だったのである。カードゲーム等での順位が、基だろう。

パソコン
写真ACより、「パソコン」のイラスト1枚。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻より、5回めの紹介をする。
 同(4)は、先の7月30日の記事にアップした。



 今回は167ページ~198ページの、32ページ分である。
 「ヴァルデマア氏病症の真相」、「鋸山物語」、「エルサレム物語」の3短編小説を読んだ。

 「ヴァルデマア氏病症の真相」は、瀕死の病人を催眠術によって死から阻もうとする物語である。催眠術、死にゆく者の意識、完全な死の場面など、おどろおどろしく描く。
 「鋸山物語」は、モルヒネを常用するペドロオが、インディアン・サマーのある日、山に迷って、アラブ風の市街を見つけ、降りてゆき死を体験する物語である。生き返り、家に戻るが、1週間ばかり後に亡くなってしまう。
 「エルサレム物語」は、ローマ軍攻囲下のエルサレムで、収税吏と牧師が、約束通り塔の上より銀貨の籠を下ろすが、見返りの祭壇のための肉は、ユダヤ人の食べない豚肉だった、というオチである。オチのみで成り立っている。

 第2巻のしまいまで、あと3短編と1中編が控えている。

アラブ人
写真ACより、「アラブ人」のファンタジックなイラスト1枚。



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