砂子屋書房・現代短歌文庫(104)「続 藤原龍一郎歌集」より「19☓☓」を読み了える。
 今月26日の記事、
同「嘆きの花園」を読む、に次ぐ。
概要
 原著は、1997年、ながらみ書房・刊。
 1970年代以降を輪切りにするような標題の、6つのテーマ詠に、間奏曲を挟んで構成している。
感想
 大きなテーマ詠は、ある転回点(転向と呼んでも良いかも知れない)を示す場合が殆んどだ。宮柊二も、高野公彦もそうだった。しかし藤原龍一郎は、6つのテーマ詠を成し(それだけ内のエネルギーが大きかったのだろう)、その後、保守にも生活にも走っていないようで、偉容である。
 福島泰樹の「短歌絶叫コンサート」を1度聴いたことがあるが、あの叫びにも似るようだ。
 知らない固有名詞が多く、検索すればわかるのだろうが、いまはその意義は小さいと思う。
 人の繋がりが基で生まれた連作である。あとがきで彼は、「速度の充実も虚無も、たぶん、ここにある。」と自負している。
引用

 以下に7首を引く。
内乱の予兆ごとく雪やみて後の沈黙、さらば同志よ
村上団地寒夜せつなく咲き残るどうしようもなき山茶花の白
われは見たり!才気あふれる誰かれのみずから挫折してゆくさまを
否応なく永き昭和を生かされて麻痺するごとき月光の首都
東京の倦怠を胃の底までとマック・シェイクを吸い吸い吸いて
東京に雨ふる午後を朽ちてゆくココロザシある冥きヨロコビ
同時代的俗論と俗塵に知を身をさらし 御免蒙ル
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写真ACより、「乗り物イラスト」1枚。