風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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迢空賞

あやはべる
 米川千嘉子・第7歌集「あやはべる」を読み了える。
 到着は、先の4月28日の記事、歌誌と歌集とエッセイ本で報せた。
 彼女の読んだ歌集として、先の4月30日の記事にアップした、「吹雪の水族館」(第8歌集)に次ぐ。
概要
 短歌研究社・刊。2012年7月・初刷、2013年3月・重刷。473首、著者・あとがきを収める。「あやはべる」は、沖縄の古い言葉で、蝶を指す。
 2013年、第47回・迢空賞・受賞。
感想

 第8歌集から第7歌集を読んでいるので、一人息子さんの成長など、フィルムを逆回しで観ているようだ。
 第8歌集では就職した息子さんは、ここでは予備校を経て大学に進学したようだ。息子さんは家を出て、歌人夫婦2人きりの生活になった。
 娘・妻・母親・1女性としての歌と共に、東北沖大地震・原発災害も繰り返し詠まれている。
引用

 以下に7首を引く。
最後の試合終はりたる子のユニホーム洗へばながく赤土を吐く
風吹けば滝は蛇腹を見せて光(て)り主婦のむなしさもううたはれず
憂愁の少年阿修羅を見てくれば息子ごつんと憂鬱にゐる
食べさせたものから出来てゐる息子駅に送りて申し訳なし(進学で家を出る)
ああ春のひかりは甘いと嗅ぐ母を食べ揺れてゐるエニシダの黄
ひたすらにひとは紙漉きキンドルのしづかな白も作りだしたり
絶句する人になほ向くマイクあればなほ苦しみて言葉を探す





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「覇王樹」5月号
 所属する結社の歌誌「覇王樹」2019年5月号が、4月26日に、ゆうメールで届いた。
 5月1日付け・刊。来年8月・刊の100周年記念号に向けて、原稿募集等が本格化した。
 先の歌誌「覇王樹」4月号を読むは、今月5日の記事にアップした。
 5月号の僕の歌6首(8首より選)他は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の4月27日付け記事より、順次少しずつアップするので、横書きながらご覧ください。

あやはべる
 4月24日に、米川千嘉子・第7歌集「あやはべる」(迢空賞・受賞)が、Amazonのマーケットプレイスより、ゆうパケットで届いた。価格:2,090円(送料・税・込み)。短歌研究社、2013年3月・重版。
 今月22日の記事、同・第8歌集「吹雪の水族館」が届くに次ぐ。

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 川上未映子のエッセイ本「きみは赤ちゃん」(文春文庫、2017年5月・刊)を、メルカリより330ポイントで注文し、4月24日にローソン某店で受け取った。
 作家・川上未映子の妊娠・出産・子育てをめぐるエッセイ本である。
 彼女の本は、小説「すべて真夜中の恋人たち」を、昨年10月31日に記事アップして以来である。
 蔵書は読みきれない程あるのだが、最近の新しめの本もつい読みたくなり、買ってしまう。



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 短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、歌集「雪天」(前)を紹介する。
 今月9日の記事、
同・「能登」に次ぐ。
概要
 原著は、1986年、短歌新聞社・刊。1070首、妻・岡部ミツのあとがきをおさめる。
 大冊なので(この全歌集で634ページ~700ページ、1ページ20行)、前後に分けて紹介し、今回は668ページの「鷺」の章までをアップする。
 1986年5月、岡部文夫は失語症に陥り入院、7月退院(自宅療養)、10月・歌集刊行した。78歳。
 翌年の「迢空賞」(歌壇最高の賞と思われる)を受賞。生前最後の歌集となった。
感想
 夫人のあとがきに拠ると、常と違って、推敲を重ねずに歌集刊行を依頼し、かえってそれが良かったのか、自ずと歌が満ちたのか、力感のある歌が多くを占める。
 前者の場合だとすると、推敲に推敲を重ねる歌人だったらしいが、修辞に自信があって、まとまり過ぎていたのかも知れない。
 「この幾日灼けつつ熱き炎天の沙のうへには蟻さへも見ず」のような、自然と自己の融合した秀歌が見られる。
 積雪の怖れ、通行人の少ない冬、老いの姿は、僕も実感を同じくする。また自然を美しく詠む。
引用

 以下に7首を引く。
夜昼となしに降りつむ屋根の雪ただに怖るる老いたる今を
冬の日の暮るるより通る人もなきこの雪ぐにの夜のひそけさ
降りやまぬ雪のゆふべの早きより鮟鱇を煮る妻とふたりに
北ぐにの春も近きか雪代の水を刷(は)きつつ風はかがよふ
一冬をすぎしばかりにかくまでに吾が老の足衰ふものか
半夏生に焼鯖を食ひて豊作を祈る慣ひも今に貧しき
海の上に降りつつ荒き夜の雨のときのまにして遠く移ろふ
0-20
写真ACより、「アールデコ・パターン」の1枚。




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 砂子屋書房・現代短歌文庫124「森岡貞香歌集」(3歌集・全編収載)より、3番めの歌集「百乳文」を読みおえる。
 先行する「珊瑚数珠」は、先の9月25日付けの
記事(←リンクしてあり)にアップした。
 原著は、1991年、砂子屋書房・刊。迢空賞・受賞。
 僕は知らなかったのだが、彼女の短歌は、葛原妙子(僕は全歌集を持っている)や、山中智恵子らと共に、女流前衛短歌運動の流れの中に、置いて読むべき作品だろう。
 非・写実、字余り・字足らず、句われ句またがり、等の詠み方が多い。
 この短歌文庫に付された、「評論・エッセイ」12編も読む予定だ。
 以下に7首を引く。
きのふまたけふ厨の方へ行かむとし尻尾のごときを曳きてをりけり
歩運びをゆるやかになす夜のあゆみ喘ぐことなきかかる寂しさ
秋の日のかくあかるきに乱積みの懊悩あるが見えはせぬかも
かならず人は身罷るかないま亡くも快活に妻をよびたてるこゑ
椅子ひとつ余分に置けりこのへやに余分のたれも居らざる日日を
まひるまの一時こころの空きたりやうつせみのほかに思ひ出だされず
藁しべも犬の抜毛も巣造りに運ばれてをりビニール紐も

  (注・文中の1部で、正字を新漢字に替えてある)。

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