風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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連作

 本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2021年4月号を、ほぼ読み了える。
 到着は先の3月20日の記事、届いた3冊を紹介する(11)にアップした。


歌壇2021年4月号
本阿弥書店
2021-03-13

 特集は「連作の組み立て方」だけれども、僕には連作を発表する機会がほとんどない。短歌の賞に応募しないし、同人歌誌、支部歌誌にも属していない。アメブロ「新サスケと短歌と詩」に連作発表の場はあるが、まとめにくい。
 今は危機感の時代を過ぎて、静かな危機の時代だと思う。怒りも嘆きもなく、未来は見えない。
 柳澤美晴の20首連作「石鹸まみれの星」に好い歌があった。
鎖骨のあはひにダイヤは耀けり急所は此処と告げるかのように
 女性らしい、死を賭けた恋への憧れを、詠むようだ。字余り字足らずは多いけれども。「ほっぺたをぱぴぷぺぷうとふくらませ天使も練習するか喇叭の」も優れたオノマトペを発見した。ぱ行の多用を含めて、秀歌である。
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写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。




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 岩波文庫の一茶「七番日記」(下)、2003年・刊より、6回めの紹介をする。
  同(5)は、先の12月24日の記事にアップした。



 今回は文化13年7月~12月の半年分、243ページ~293ページの51ページを読んだ。
 俳句ページの頭部に一茶の記録メモが記されるが、漢文読みくだし文で読みにくく、天候記録が多く、訪問先も記されるが、一々追っていられない。見開き2ページの左端に校注者の語注欄があり、理解の助けになる。
 年末の句数は記載なく、江戸を去る時の餞別1覧が載っている。金額など、今の僕にはわからない。
 男子の世継ぎ(当時としては当然だろう)を望むらしい句、老境の句がある。
 最大の支援者だった成美への追悼連作9句がある。
 在菴156日、他郷228日と、やや在菴日が増えたか。
 9月5日の頭部記録に、「キクト中山菅刈 茸取 栗拾」とあり、微笑ましい。

 以下に5句を引く。
老(おい)が世に桃太郎も出よ捨瓢(すてひさご
茹(ゆで)栗と一所(いつしよ)に終るはなし哉
おもしろう豆の転(ころが)る夜寒哉
浅ましや熟柿をしやぶる体(てい)たらく
霜がれや米くれろ迚(とて)鳴(なく)雀
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写真ACより、「ウィンターアイコン」の1枚。





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 宇野なずき・歌集「透明な砂金」Kindle Unlimited版を読み了える。
 入手は今月5日の記事、入手した4冊を紹介する(11)にアップした。
 

 また2017年・刊の第1歌集「最初からやり直してください」は、2018年6月15日の記事にアップした。


宇野なずき 透明な砂金
 宇野なずきは、1989年・生、ネットを主に活動している。歌集「透明な砂金」は、2020年11月・刊。20首連作×7編。
 歌の言い回しは上手である。人生の実感を重んじる伝統と合わないかも知れない。
 現在の人に刺さる歌が多い。また現在の風物を取り入れている。

 以下に7首を引く。
はじまりの合図に鳴った銃声が頬をかすめて二の足を踏む
降ってきた 誰かのために走れなくなってそれから煮物がうまい
こうやって思い出さない日が増えて普通に暮らす未来がこわい
燃えている川の流れに逆らうと賢い猿に同調される
アルバムに保存されると過去形になるから置いていかないでください
終電で退職届の下書を引き止めてくるソシャゲの通知
きっとこの努力は報われないけれどバーベキューとか楽しかったね




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 筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、第6詩集「老人の手帳」を読み了える。
 第5詩集「叫び声と風景」は、今月8日の記事にアップした。




 「老人の手帳」は、1960年、モンダドーリ社・刊。J・ポーラン・序、L・ピッチョーニ・編。(1950ー60年)と題に付されている。
 「約束の地を求めて最後のコロス」は、27編の連作である。「日々は虚しい煙に過ぎないと。」「すべてが廃墟にすぎないことを。」「希望をすり減らすもの、それは希望だ、」等、とても虚無的になっている。
 過去への追憶ばかりを想い、未来を想わない生活は、虚しいだろう。
 「言葉を失った小曲」(1957年10月、ローマ)は、2編より成る。
 掉尾に対の2章「二重唱」を収める。「もはや何一つ彼の心から動かせないのか、//もはや何一つ彼の心から/追憶の苦い驚愕のほかには/擦り切れた肉体のなかでは?」と結ばれ未来がない。直訳調か和文調か、翻訳詩の語順という、どちらが理解されやすいか、スタイルの問題も問われる。

 この後に、「最後の日々」(1919年)(フランス語詩篇)と、「散逸詩篇」(1915年~1927年、未収録)、詩論「詩の必要」を残す。

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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。


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 筑摩書房「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、第3詩集「悲しみ」を読み了える。
 第2詩集「時の感覚」は、今月4日の記事にアップした。



 第1詩集「喜び」(喜びの詩編ばかりではなかったようだが)とは、対照的な「悲しみ」の題名である。(1937年ー46年)と付されている。
 幼年時代との別れ、兄の死を歌ったあと、9歳で病没した長男(1939年。1936年~1942年、サンパウロ大学の教授だった)を悼む17編の連作が続く。
 ファシスト政権下でも、苦しみながら(ウンガレッティは苦しむ詩人だった)詩作を続け、「おまえは砕け散った」の3連作、キリスト教への信と不信を含む「占領下ローマ」(1943ー44年)の詩編へ至る。
 1945年のファシスト政権崩壊後、1942年に政権によってローマ大学教授に任命されていたウンガレッティは責任を問われ、1947年に作家協会を追放されたが、大学教授は危うくも留任が決まった。
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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。


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 岡山大学短歌会の歌誌「岡大短歌」8号を読み了える。
 入手は、今月10日の記事、入手した4冊を紹介する(9)にアップした。



 また同・7号は、昨年12月23日の記事にアップした。


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 「岡大短歌」8号は、2020年8月15日・刊。45ページ.頒価:400円。
 Twitterのダイレクトメッセージで遣り取りして、指定口座に送料と共に振り込むと、早速送られて来た。上質紙であり、コストパフォーマンスも高いと思う。

 8首連作が10名、20首連作3名、30首連作1名である(重複する作者がいる)。雪舟えま、笹井宏之らの1首評4名(各1ページ)、H・琳の評論「時代の流れと読みの変化」3ページがある。
 月2回の歌会で、熱く、和やかに語り合っていると後記にある。
 若い恋の歌と共に、社会的不安、個人的不安を、ぶちまけたような作品がある。既に仕事をリタイアした者として、若者の健闘を願うばかりである。

 以下に5首を引く。
絵に描いたような約束 わたしたちは小石が成したモザイクアート(N・遠足)
うどん屋のたぬきの置き物さすったらしあわせになっているんだ私(H・琳)
思い出になるね、なんてね!丸ごとのももを流しでならんでかじれば(O・こみち)
必要のない絆とは手を切ってあらゆることに怯えたくない(B・なつ)
気づいたら後ろの人がいないみたいにあらゆる保証がされなくなった(M・航)



 

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 総合歌誌「短歌往来」2020年9月号、Kindle Unlimited版を、ほぼ読み了える。
 入手は、今月28日の記事にアップした。



短歌往来9月号
 2020年8月15日、ながらみ書房・刊。
 入手紹介で、捨て身のKindle Unlimited化と書いたのは、紙本の定価が850円なのに対し、Kindle Unlimited本は1ページ0・5円くらいで、全部読んでも1冊100円か200円にしかならないからだ。若い編集人・佐佐木頼綱の決断だろうか。

 特集は「子育て&子供のうた」。「子育て」と「子供」を並立させる志向に異論もあった。
 短歌5首と短文だが、俵万智の「餃子の時間」では、一人息子が高校生になっていて楽しい。子がトラブルを抱えている場合も多いようだ。

 連作、知らない歌人の歌、楽しく読んだ。
 手軽に新しい短歌に接することを望んでいるので、Kindle Unlimitedで短歌を読めるのは嬉しい。


 
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