風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

違和感

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 江國香織の短編小説集、「号泣する準備はできていた」を読み了える。
 長く文庫本棚にあったのだが、題名に少し引いていた。
 彼女の小説は、先の9月8日の記事、
同「きらきらひかる」を読む、に次ぐ。
概要
 新潮文庫。2007年、10刷。233ページ。12編の短編小説を収める。
 この短編集に由り、2004年、直木賞を受賞した。
感想
 初めの2編、「前進、もしくは前進のように思われるもの」、「じゃこじゃこのビスケット」は、男女の心の擦れ違いから生まれる、カップルの違和感を描く。
 この短編集に登場する男女は、どうしてこう不倫をするのだろう。夫が、妻が、あるいは双方が不倫をしている。標題作「号泣する準備はできていた」では、別れて出て行った男が、「ときどきやってきて、またでていく」という状態だ。
 だから最後の「そこなう」で、不倫相手の男が離婚して、「これからはずっと一緒だから」と言っても、満足感を持てない。
 一夫一婦制に無理があるとか、性の解放だとか言っても、今の社会では無理だろう。登場人物は、フリーランスか中産階級で、そのような放恣があり得るのだろう。
 「きらきらひかる」でも、ホモの夫の睦月は医師、妻の笑子は翻訳家、の設定だった。




いつも空をみて
 浅羽佐和子・歌集「いつも空をみて」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 ダウンロードは今月16日の記事、
「入手した3冊(3)」にアップした。
概要
 シリーズ名、各版の出版時期、価格は、上記のリンクに書いたので、ご参照ください。
 浅羽佐和子(あさば・さわこ)は、1972年・生。2001年・未来短歌会入会。2009年・未来年間賞受賞。
 「いつも空をみて」には歌集編に、加藤治郎・解説「空を見上げる」、後記「短歌とわたし」を収める。
感想
 Ⅲ章に別れ、第Ⅰ章ではありがちな、危うげな恋が描かれる。若い女性の短歌は、悲恋ものが多い、と思ってしまう。
 第Ⅱ章では、いきなり長女出産後の子育てが描かれる。優しい母親だけでは、いられないようだ。
 仕事はSEのそれもマネジメント役として、キャリアを積んでいる。
 生活の違和感を、字余りの多い歌で訴えている。
 「男は気づかない振りをしている」か「ほんとうに気づかない」と断罪される。気づいて子育てに参加しても、男は仕事が100%うまく行かなかったり、昇進に響いては、1家で困ると思うのだろうか。
 第Ⅲ章では、次女誕生の出産場面から、2人の子育てとなる。女性に不利な社会の仕組みだと思うけれども、僕には提言の言葉がない。
 彼女が短歌を続けて、良い家族関係となり、仕事で奮励する、日が来る事を願うのみである。
引用

 以下に7首を引く。
返事せぬままのメールがそれぞれの表情をして私を見てる
恋人が雨の匂いを消してゆく 花の図鑑はもう開かない
眠いのに眠れない子にいなりずしみたいな足でほっぺを蹴られ
暗闇の全件削除した指に煙のようなにおいが残る
予定日がこわい、私の愛情がなにものかにまた試されるようで
真夜中に何度も私の手をさがす見つけてなでてそしてまた寝る
この鍵をグルッとまわして母親に戻らなきゃいけないんだ、さあ



光のひび2
 Amazonのkindle本より、駒田晶子・歌集「光のひび」を読み了える。
 ダウンロード購入については、今月21日の記事、
同・歌集ダウンロードに書いた。
概要
 購入は、メモに拠ると、10月15日。
 その他の概要は、上記記事の「概要」に述べたので、そちらを参照してください。
感想
 宮城県仙台市に在住の彼女は、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)の時、産科病室で臥せていたという。
 その時の歌が、数は少ないが、声高でなく詠われている。先行する歌集「銀河の水」は2008年・刊なので、それには載っていない。
 「あとがき」で、「<ひび>は、<日々>でも<罅>でも。」と述べているが、僕は<罅>と取りたい。
 3人の子の母として、たゆみなく歩みながら、日々の心の違和感、短歌への小さな違和感が、題材や句割れ・句跨りの多用に、表れているようだ。

 短歌を支えに、寛やかに歩んでもらいたい。
引用
 以下に7首を引用する。
画面には聞きなれぬ声のわれがいる小さな子どもと歌など歌い
六歳はテレビ寄席が好き一歳にちょいとおまいさんなどと呼びかけ
病院のベッドの寒さ 院内の医師召集のアナウンスつづく
雪の舞うほの暗き朝ふりかえり手を振る人にわれの手を振る
薬缶みがきみがき上げたる曲線に夜の疲れた君は浮かびぬ
廊下暗し結局だれが悪かった?呟く声ばかり立っている
子は三人います留守番していますコンソメスープの熱々を飲む






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