筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、第5詩集「叫び声と風景」(1939―52年)を読み了える。
 第4詩集「約束の地」は、先の10月27日の記事にアップした。



 「叫び声と風景」の初めの長詩「独白」は、戦争から解放された詩人の喜びのようだ。「早くも命の気配が甦る、」「二月の色、希望の色だ」のフレーズがある。ただし錯乱に似せて歌われているので、意味の筋は追いにくい。
 2編めの「おまえは叫んでいた、苦しいと……」は、9歳で亡くなった長男を悼む作品である。第3詩集「悲しみ」の17連作「来る日も来る日も」でも歌われたが、年月を重ねて深みを増している。
 散文詩「気晴らし」3部作は、ギリシア詞華集にお気に入りの定型を見つける過程を描くようだ。その成果か「韻律の習作」「意味を追って」がある。
 3編の短詩「飛んでいた」(1933年)、「後ろには」(1933年)、「跳びはねている」(1952年)は、異都での発想で、主にのどかな景色である。
 以上で紹介した詩がすべてで、短めの詩集である。
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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。