本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2021年6月号を、ほぼ読み了えた。
 到着は、先の5月17日の記事にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡り得る。

「歌壇」6月号
 2021年6月1日・付け・刊。169ページ。

 巻頭作品20首詠は、穏やかである。吉川宏志「組織図」で、自分の退職を描いている。もっとも何人を馘首して来たか、と思う。
 小島ゆかり「合鍵」では、改憲が消え、ワクチン接種の始まりによるコロナ禍の収束が見えてか、長閑である。次に1首を引く。
夫は長女をわたしは次女をひいきしてあほらし朝の会話も老いぬ
 夫のアメリカでの挑戦と挫折を仄聞した者には、感慨深い。
 特集の「短歌の中の光と闇」は、宗教めくかと読まなかった。編集部が新しく見つけたテーマだろうけれど。

 特別企画「短歌における話し言葉の効果」は、口語・現代文法の短歌を詠む者として、貴重だった。「サラダ記念日」以降、多くのトップ歌人が口語を取り入れ、ニューウェーブも現れ、口語短歌は認められてきた。擬古典短歌を詠んでいる場合ではない。
 連載「平成に逝きし歌びとたち(18)」は、河野裕子を取り上げている。講壇での髪豊かなカラー写真と共に、30首選が、作品集などで知る歌が多く、懐かしかった。版権の問題だろうか、早い全歌集の刊行が待たれる。

 作品7首より1首を引く。T・公作さんの「Bの鉛筆」より。
この辺が引き際だろう丁寧に頭を下げてゆるキャラが去る
 ゆるキャラブームもいつか去って、引き際の潔さを詠んだ。