風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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集英社文庫

 ボブ・グリーンのコラム集「アメリカン・タイム」を読み了える。
 彼の本を既に読んだかと、ブログを検索するが、ヒットしない。

アメリカン・タイム
 集英社文庫、1993年・刊。45編のコラムを収める。
 ボブ・グリーンは、シカゴ・タイムズのコラムニストになり、シカゴ・トリビューン紙、エクスクァイア誌のコラムニストとして成功した。邦訳も10数冊があるという。
 文庫本のカバーは洒落ている(カバーイラスト、カバーデザイン、共に日本人に依る)が、読んだ感想は、芳しいものではない。名が売れている事を利用して、著名人をけなしたり、小エピソードを取り上げて有名にし、名を上げて行く。自転車操業か、ハムスターの回し車のように、走り続けるしかない。
 アメリカ人には、アメリカン・サクセス・ストーリーの体現者に映ったのかも知れない。
 2002年9月、古いスキャンダルが発覚し、シカゴ・トリビューン紙のコラムニストの座を降りた。彼はその後も執筆を続けている。


 


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 森絵都の紀行文集「屋久島ジュウソウ」を読み了える。
 到着は、今年6月19日の記事、届いた5冊(2)にアップした。しばらくお蔵入りしていた。



 森絵都の本は、「つきのふね」など数冊をブログ記事にアップしているので、関心のある方は検索してください。


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 「屋久島ジュウソウ」は、集英社文庫、2009年2月25日・刊。
 「屋久島ジュウソウ」と14編の「slight sight-seeing」を収める。

 初めの「屋久島ジュウソウ」では、「私」を含めて5名の仲間と、現地のガイドの、3泊4日の旅である。出発以前から不安になったり、ハイとウツを繰り返しながら、縄文杉や黒味岳を堪能する。登頂や美景でハイになり、登下山の苦しみでウツになりながら、無事、エッセイのための旅は了えられる。
 「ジュウソウ」とあるのは、「重装」と思っていたのが「縦走」だったからである。

 「slight sight-seeing」は、彼女の海外旅行の回想記である。
 旅行鞄から始まって、「海外でキレるとき」を含め、彼女の拘り多い各地の海外旅行が語られる。海外旅行の経験が1度もない僕は、わくわくしながら読んだ。彼女の術中だろう。


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 江國香織の小説、「なつのひかり」を読み了える。
 彼女の小説は、先の6月14日の記事、「間宮兄弟」を読む、以来である。



なつのひかり
 「なつのひかり」は、集英社文庫、1999年1刷、2000年8刷。本文326ページの長編小説である。
 バーの歌手とウェイトレスの2つのアルバイトをしている「私」を、隣(マンションらしい)の薫平君が、逃げたヤドカリを探して現れる。
 「私」栞には幸裕という兄があり、兄にはパトロンの順子、妻の遙子と娘の陶子とベビーシッターのなつみ、愛人のめぐみがいる。遙子は自身にもわからない探し物に家出し、フランスにいたりする。
 ヤドカリのナポレオンは神出鬼没で人々をかき回し、兄も失踪する。
 結局「私」は、ヤドカリの呪いを解き、兄と遙子を見つけて、順子・めぐみとの関係を解消させる。
 ヤドカリが人を導いたり、モーテルの部屋からフランスの海岸へ瞬間移動したり、荒唐無稽なストーリーながら、描写は細密で、不気味さを感じさせる。
 僕はマルケスの「百年の孤独」など数冊を読んだが、「なつのひかり」は、マジック・リアリズムという呼び方がぴったりだ。ほぼ同時期に出た、大江健三郎「燃えあがる緑の木」3部作より、うまいくらいだ。ファンタジー出身も強味となっただろう。このマジック・リアリズムが江國香織に、どれだけ根づいたかは別として。


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  石田衣良の小説「娼年」を読み了える。
 石田衣良の作品は、2018年11月26日に記事アップした、「スローグッドバイ」以来である。


 リンクより、彼の小説の感想を遡れる。

石田衣良「娼年」
 集英社文庫、2004年4刷。
 20歳の学生・リョウが、会員制ボーイズクラブのオーナーに誘われ、コールボーイとして、様々な女性と関係を持つストーリーである。お相手は、20代のOLから、70代のおばあさんまで、様々である。
 趣向を凝らして、女性の性癖を描くが、女性の奥深さを捉えていないように思う。性描写は、官能小説作家に任せた方が良いようだ。
 小説は、1夏を経て、クラブのオーナーの逮捕によって営業が出来なくなるところで、エンドとなる。

 なおこの本は、ブックオフの値札がありながら、線引きが数ヶ所あった。値札はヘアードライヤーの熱風を当てて剥がしたが、跡が残ってしまった。

 お見合いで結婚し、不倫もない僕の、僻みがあるかも知れない。


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 加藤元の短編小説集「四百三十円の神様」を読み了える。
 到着は4月17日の記事、届いた2冊(6)で報せた。
 集英社文庫、2019年2月25日・刊。定価:640円+税。
 僕はメルカリの400ポイントで購入した。
概要
 加藤元(かとう・げん)は、1973年生まれの女性作家。
 「四百三十円の神様」には、「四百三十円の神様」、「あの川のほとりで」、「いれずみお断り」、「ヒロイン」、「九月一日」、「鍵は開いた」の、6編を収める。
感想

 「四百三十円の神様」。元・プロ野球の名ショートだったが落ちぶれた男。同棲する女の財布を攫った男。働かずにいて離婚した父親。故障があり見込みがあまりないが学生野球に戻ろうとする話者・岩田。
 「いれずみお断り」。元・テキヤだが、妻子には逃げられていて、侘しい老人の死。
 「ヒロイン」。映画のスターだった女優の裏表。憧れる女性の、同棲相手は、2年前から働いていない。母親はだらしない。
 「鍵は開いた」。掌編連作。妻子ある男との不倫を解消する娘。合鍵を妻に捨てさせられる男。母は怒り父親から「失敗作だ」と言われる少年。泥棒の前科3犯だったが更生した中年女性。

 ダメな男女を描いてばかりだ。読んでいると、読者のダメぶりを炙り出すようで、自分も忸怩たる思いをする。
 しかし人のダメぶりは、人に誰にでも、部分的に、時期的にあるもので、特殊な場合ではないように思える。羽目を外さないよう、時に良い事もして、生活して行こうと思う。



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 石田衣良(いしだ・いら)の短編小説集「スローグッドバイ」を読み了える。
 彼の小説を読んだのは、今年6月30日の記事にアップした、
「東京DOLL」以来である。
概要
 集英社文庫、2005年6月・3刷。
 彼の初めての短編集で、初めての恋愛作品集と、「あとがき」にある。
 「東京DOLL」が2007年刊だから、長編恋愛小説と捉えると(その間にも作品はあるだろうけれど)、2年の間の筆力の成長は凄まじい。
感想
 脛の傷、心の闇、隠したい過去を抱きながら生き抜く男女を描く10編。性を交す作品が多いけれども、そうでない作品もある。
 サクセス・ストーリーへの執着が見られ、シナリオ・ライターとして成功してゆく「曜子」とそれを見守る「史郎」の「夢のキャッチャー」、イラストレーターとして「山口高作」を発掘するPR誌の「サツキ」の「線のよろこび」などがある。
 憶測を交す男女が、結末でどんでん返し的に和解するストーリーを含めて、最後の表題作「スローグッドバイ」を除けば、ハッピーエンドの物語である。
 「スローグッドバイ」では、2年間の同棲をしていたフミヒロとワカコが別れる事になり、さよならデートをした後、ワカコの見抜いた通り、フミヒロの「心のなかにたくさんの物語があふれていたからだ」と作家的才能の発現を描く。これまでの9編をフミヒロの作品であるかのように、この作品集を2重にフィクション化している。


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