角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、10番目の句集、成田千空「地霊」を読み了える。
 今月8日の記事、平畑静塔・句集「壺国」を読む、に次ぐ。



 成田千空(なりた・せんくう、1921年~2007年)は、1946年「暖鳥」創刊に参加、同年に中村草田男の「万緑」に創刊より参加。1945年より開墾に従事するも、収穫乏しく、辛酸を嘗める。5年後、古書店を開業し、新刊書店に移る。
 第1句集「地霊」には、中村草田男の序句、1943年~1971年の583句、中村草田男の「跋に代えて」、著者・後記を収める。


 第1章「母郷」が1943年~1948年の作品と、敗戦を跨いでいる事に違和感がある。
 開墾の貧しい村に、更に貧しい物乞いが現れ、寺もなく、水子か間引き子を祀る童子仏に目を止め、離農する者にも敵意を持たない。
 安心は、一人一人が得てゆくものであり、俳人の離農を僕は難じない。敗戦どさくさに巻き込まれた、災難である(当時の農政はわからないので、今は述べない)。


 以下に5句を引く。
炎天焦土人群れやすく散りやすく
地の旱閾(しきゐ)を越えて乞食来る
墓地ありて寺あらぬ村冬木太し
指ほどの燭炎え露座の童子仏
殉ずるも背くも一樹雪嵐
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。



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