風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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雪国

 福井県俳句作家協会・編の「年刊句集 福井県 第59集」より、4回めの紹介をする。表紙に「令和二年版」の文字があるが、令和2年に吟じられた句より自選したアンソロジーという意味で、令和3年(2021年)3月20日・刊行である。
 同(3)は、先の6月29日の記事にアップした。



 今回は、坂井地区(坂井市、あわら市)の、101ページ~109ページ、9ページ18名180句を読んだ。坂井市は福井市に続いて発展しているようであり、あわら市は芦原温泉旅館街を中心として最近の観光変化に追い付いていないようである。周辺部には田園地帯が広がる。福井地区(福井市、吉田郡)と比べて、ずいぶん差があるようだ。女性の出吟も少ない。坂井地区出身の文学者は多く、文学の土壌はあると思うのだけれども。
 「国破れて山河在り」と言うけれども、自然でさえ変化して山河の変わる世に、人情はあまり変わらない、と思う。家族の足音を聞き分ける心は、太古から変わらない、というような。
 雪国、昔からの風習、人生訓、逆説的な孫誉め、などそれで良いと思われる。表現の新と真を目指しているならば。来年の第60集記念号の刊行を期待する。
 以下に5句を引く。
目かくしをつけられそつと雛納め(O・幸江)
雪起こしついにくるかと身構へる(K・敏子)
決断は急ぐべからず穴惑い(S・潤子)
恵方向き黙々食す子の真顔(M・甚四郎)
秋の日や孫から無理を諭される(N・進)





02 (2)
写真ACより、鉢植えのイラスト1枚。
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わたくし率 イン歯ー、または世界 (2)
 川上未映子の講談社文庫より、「わたくし率 イン 歯ー、または世界」、「感じる専門家 採用試験」を読み了える。
 同・本の入手は、今年4月29日の記事、(同)をローソン店で受け取るにアップした。
概要
 2編の初出など、リンク記事に書いたので、ご参照ください。
 川上未映子(かわかみ・みえこ、1976年・生)が、大阪の高校卒業後、弟の大学資金を稼ぐため、本屋のアルバイトとクラブのホステスをしながら、なぜ「早稲田文学」に伝手ができたのか、わからない。のちに上京して、歌手活動をしたから、優れた才能はどこかで見出だされ開花するのかも知れない。
「わたくし率 イン 歯ー、または世界」

 自分の本質は脳でなく、奥歯にあると信じる女性が、歯科助手に就職し、お腹の子や同僚に宛てて手紙を書く。子の父親の「青木」の部屋を久しぶりに訪うと、別の女がおり、放り出されてしまう。
 本質が奥歯にあると信じたのは、少女時代に苛めを受ける苦しさから考え出されたらしい。川端康成「雪国」の冒頭に主語がないテーマも、その時の自己抹消の方法からである。
 結局「青木」の部屋の玄関から追い出され、過去も妊娠もあやふやとなって結末する。
「感じる専門家 採用試験」
 前作よりも約半年、早く発表された。
 ずいぶん詩的な表現が多いことと、大阪弁の文体が、印象に残る。「徹底的な後悔も、徹底的であるなんて、あれはそれで美しかったね」の1語が刺さる。
 彼女は詩の才能があり、詩集で第14回・中原中也賞を受賞している。最近でも詩から小説に移って成功する、それも女性がいるんだ、と驚く。


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CIMG1287
 今日2回目の記事更新です。
 当地では昨夜から今朝にかけて、初積雪である。庭の山茶花にも雪が積もった。
 花は、先の11月19日の記事、
「2018庭のサザンカ3種の花」の内の赤花である。
 雪国の風情かと、廊下の窓より写真を撮った。

CIMG1288
 僕は以前、正月の松飾りを買えないので、葉牡丹を買って代用にしていた。
 ブログ「新サスケと短歌と詩」の、
2012年11月26日の記事に、結社歌誌「コスモス」に初めて(1994年3月号)載った2首を挙げたうち、葉牡丹の歌がある。
 何年か止めていたのだが、この年の暮れ、妻が勧めるので買って来た。プランターの大株3株植えは高価だったので、ミニ葉牡丹3株を買い、ポットのまま古いプラ鉢に寄せ植えにした。

CIMG1291
 今月25日の記事「わが家のクリスマス」の了いに書いた事、妻がプレゼントしてくれた、ジャンパーである。
 自慢でも証明でもない。ブログ
「One day One smile」を運営し、カウンセラーとしてご活躍のスマイルさんの、先日のリクエストに応えたものである。
 吊り方のだらしないのは、男手、衣類の撮影は初めて、押し入れの敷居からハンガーが外れやすい、などであり、ご勘弁願う。1度、袖を通したが、外が雨だったので着るのを止めた。
 裏の起毛地には赤い線も混じって、若ぶっている。サイズは5Lで、太っちょ(メタボとも言う?)の僕でも、ゆったり着られる。



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 短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、17番目の歌集、「能登」を読み了える。
 先の7月29日の記事、
同・「雪代」に次ぐ。
概要
 原著は、1985年、短歌新聞社・刊。596首、著者・後記を収める。
 先の「雪代」より、約3年後の刊行である。
感想
 雪国に信仰篤く老いる人々、生地の能登・行、能登の回想等を読んで、重厚である。
 またボキャブラリイの偏りをはなれて、新しく詠まれもする。
 「凝りたる杉の油のくれなゐは吾が心痛のごとくにかなし」など、客観と主情の合体した作品がある。
 戦争に征かなかった事・殺傷をしなかった事を詠う作品があるけれども、事情で回避できたのだろうし、自慢する事ではない。
 知的な老人ながら食事を楽しむ様など、親近感の湧く生活があった。
引用

 以下に7首を引く。
雪損の杉の被害のただならぬ若狭を伝ふ春は早きに
増殖炉また立つといふ危ふきも貧しきゆゑに人は怖れず
割りて干すその白菜のゆたけきに差す冬の陽もひとときのまか
時化の後なほしらしらと穂に立ちて波はてしなし浜は暮れつつ
まぢかなる郭公のこゑややありて山鳩のこゑ遠くに聞こゆ
戦ひにその子ふたりを失ひし一生(ひとよ)を生きて海に潜きぬ
ひとりなる老のゆふべのはかなきに蜆を食へばその殻の音

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写真ACより、「アールデコ・パターン」の1枚。



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