風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

雲母

 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、4番目の句集・松村蒼石「雁」を読み了える。
 今月5日の記事、角川源義・句集「西行の日」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、永田書房・刊。1971年~1975年の331句を、年別に、章題を付して収める。著者・あとがきを付す。第5句集。
 松村蒼石(まつむら・そうせき、1887年~1982年)は、幼くして丁稚奉公に出、飯田蛇笏「雲母」に入って活躍した。
 戦前に家族の死に次々と遭いながら、不幸に負けない精神を持ったとされる。
 1970年代初めの社会状況には、ほとんど影響されていない。中島みゆきの「時代」の歌さえ、僕は「早くも再起してしてしまうんだ」と、遠く聞いていたものだが。
引用

 4句を引き、寸感を付す。
童が目守る大き頭りの寝釈迦さま
 上句の「こがまもる」は読めたけれども、「つむり」に気づくには時間が掛かった。
白鳥引き朝あけの湖疲れけり
 比喩の句である。擬人法とは言えないだろう。
寒や白けて雨忘じゐる野川
 句跨りが2つある。ここに違和感を表わす他になかったのだろう。
もう鳴かぬ虫白壁は日を溜めて
 中句に句割れがある。こういった所にしか、良心を表わせなかった苦衷を偲ぶ。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の最終巻・第15巻(1981年・刊)に入り、感慨がある。
 初めの句集、石原八束「黒凍みの道」を読み了える。第14巻の最終句集、先の6月14日の記事にアップした、宇佐美魚目「秋集冬蔵」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、牧羊社・刊。380句、あとがき「巻末に」を収める。
 石原八束(いしはら・やつか、1919年~1998年)は、初期に俳誌「雲母」に拠り、1961年・俳誌「秋」を共同創刊。
 1960年より5年間、三好達治を囲む「文章会」を毎月開催。1962年「定本 三好達治全詩集」(筑摩書房・刊)編集で、三好達治の戦争詩をすべて省いたように、三好達治の戦中を隠したかったようで、戦中よりの後輩、福井の詩人・則武三雄に彼はずいぶん冷たく当たったと聞く。
感想

 「内観造型」を唱え、後に詩的宇宙を構成する方向をたどる(三省堂「現代俳句大事典」2005年・刊の「石原八束」の項に拠る)とされる。
 「黒凍みの道」を僕が読んでも、詩的表現が多いと感じる。詩を書けば良いとは言わないが、俳句的発展とは、別の道のようである。国際俳句に貢献した事も頷ける。
引用
 以下に5句を引く。
口裏を合せかねゐる年忘れ
白芥子の吹かれたつとき海となる
いつまでも咲いてさびしゑ寒ざくら
雪ふれよふれ塋(おくつき)の花の母
好き嫌ひ顔に出てゐる秋団扇



 角川書店「増補 現代俳句大系」第13巻(1980年・刊)より、11番目の句集、飯田龍太「忘音」を読み了える。
 今月4日の記事、
上田五千石「田園」に次ぐ。
 また同・大系・第10巻に載る飯田龍太の第1句集
「百戸の谿」は、先のブログ「サスケの本棚」の、2015年12月9日の記事にアップした。
概要
 「忘音」の原著は、1968年、牧羊社・刊。355句、著者・あとがきを収める。同・句集により、読売文学賞・受賞。
 飯田龍太(いいだ・りゅうた、1920年~2007年)は、1962年、俳誌「雲母」主宰を父より継承していた。
 1992年6月、自ら「雲母」を900号で終刊、以後には俳句の発表がない。
感想
 3人の兄たちの病死・戦死により、飯田家を継ぎ、「雲母」を継いだが、俳句・俳誌への愛憎は深かったと思われる。
 この時期、時代的な事、継承の事で、やや句境が濁っていたように感じる。「きさらぎは薄闇を去る眼のごとし」など、僕には意味不明の俳句もある。
 後には、三省堂「現代俳句大事典」(2005年・刊)に引かれた例句のみだが、澄んだ豊かな句境を回復したようだ。
 没後、全集が刊行されている。
引用

 以下に5句を引く。
裸子のよろこびくだる秋の谷
餅を切る夕凍てのなほつのりつつ
ひとりゆく空耳山のすみれ草
抱へたる屑籠軽し閑古鳥
返り花落葉いちにち急ぐなり
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写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。




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