風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

非難

 村上春樹の短編小説集「一人称単数」を読み了える。
 到着は、今月21日の記事、届いた2冊を紹介する(14)にアップした。





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 「一人称単数」」は、2020年7月20日、文藝春秋・刊。8編の短編小説を収める。

 初めの「石のまくらに」は、二十歳にもなっていない「僕」が1夜を共にした娘さんが、数日後、歌集(実は5行歌風)を送ってくれて、今でも机の引き出しにおいて、稀に読む、という話である。娘さんの名前も顔立ちも覚えていないけれど。紋切型でいうなら、「人生は短い。芸術は長い。」の実感だろう。
 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」は、大学の文芸誌に1文を載せた、という事からフィクションだろう。しかもその1文の内容はフィクションだった。フィクションにフィクションを重ねながら、夢に現れたチャーリー・パーカーがボサノヴァをプレイした事は真実だろう。作者がその夢を実際に見たか否かは別にして。
 「ウィズ・ザ・ビートルズ」は、1種のヰタ・セクスアリスであると共に、15年後にはその相手・サヨコが結婚・2人子を持ちながら、32歳で自死していた事を知る。村上春樹の小説に時々現れるテーマで、彼にトラウマがあるのか願望か。
 「品川猿の告白」は、言葉を覚えた猿が、女性を恋しくなると名前の1部を盗み(女性は自分の名前を忘れたりする)、その名を呼んで耐える、というストーリーである。荒唐無稽ながら、1種実感がある。
 書き下ろしの「一人称単数」では、バーで見知らぬ女性から酷く非難される。「恥を知りなさい」とまで言われて。僕たちも村上春樹の小説に期待する余り、むやみに非難する事は避けたい。
 でも村上春樹は、自身が言っていた、ドストエフスキー流の作家になれるのだろうか、長編小説に期待したい。


「歌壇」6月号 (2)
 綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2019年6月号を、短歌作品中心に読み了える。
 到着は、今月16日の記事、入手した2冊(5)で報せた。
 同・5月号の感想は、先の4月23日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。
特集 熊野を訪ねて
 僕は宗教信仰を持たないので、熊野の奥深い山林にのみ興味がある。宗教は、あまりに権力と馴れ合って来た。縋るものが、宗教しかない、という人も憐れである。信仰なき祈り、という形が(日本人の大多数だろうが)、神の思し召しに最も近い、とある人が述べたと記憶する。短歌のみを読む。
巻頭作品
 「世は事も無し」的な作品が多い。社会問題を詠んでも、他人事である。
蘇る短歌 第15回 坂井修一
 英語で原爆「ファットマン」の「ファットとマンの間に・(てん)は要りますか」と問う生徒を、原爆の悲劇、ファットマンと呼ぶ心理に無関心で、試験成績にのみ関心があると非難する。しかし学問は、厳密性を求めるのであり、合理性と共に第1の事であり、非難するに当たらないと僕は思う。
引用

 小長井涼「酒舗一景」7首より。
はじめての百合根に「百合根記念日」と喜ぶ人を素直と思(も)はむ
 お酒が入ってのせいか、素直な人も、そう傍らで思う人も、純朴である。
 廣庭由利子「夏めく」7首より。
(いたつき)と聞きゐし人と偶然(たまさか)に立ち話する夕川の橋
 意外性と、回復に安堵する心が伝わる。
 僕がなぜ7首掲載より引用するかと言えば、歌が順直だからである。僕は長く歌を詠むが、有名になりたいとも、歌壇で活躍したいとも思わない。ある人は「短歌を栄達の方法にしてはならない」と述べたと記憶する。短歌の救いを信じるのみである。


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