谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」第1巻より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、今月19日の記事にアップした。



 今回は、「盗難書類」「「お前が犯人だ」」「黒猫」の3短編を読んだ。

 「盗難書類」では、秘密の書簡を貴婦人から盗んだ詩人・大臣より、デュパンが警視総監より頼まれて、取り戻す話である。パリ警察が大臣邸などをいくら細かく捜しても、書簡は見つからない。しかしデュパンは、ボール紙製の名刺入れに差してある、つまらない物に見せかけた書簡を見つけ、策を労して回収する。大臣と探索者の心理的駆け引きが題目である。職を転々としたポオは、詩人・大臣などに信用を置かなかったようだ。
 次の「マリイ・ロオジェの秘密」は、長編であり飛ばした。


 「「お前が犯人だ」」は、善良そうなグッドフェロオが友人・シャットルワアジイを殺し、罪を被害者の甥に負わせようとして、「私」が事実を暴く。

 「黒猫」は有名で、僕は以前に読んだ事がある。
 酒に溺れた「私」が、2匹の黒猫を殺し、妻も殺害して、煉瓦の壁に塗り込める。警察は、遺体を探し出せなかったが、「私」が壁を杖で叩いて見せた所、猫の声がして、犯罪が暴かれる。
 僕は昔ほどの感慨を持たなかった。感性や想像力が衰えたのか、フィクションへの不信だろうか。
黒猫
 写真ACより、「黒猫」の写真1枚。