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 鳥居歌集「キリンの子」を読みおえる。KADOKAWA、2016年7月・5刷。
 購入は、11月24日の
記事(←リンクしてあり)にアップした。
 解説で歌人・吉川宏志(文中敬称略)が「孤独で凄惨な生き方をしなければならない人がいる。鳥居もその一人だった。」と述べる。
 両親の離婚、母の自殺、養護施設での虐待、友人の自殺、自殺未遂、リストカット等の悲惨な経験を経ながら、彼女は短歌の1筋に繋がる事に由って、心の安定を得る。
 「短歌は自己救済の文学である(短歌を読み詠む事に由って、自分が救われる)」という言い伝えの、見事な実例である。
 短歌を詠む事に慣れて、レトリックが上手くなると、彼女の短歌の魅力が減るが、致し方ない方向性か。
 出版社サイドの、帯文や著者プロフィールでの「売らんかな」主義は、目障りである。
 以下に7首を引く。
入水後に助けてくれた人たちは「寒い」と話す 夜の浜辺で
くちあけてごはん入れてものみこまず死を知らぬ子は死にゆくひとに
先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
虐げる人が居る家ならいっそ草原へ行こうキリンの背に乗り
生まれたくなかっただけと包み込む左手首の白い傷痕
しゃがみこみ耳を塞いだ友だったあんなに大きな電車の前で
手を繋ぎ二人入った日の傘を母は私に残してくれた