我孫子十字 童子の像
 記事にはしなかったが、(記録に拠ると)今月2日に我孫子十字・歌集「童子の像」kindle unlimited版をAmazonよりダウンロードし、先日にタブレットで読み了えた。
概要
 2012年に「紅書房」より刊行された歌集を基に、2017年11月15日、(株)22世紀アートを通して、電子書籍化された。
 作者は既に、歌集「大寺の裏」、句集「木の葉雨」を刊行している。
 電子版「童子の像」は、横長1ページに9首(9行)を収め、字は大き目で、読みやすい。
 ハイライト機能があるので、気に入る歌にはハイライトし、メモと共に残した。
 書肆侃侃房以外でも、歌集の電子出版は、業者を通してでも、始まっている。
引用と感想
十月の暦をめくり残りたる月日を思ひ来し方を思ふ
 十月は、暑い夏と寒い冬の間で、人生の感慨の湧く時季であろうか。
始まりは闇市といふ駅裏の市場近々毀たるるといふ
 戦後の名残りの終わりが、市街の建物にも及んでいる。
曾遊の箱根の山を偲びつつ二日三日は駅伝を追ふ
 過去と現在が、感覚では繋がっている。
傾ける塀の隙よりカーテンを引きて静まる廃屋の見ゆ
 少子化と都市集中により、過疎地でなくとも、廃屋は増えるだろう。

絶句してひた目守るのみ次々とテレビに映る大津波の様
 東日本大震災を、書き残す事は大事である。
大逆の罪に問はれて刑死せる幸徳秋水羊羹と化す
 時代は移り、土産品となったのだろう。
不知火の海を隔てて天草をあなたに見つつ出湯に寛ぐ
 老いの安穏のひと時だろう。
 総じて、古い酒を新しい革袋に入れた感は残るが、自費の電子歌集出版の先駆けとして、勇猛である。