風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

unlimited版

ユキノ進 冒険社たち
 ユキノ進・歌集「冒険者たち」kindle unlimited版を読み了える。
 今月10日の記事、
「入手した4冊」で報せた4冊の内、上から読み継いで3冊目である。
概要
 出版社、各版の発行年次・価格は上のリンクに書いたので、ご覧ください。337首、東直子・解説「命を俯瞰する」 、著者あとがきを収める。
 ユキノ進は1967年・生。広告会社に勤めるようだ。
感想
 事実としては厳しい職場が、透明繭越しにリアルに描かれる。
 ゴルフ、宴会、カラオケで上司にヨイショする自分を自虐的に描く。また派遣切りも詠まれる。
 新潟県への単身赴任となる。帰宅より出掛ける時、3人が見送る歌がある。姉弟は、娘・息子の事だった。女性の歌もあるが、曖昧な詠み方だったので、恋人の事かと思っていた。
 5年の単身赴任が過ぎ、本社に戻り、やがて課長になる。人事評価の疚しさに悩みもする。
 あとがきで彼は、「僕の第一歌集で、もしかしたら最後の歌集かもしれない。」と書く。サラリーマンの出世コースに乗るベクトルと、歌人として続けるベクトルとは、異なるのかも知れない。医師と教師を例外として。
 彼は今も短歌で活躍しているだろうか。
引用

 この歌集より多くをメモしたが、例に倣って7首を引く。
往来で携帯越しに詫びているおれを誰かがビルから見ている
男より働きます、と新人の池田が髪をうしろに結ぶ
贄として子羊の位置に座らされ送別会で酒を注がれる
次はいつ帰ってくるのと聞く姉と黙って袖を握るおとうと
早回しのフィルムのように乾杯を繰り返しながら近づく別れ
三度目に呼ばれ自分の名と気づく心療内科のロビーで人は
船乗りになりたかったな。コピー機が灯台のようにひかりを送る




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三浦しをん 天上の飲み物
 三浦しをんの短編小説、「天上の飲み物」kindle unlimited版を読み了える。
 タブレットへのダウンロードは、今月25日の記事
「2冊を入手」の初めで報せた。
概要
 三浦しをんは、1976年・生。
 「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を、「船を編む」で本屋大賞を受賞。
 三浦しをんの本は、僕はこれが初めてである。
 「船を編む」が話題になった時、今さら辞書編集者のストーリーなどを・・・電子辞書の開発と向上と進展の裏側を覗きたい、と思ったのは僕だけではない筈である。企業秘密だから公開されないだろうけれども。
 「天上の飲み物」は赤ワインの事で、初出は季刊の「サントリークォータリー」である。納得する。宣伝誌に、意に添うストーリーを発表しても良い。
感想
 400年以上生きるドラキュラが、人間の生活に慣れ、今は大学生・後藤次郎・21歳として、酒屋の2階に下宿し、25歳のOL・宮村有美に恋している。
 しかし主人公は、恋人の血を飲む事も、血を与えてドラキュラ界に引き入れる欲求も、我慢して耐える。短いエピソードとはいえ、何の寓意か。
 ドラキュラは、作家を指すか、自由業を指すか、起業家を指すか。サラリーマンではない世界を指すようである。その世界に引き入れたい欲求がありながら、サラリーマンの世界から、引き剥がせない。
 下世話なようだが、単なるドラキュラと娘さんの恋物語と思えなかった。


 



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千原こはぎ ちるとしふと
 今月10日の記事、「入手した4冊」で紹介した内、2番目の千原こはぎ・歌集「ちるとしふと」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
概要
 ダウンロード時期、各版の出版時期・価格は、そのリンクで述べたのでご参照ください。
 千原こはぎ(ちはら・こはぎ、以下・敬称略)は、イラストレーター、デザイナー。
 「ちるとしふと」はカメラの交換レンズの1種で、実際の街の写真をまるでミニチュアのおもちゃのような写真に変身させる、と著者「あとがき」で明らかにする。
感想
 1つの別れに至る(男の身勝手―不毛の性を経て)男女関係と、新しく1つのおずおずと始まりお互いに好ましく想う恋が、ストーリー的には描かれる(仕事の厳しさを描くリアルな歌は別として)。
 繊細な恋が描かれる。しかし「現実じゃないところの感情を掬い取りたくて」と述べるように、フィクションを多分に含んでいるだろう。現実では、線の太い健康的な恋をしているかも知れない。
 平安朝の女流文学以来の、立場の弱い女性の思いを、受け継いでいるのだろうか。
引用

 ハイライト、メモの機能がないので、15首をノートに写したが、例に倣って7首を引く。
桃を抱く手つきで崩されてしまう かんたんだから好きなんですか
息白く見知らぬ駅で待っている わたしだいじにされてなかった
この夜をずっと覚えてますように一番きれいな声で、さよなら
「あいたい」の代わりに今日も「おやすみ」をちいさく夜に貼りつけておく
泣きながらたこ焼きを焼くきみからの言葉をひとつひとつ丸めて
所有され所有している厳かに素足にキスをされてしまえば
おしまいはいつも「じゃあね」と言うきみに「またね」と返す祈りのように




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僕の歌は君の歌
 7月15日にAmazonよりダウンロードした、寒川猫持・第4歌集「僕の歌は君の歌」を、タブレットで読み了える。
 kindle unlimited版の歌集として、今月7日の記事にアップした、早坂類「ヘヴンリー・ブルー」以来である。
 kindle版:2014年7月22日・刊、540円。
 オンデマンド版:972円。
概要
 寒川猫持(さむかわ・ねこもち、1953年~)は、第2歌集「雨にぬれても」を山本夏彦に見いだされ、1時は有名になったが、離婚(のちに再婚)時の神経症などでうらぶれ、今は眼科医のアルバイトなどの他、「ぶらぶらしている」(彼のブログより)らしい。
 歌集には約400首と、「猫持俳句集」、他を収める。
引用と感想

 ハイライトとメモの機能が利くので、10余首にメモを付したが、7首に絞り、以下に引用と感想をアップする。
にゃん吉はいつも淋しく待ちいたり吾の帰りを待ちていたりき
 「キチや」の章15首を残すが、死後に後悔しても遅いだろう。
「んまいんまい」声あげて食うめいちまに毎日魚買いに行きたり
 「めいちま」(めいちゃま、めい様の意か)を猫可愛がりし溺れている。
めいちまが入院をせし三日間われら夫婦は泣き暮らしたり
 夫婦して、猫にメロメロである。もう少し冷静な、可愛がり方ができないものか。
悪性の脂肪肉腫になりまして手術を受けてまだ生きてます
 癌になって居直る様が、哀れを誘う。
鶉野の農地が売れて五百万振り込まれたり一息つきぬ
 1時は借金があったと書く。アテにしていたお金だと思う。
糖尿も脂肪肉腫も鬱病もひとえに母のストレスならむ
 「結婚をする前まではわが母が鬼であるとは思い知らざりしかな」とも詠む。毒母である。
体には管が八本付いていておまけに痛い拷問である
 手術後の状態を、客観的に自虐的に詠んでいる。


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堀米好美 いのち
 今年4月23日の記事「入手した6冊」で報せた内、堀米好美・歌集「いのち」を読み了える。
 Googleアナリティクスの本は別として(第4章までの基本を学べば良いらしい)、最後まで残った本である。
概要
 2016年9月30日・刊の歌集「祈り」(現代短歌社)に次ぐ。
 kindle版:2017年9月21日、22世紀アート・刊。定価:1,000円。
 kindle unlimited版:追加金無料。大手出版社ではない、独立系・出版である。
 著者は1936年・生。「短歌21世紀」「ヒムロ」会員。
 千一首の大冊で、読み通すのに難儀した。
引用と感想
 ハイライトとメモの利く歌集だったので、タブレットで線引きと感想メモを残し、それを7首のみに削って、以下にまとめる。

筆書きの子より受けたる御年玉仏壇にあり今朝も目にする
 前の歌も含めて、戸惑い、寂しがっている。気になって仕様がないのだろう。
原発も津波も遠き吾が丘もダム近くして崩壊危し
 災害の多い世になった。異常気象、地殻変動、人災など。
追ひつきて更に追ひつき凱旋の「なでしこジャパン」誇らしきかな
 簡単に諦めてはいけない。女性の地位向上も示していた。
暮れきたる庭に明るき黄のひかりニッコウキスゲの何時しか生ひて
 写生的で自然な、優れた1首だと思う。
彼の日より七十年か戦なき世を守りたる人ら老い来ぬ
 実感の籠もる反戦歌である。
離り住む父送りゆく九歳は背を見つめゐて吾に応へず
 息子の単身赴任だろうか、家族皆に苛酷な事である。
吾何を為すべき今か為し得るかいのち燃やさむ背筋なほ立つ
 老いの一徹である。敗戦の日を知る者として、「安保法」反対など、権力批判を繰り返し詠っている。


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 最近に入手した3冊を紹介する。

 まず6月25日、所属する結社の歌誌、「覇王樹」2018年7月号が届いた。
 7月1日付け、覇王樹社・刊。40ページ。

 僕の掲載6首(8首より選)他は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の
6月26日の記事より、順次掲載しているので、横書きながら是非ご覧ください。
早坂類 ヘブンリーブルー
 6月26日、AmazonのKindleストアより、早坂類・歌集「ヘヴンリー・ブルー」kindle unlimited版を、タブレットにダウンロードした。写真とのコラボらしい。

 紙本版:2002年・刊。
 kindle版:2014年12月20日・刊。1,177円。

生きるぼくら
 原田マハの小説「生きるぼくら」が、6月27日に届いた。
 徳間文庫、2016年5月10日・6刷。定価:690円+税。

 あるブログにこの本が紹介されて、すぐAmazonのマーケットプレイスへ注文した。
 後に注文がキャンセルされたが、別の店に再度注文して、入手した。
 予想より分厚く、423ページである。

 原田マハの作品は、印象の悪い1冊を読んでから、敬遠していた。この本は、感動的な小説のようだ。

 以上3冊、共に読み了えたなら、ここで紹介したい。


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短歌タイムカプセル
 最近に歌集1冊と、歌誌2冊を、入手したので紹介する。
 有料の本を買ったのは、先の5月25日の記事、「2冊を入手」以来である。

 先ず、アンソロジー歌集「短歌タイムカプセル」。
 気になる本が、kindle unlimited版で出ていたので、6月11日、タブレットにダウンロードした。
 紙本版:2018年1月23日・刊、1,620円。
 kindle版:2018年3月8日・刊、1,000円。

cocoon 08
 結社「コスモス」内の若手グループ(1965年以降・生)による、季刊同人歌誌「COCOON」Issue08が、6月15日に届いた。
 2018年6月15日・刊。87ページ。同人は、僕の数えたところ、28名。

歌壇 7月号
 綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)7月号を、Amazonに予約注文したところ、6月14日に発送案内があり、15日の昼に届いた。
 7月1日付け・刊。169ページ。800円(税・送料・込み)。
 短歌と論が満載である。

 いずれも読み了えたなら、ここで紹介したい。





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